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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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ディレイドマスカーカレイド track.4 クウガの世界

 陽光にきらめく先鋭的な高層建築物の群を抜け、だが昼だというのに人気の少ないビル街のとある一角へと、黄色と白のバイク「マシンディレイダー」に跨った透と瞳子がやってきた。
 パソコンのハードディスクのような回転音しかしない異常に静粛なバイクを見下ろして、タンデムシートに座る瞳子は青い顔をして呟いた。
「……ねえ。エコブームは理解してるし、電動が静かなのはいいんだけど、あんまり静かって言うか無音で走ってると、そのうちヒト撥ねかねないんじゃない?」

 実際、ここに来るまでに何度も交差路からぎょっとした通行人が顔をのけぞらせているのを見ている。
 どれも、あと一瞬タイミングが違ったらどうなっていたことかという恐々の連続であった。
「問題ない」
 だが透は全く一切気にしたふうもなく、あっさりと返答する。
「視界の通らない場所だろうと、俺は近距離にいる人間の所在を察知できる。ミリ秒単位で何者とも接触せずに通過できる速度・ルートを選択しているから、俺の運転で人間と事故を起こすことなどありえない」
「ミリとか言ってないで、せめて秒単位以上のゆとりは持ちなさいよ!ギリギリぶつけなくてケガはなくても心臓に悪いわよ!」
 しれっと続けた透に瞳子は絶叫した。
 すると突然、透が上体をねじって背後を振り向き、瞳子の顔をまじまじと覗き込んできた。
「な、なによ」
 特に感情の籠もらない眼差しでただ目に映るものを見るような目つきに、トキメキなどカケラも湧いてこない瞳子はだからただ透の凝視をいぶかしんだ。
「、ねえ」
「いや。今ざっとお前のバイタルチェックをしたんだが、特に死に繋がる異常は見当たらなかったぞ。心配し過ぎだ、瞳子」
「はあ?」
 瞳子は、言われた内容を理解するのに数秒の時間を要した。
「だから、俺の運転がお前の心臓に深刻な影響を及ぼす可能性はないと言っている。安心しろ」
 そこまで言われた時、瞳子は自分の内側からブチンという音を聴いた気がした。
「あーーー!」
 とうとう瞳子は透の首を両手で掴んで振り回し始めた。
「だぁかぁらぁ! あたしはちょっとでもびっくりするのもイヤだから、今度からギリギリはやめなさいっっ!」

「さて。情報によると、行方不明者のうち三人がここから二百メートル圏内で消息を断っているわけだが」
 すぐ横を歩きながら透は、割と容赦なく首を絞めてやったというのに咳払いのひとつもせずに話を始めた。
「だからなんだって言うの?」
 マシンディレイダーに座ったまま、恨めしそうな顔で問う瞳子。
「状況分析と捜査は警察でちゃんとやってるの。いまさらこんな所に来てどうするの?」
「人間による犯罪のほかに、この現象を説明できる根拠を俺は知っている」
「え?」
 表情を怪訝に切り替えて見上げた瞳子の目線の先で、透はなにやら指折り数え始めた。
「ふたつ……みっつ目は、少し違うな。死体が残らない「異常」」
 その時、透の耳に、微かに甲高いノイズ音が聴こえてきた。
「……なに……この音」
 それは瞳子の耳にも聴こえていた。
「気を付けろ。この音は適性のある者と俺たちにしか聴こえない」
 透が、目付きを鋭くして辺りを見回しながら警告した。
「ミラーモンスターか。 瞳子、鏡やガラスに注意しろ。いや、そこに居ろ」
「え?」
 腰を浮かしかけた瞳子の返事を待たずに、透はあらぬ方を見回しながらバイクに向かって指を振った。すると、マシンディレイダーのバックミラーが色を落とし、真っ黒になってしまった。
「バイクの横に伏せておけ」
「え? なんなの?」
 意味が分からない瞳子は、バイクから降りたものの困惑するばかり。
 そこに突然、どこからか鋭く飛来した光条が瞳子に襲いかかり、それを寸前で透が剣で弾き返した。
「きゃあ!?」
「伏せていろ!」
 見上げれば、瞳子に襲いかかったそれはささくれたロープみたいなもので、それはなんと鏡面加工を施されたビルの壁面から生え伸びていた。
「な、なにあれ!?」
 そして鏡の壁の中から、突き抜けるように奇怪なものが顔を出した。
 壁に穴が開いている訳でもないのに、そいつは壁面を境にその向こうから這い出てくる。
 やがてずるりと全身を引きずり出して着地したそれは、自動車ほどもある巨大な蜘蛛だった。
「きゃああああ!?」
「ふん。この世界の仮面ライダーはどこぞをほっつき歩いてて不在なんだったな」
 瞳子を庇う位置に立ちはだかった透は、剣を構えて呟いた。
「まあ。そのために来たんだが。 ……さて。仕事だ」

 ディレイドライバー・カレイドブレイド。
 それがこの剣の名。
 ディレイドの変身ツールにして武器にして、そしてあらゆる物体を万華鏡の色紙のように切り裂いて変移させる、剣。
 それを透は水平に構え、片手を刀身の峰のスライドカバーに添えた。
 まるで刀を鞘に納めるようにカバーをスライドさせると、スライドカバーの下に刀身の中へ続くスリットが現れる。
 続いて透が離した左手を翻すとそこに、まるで手品のように一枚のカードが現れた。
 そこには、QRコードを模したディレイド自身の顔が描かれている。
「変身!」
 叫ぶと、指先のみでくるりと回したカードをディレイドライバーの刀身のスリットへ差し込んだ。
 すぐさま剣を両手で構え、スライドカバーを掴むとまるで刀を鞘から抜き放つように閉塞した。
《カメンライドゥ・ディ・ディレイドゥ!》
 多重にぶれて重なった音声が認証を応え、透はその剣で虚空を切り裂いた。
 すると、その斬撃の軌跡に沿って光のベールが現れる。そこには、ディレイドの顔面を模したQRコードのようなマークが出現し、そして透の姿に変化が起きた。
 ドット柄のノイズに包まれた透を中心に、全抱囲から現れた光の人影が十ほど集まってきて重なった。
 同時にその姿をグレーの異形に変化させる。
 続いて地平の彼方から飛来してきた幾本のも黄色い四角柱・ライドピラーが前後、左右から透の頭部を貫いて収まった。
 そしてその身をイエローに染めて、変化は終了したようだった。
 一連の変化を促進した余剰エネルギーが辺りに放射され、青いディメンションヴィジョンがぎらりと光を放った。
 これが、世界救済の後始末に現れた次元戦士、仮面ライダー・ディレイド。

『ミラーモンスターには、こいつでなければ対処できない』
 呟いたディレイドは、ディレイドライバーのスライドカバーを展開してから左手を翻すと、一枚のカードを取り出した。
 そこには、まるで西洋の甲冑の兜の面貌のような、水平のスリットが幾本も入った仮面を纏った者が描かれていた。
 それを刀身のスリットに挿し込み、抜刀の動作でスライドカバーと閉じた。
《カメンライドゥ・リュ・リュウキ!》
 認証後、すぐさま虚空を切り裂いた。
 剣の軌跡に、菱形に意匠化された龍の頭部のような紋章が現れた。

 ディレイドベルト・カレイドサーキット。
 ディレイドの腰に巻かれた、まるで無数の機械を寄せ集めて圧縮したかのような無骨なカタマリをバックルに設置したベルトの、それが名である。
 ディレイドの拡張装置であるところのカレイドサーキットは、カレイドブレイドからの「カメンライド」の指令を受け、その形状を変移させてゆく。
 ドット柄のノイズに包まれたそれは、その身を収束させ、やがて楕円形のバックルに姿を変えて現れた。
 瞬くドット柄のノイズの中から、小さな部品が分離して飛び出し、ディレイドの手がそれを宙でキャッチする。
 変移を完了したベルトは、その中央を大きく四角形にへこませた、変移前よりも非常にシンプルな形状に変わっていた。
 手の中の分離したパーツも変化を終え、それは黒い板状の物に変移していた。
 その黒い板の中央には、先ほど現れた龍のマークが金色で描かれている。
『変身』
 ディレイドは、再びそう言ってその手の黒い板を、ベルトバックルの左から、その四角にへこんだスペースにややぞんざいに押し込んだ。
 同時に、四方八方から出現したディレイドの半透明のヴィジョンがディレイド自身に殺到して重なった。
 現れた姿は……やはりディレイドのままであったが。
 ディレイドベルト・カレイドサーキットは、既定の仮面ライダーのベルトに形状・構造・組成を変移し、該当する仮面ライダーの能力をディレイドに与える。
 いまやディレイドは、姿こそディレイドのままだが、その能力は「鏡の中に存在する異世界を戦場に戦いを繰り広げる戦士」仮面ライダー龍騎のものだ。
『瞳子。バイクから離れるな』
 言ってディレイドは、ディレイドライバーのスライドカバーを開いてからベルトバックルの黒い板、「龍騎の世界」では「カードデッキ」と呼ばれていたその中から一枚のカードを引き抜いた。
 ディレイドの所有するカードとはまた異なる内容のその表面には、湾曲したサーベルが描かれている。
 ディレイドはそのカードをディレイドライバーのスリットに挿し込みカバーを閉じた。
《ソードベント。》
 本来のディレイドライバーのものとは違う音声が認証を応え、カレイドブレイドがぼう、と赤い光を帯びた。
『はあああ!』
 裂帛の声をあげ、巨大な蜘蛛型ミラーモンスター「ディスパイダー」に躍りかかっていった。
 いまやミラーワールドの物理法則を付与されたカレイドブレイドの仮借ない斬撃が一撃、二撃とディスパイダーを襲う。
 その巨体にもよらず圧されてゆくディスパイダーに、ディレイドはさらに蹴りを入れて大きく後退させ、まるでバットのように構えたカレイドブレイドのフルスイングでディスパイダーの巨体を、出てきた鏡面の壁めがけて殴り飛ばした。
 大きく飛ばされたディスパイダーは壁に激突するかと思いきや、まるですり抜けるかのように壁の中に消えてしまった。
「な、なんなの?あれ」
『ミラーモンスターだ!あとで説明する!』
 瞳子の困惑の声に応え、ディレイドもその鏡面の壁に向け駆け出した。
『はああ!』
 そして激突する勢いで跳躍したディレイドも、同様に壁の中に吸い込まれるように消えていった。

 次元の壁を越え、鏡の壁から飛び出したディレイドは、地面を一回転してから迅速に立ち上がった。
『ふん。バカデカいのに姿が見えないな』
 ざっと見回した辺りには、先ほど吹き飛ばしたディスパイダーの姿がない。あれほどの巨体が隠れる場所もないというのに。
 だから透は前方に向かって飛び込むように跳躍した。
 その一瞬後、今までディレイドが立っていた地点をささくれた太いロープが抉り飛ばした。
 すなわち、出てきた鏡面の壁に張り付き真上で待ち伏せしていたディスパイダーに向き直ったディレイドは、バックルのカードデッキからカードを抜き放ち、ディレイドライバーのスライドを開けて挿し込むと、カバーを再び閉じた。
《ストライクベント。》
 認証の音声と同時に、どこからともなく飛来した、赤い龍の首のような手甲を右手に装着する。
『浅薄で助かるな。とりあえずそこから降りてこい』
 言いざまに、その龍の手甲から火球を射出しディスパイダーを撃ち抜いた。
 苦悶に身をよじりながら、ディスパイダーの巨体があえなく落下してくる。
『よし。いい角度だ。 できるだけビルの壁を壊したくないのでな』
 言ってディレイドは三度バックルからカードを引き抜き、ディレイドライバーに装填した。
《ファイナルベント。》
 スライドカバーの閉塞と同時に音声が終末のキーワードを告げると、このミラーワールドの同じ地点に、現実世界で停車していたはずのマシンディレイダーがノイズと共に出現し、無人のまま急発進して大きく跳躍した。
『はああ!』
 ディレイドも軌道を合わせて同様に跳躍する。
 交錯した空中でマシンディレイダーから放たれた強力な波動を背中に受け、跳び蹴りの姿勢に移行したディレイドの身体はまるで砲弾の発射のように加速した。
『でああああ!』
 これこそ、仮面ライダー龍騎の必殺技「ドラゴンライダーキック」。
 本来は、龍騎自身と契約モンスターであるドラグレッダーの二体による連携技であったが、そもそも契約モンスターを持たないディレイドは、このように各種ツールを代用してその技を再現する。
『あああああ!』
 そして、ディレイドの渾身の蹴りがディスパイダーに突き刺さり、モンスターを爆砕させた。
 くすぶる炎の中立ち上がったディレイドは、戦闘終了になんら感慨も抱かず、辺りをゆっくりと見回した。
『……ふむ』
 振り返り、鏡の壁面を向くと、そちらへ歩いていった。

 飛び込んでいった時と同様に、唐突に壁からディレイドが飛び出してきた。
 鏡面の壁から現実世界に帰還したディレイドは、ディレイドライバーにカードを装填すると、透の姿に変移した。
《カメンライドゥ・ディ・ディスガイズ!》
「片付けたぞ」
「ねえ!? ちょっと!? そばにいろって言われたのに、バイクのほうが勝手に走り出したんだけど!?」
 そこへ、ばたばたと半泣きの瞳子が駆け寄ってきて喚いた。
「ああ。他に危険がないと分かったから、勝手に借りて動かした」
 透はしれっと応えた。
「言って!? お願いだから先にひとこと言って!?」
「留意するが、状況によっては不可能だ。 それより」
 言うと、透は瞳子の肩に手を乗せた。
「ミラーモンスターはまだいる。ミラーモンスターというのは、今見たようなやつだ。鏡の向こうの世界に生息している。片付けてやりたいが、他の世界でも異常が起きているだろうから、俺は行かねばならない」
「へ?ちょ、じゃあどうすんのよ!?」
 慌てる瞳子を肩に乗せたままの手に力を籠めて押し留め、言葉を続ける。
「聞け。今のモンスターは別の世界の異常の産物だ。だからこれからそこの仮面ライダーをここに連れてくる」
「え?」
「九つの世界の接触融合は、ディケイドの干渉により解消されながらも若干の後遺症を起こしているのは最初に話したな。これがその一例だ。 別の世界の住人がよその世界に紛れ込んでいる。それをなんとかしなくてはならない」
 透は瞳子の目をしっかりと見つめながら説明を続ける。
「だからできる対策をして待っていろ。警察に働きかけ、鏡を全て隠せ。鏡面効果のある物に近寄らせるな。早く戻るようにする」
「あ、う、うん」
 瞳子は、ようやくうなずいた。
 半ば引き摺られるようにして見せ付けられた異常だが、そもそもこの瞳子は、誰かを守りたくて警察官の道を志したのだ。
 たとえ相手が超常の存在だろうと、歯向かえなかろうと、人々を守る。
 やりようはあるのだと、この瞳子は知っているのだ。
「よし。また会おう、瞳子」
 瞳子の理解を確認した透は、振り向く動作と共にあっさりと姿を消した。

 ふと、瞳子が背後を見ると、離れた所に、瞳子の自転車が元の姿で立っていた。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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