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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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ディレイドマスカーカレイド track.15 キバの世界

「まあねー。キングと言えども、まだお小さいですもの。隠し事なんてできないし、向かない性質だってのも、レッスン見てきた先生なら見てて分かるでしょ?」
「ええまあ」
 緩やかに下降してゆくエレベーターの中で、黙って立つ透を挟んだ遥の与太話に返事をする瞳子。
「……ディレイド、あんたにも言ってんのよ」
「なんのことだ?」
 突如矛先を向けてくる遥に、透は目だけ向けて問い返した。
「キングに、あんまし突っ込んだ事訊いてイジメないであげて、って言ってるの」
「お前の要求内容は要点が著しく欠如している。もう一度話を整理して言い直せ」
「は? もうこれ以下もないってくらい噛み砕いてんじゃん?」
「はいストップ待ってください~!」
 再び額に青筋を浮かべて詰め寄る遥と透の間に、瞳子が無理矢理身体をねじ込んで宥めた。
「この人、比喩表現が苦手だから、ずばりと言ってあげないとダメなんですよ!? あのね透」
 言って瞳子は狭いゴンドラの中で怪訝顔の遥に背を向け振り向いて。
「今度キングに会っても、キングが「魔化魍」のことを黙ってたことを、指摘しないであげて欲しいんです」
「ふむ。既出の情報のことなど、改めて聞くこともないだろうから、言われるまでもないが」
「聞かないでくれるそうです」
「……はあ」
 くるりと振り向いて透の言葉を翻訳して請け負う瞳子に、遥はがっくりと肩を落とした。
「あんたさ、こんな唐変木と一緒にいて疲れない?」
「もう慣れました♪」
「あっそ」
 げんなりとした様子の遥の背後、このエレベーターのドアが、その時 静粛に開いた。
 指定階に到着したのだ。



 一触即発を起こしたあのティーラウンジから十数メートル直下。
 遥が壁に埋め込まれたコントロールパネルのスリットに通したパスがなければ出入りできないその鉄の扉の向こうに、厳重に管理された広大な研究施設が広がっていた。
 自動ドアをくぐったところで、入り口両脇に立っていたファンガイアが侵入者に対し警戒態勢を取るが、
「クイーン直属「葬儀屋」が許可した二名だ」
 凛とした遥の宣告に、警備のファンガイアは警戒を解いて元の姿勢に戻った。
「さ。こっち」
 これ以上はさしたる障害もなく、一行は遥に導かれ目的地に到着した。
「せっかくだからね。「この子」も連れて行きたいのよ。 用意はできてる?」
「はい。いつでも行けます」
 その部屋に入るなり遥が問いかけると、中にいた係員が慌ただしく動き回り、各々機材に取り付いた。
 見れば、ガラスの壁で仕切られたその向こうの部屋には、かつて見たG3ーXのように、真っ白な甲冑がハンガーに固定されていた。
 顔面には黄金の十字架をあしらった面頬を装着し、どこか神々しささえ感じる人型の甲殻。
「これが人間とファンガイアの共同製作による「Intercept X Attacker」、未知なる驚異に対する迎撃戦士システム、あ、この場合の「X」てのはその「マカモー」のことね。 システム、『イクサ』!」
 途中で解説を挟んだ遥の声に応え、白衣を着た研究員の一人がボタンを押し込むと、ガラスの向こうのフロアに電撃が迸り、その白の甲冑が動き出した。
「コネクタ、解除します」
 係員の声に続き拘束を解かれたその甲冑・イクサは、両腕をだらりと下げ、姿勢を幾度か微調整して直立すると、懸架されていたハンガーの台から一歩、二歩と器用な動作で降りてきた。
「……あの、誰か着てるんですよね?」
 先ほどの容赦ない電撃とそのあまりの自然な挙動の矛盾に瞳子が訪ねるが、遥は自信たっぷりに訂正した。
「いいえ。ロボットによる完全自律稼働よ」
 言うと、遥はそこに立つ白衣を着た女性を一人、袖を引いて引き寄せた。
「紹介するわ。このイクサのボディを造り上げたロボット工学の権威、浅尾 恵(あさお・めぐみ)さん」
「……どうも」
 とてもひとりでに歩くロボットを造ったとは思えないその正体、眼鏡をかけた華奢な女性に瞳子は唖然とした。
「そして、中身の頭脳、プログラムを組み上げたのがあちら」
 と、遥が手のひらで指すと、そこにいた男が突然机にどかんと片足を乗せた。
「わしがあン中身造り上げたコンピュータの天っ才様や! 縁舘 健吾(へりたて・けんご)、よろっしゅう!」
 怪しげな関西弁でまくしたてた男の異様に、瞳子は先ほどの浅尾 恵とは別の意味で唖然としていた。
「ええか。プログラムっちゅうのはロックや!四の五の小難しいこと考えんとバーっとやな」
「ハロー。イクサ、調子はどお?」
「あねさあああん!?」
 なにやら喚き始めた縁舘を無視して遥がコンソールから生えたマイクに向かって話しかけた。
「え!? お話もできるんですか?」
「はい。見てて下さい」
照れくさそうに言う浅尾に促され、固唾を飲んでその応答を見守る。
 すると、イクサはこちらに向き直って返答してきた。
『ア・イ・ム・オ・オ・ケ・イ』
 実にロボット臭い言葉で。
「どや?超・優秀やろが!?」

「別に縁舘のバカを擁護する訳じゃないんだけど、動作管制にソフトの大部分の容量が喰われてる現状で、あれだけでもコミュニケーションができるってのは、もの凄いことらしいのよ。わたしは詳しくは分からないけど」
 上階に続く通路を歩く三人分の足音に加え、非常に静粛ながら小刻みにうなるモーターの音が後をついてくる。
 イクサの足音だ。
「あの、本当にこのロボットも、一緒に戦うんですか?」
 透が黙っているのも、今ばかりは不安にしか感じず、「イクサを同行させる」と主張した遥に問わずにはいられない瞳子であった。
「あら。その子の腕はなかなかのもんよ。もう何度も戦闘機動の動作テストを繰り返しているし。本人に聞いてごらんなさい」
「はあ」
 隣を実に自然な挙動で歩くロボット「イクサ」の十字架の仮面を見上げ、瞳子はおずおずと声をかけてみた。
「あの、大丈夫ですか?」
『ア・ファ・ア・マ・ティ・ブ』
「……は?」
 聞き慣れない言葉に、瞳子はきょとんとした。
「「アファーマティブ」。「肯定する」とか「その通り」とか言う意味だ」
 前を歩く透がぽつりと告げた。
「……ちょっとディレイド。瞳子さんのフォローができて、なんでわたしの言ってることが汲み取れないわけ!?」
 そこに、なぜか不機嫌になった遥が噛みついた。
「ふむ。思うにお前は言語を省略し過ぎるきらいがある。今後は適切な言語を選択するよう心掛けることを勧める」
「……やっぱここで殺そうかしら」
 遥の殺気を察知したのか、透も同時に足を止め遥と対峙した。
「はいはいもういいですから行きましょう! イクサさん、遥さんをお願いします!」
 そんな二人を遮り、いい加減うんざりしてきたらしい瞳子が透を後ろから突き押し進めた。
『ラ・ジャ・ア』
「ちょっ!? あんた、なにすん」
 さらにイクサまでもが遥を羽交い締めにして連れ去って行ってしまった。

「……ちょっと遠回りしたけど、これから未確認生命体……もうこれからは「マカモー」って呼ぶけど、そのマカモーが現れたと思しき場所に行ってる調査隊の所に行くから。 ディレイドはそのバイクを使って」
 地下駐車場で、各々バイクの側に並ぶ一同を前に遥が宣告した。
「で、ゴメン。瞳子ちゃんにはここまでついて来させて悪いけど、ここで待っててくれる?」
「え?」
 言われた瞳子が困った顔で透を見返した。
「どうするの透」
「瞳子は連れて行く」
「は?」
 透が至極あっさりと告げ、今度は遥が怪訝な顔になった。
「あんた正気?手伝いだかなんだか知らないけど、瞳子ちゃんはいたいけな一般人でしょ!? 場合によっちゃマカモーと直接対決するかもしんないトコに連れてったら危ないでしょ!」
 真剣な顔で怒る遥に、だが透は相変わらずの鉄面皮で応えた。
「俺の役目は、この世界の住人では倒せない異世界の存在に対処できる仮面ライダーを連れてくることと、その前に現地住民でもできる対処法を教えることだ。それには今回は瞳子の協力が要る」
「はあ!? どういうこと!?」
「このバイクを借りていいんだな?」
 遥を無視して透は貸与された普通のバイクに歩み寄った。
 次の瞬間、そのバイクを無造作に一刀両断にされ遥が悲鳴をあげた。

「しかし、遥は「警察官の瞳子」にそっくりだな」
「言っておきますけど、遥さんの反応が一般的な反応ですからね!?」
 走行中のバイク、貸与されたバイクを変換した黄色と白のマシンディレイダーの上で、ヘルメット越しに会話する透と瞳子。
 今、イクサが運転する本人と同じカラーリングの専用バイク・イクサリオンを先頭に、遥の駆るどこか凶々しいバイク・マシンウェーバー、そしてマシンディレイダーの三台が国道を疾駆している。
 辺りの光景はビルや建造物が減るにつれ緑が増え、丘陵地帯からさらに高度を増している。前方にそびえる山へ向かっているのだろう。
「透。「別世界の私」の記憶だけど」
「やはり、そうか」
 瞳子の言葉に、その記憶を読んだ透は得心してうなずいた。
 基本的に山奥や自然の深い所に巣喰い、近隣の人里の住民や旅行者を餌食にして成長し、害悪を撒き散らす存在、「魔化魍」。
 キングの曖昧な表層意識からしか読みとれなかった、この世界に混ざり込んだ「異物」がそれである確率は一層高まったことになる。
 透はこの遠大な移動時間をそのまま検討時間とし、遭遇するであろうあらゆる事態への対処法を構築していた。

 やがて辿り着いた山の中腹の拓けた土地。
 三人と一体が、各々停車したバイクから降りた。
 既にそこに停められていたワゴン車が無人であることを確認した遥は、携帯電話を取り出して操作し耳にあてた。
「……もしもし、っつ!?」
 通話が繋がったと見るや、突然痛痒に顔をしかめて耳から遠ざけた携帯電話から、なにやらけたたましい絶叫が音を割りながら漏れ出てきたのが瞳子にまで聴こえてきた。
 悲痛な叫びにも聞こえるそれに、いきなりの衝撃から回復したらしい遥が再び耳をあてる。
「状況を報告しろ!」
 遥が一喝するが、どうも通話相手の状態は芳しくないらしい。遥の「詳しく説明しろ」という怒鳴り声が形を変えて何度も繰り返されたが要領を得ないようだ。
「いいから全速で退避しろ! 最優先だ! 切るな! こちらからも向かう!」
 厳しい顔で最後の指示を飛ばすと、遥はその携帯電話をイクサに押し付け、額に手を遣り沈黙した。
「……あの、遥さん?」
 携帯電話を受け取りながらも宙を見上げて固まっているイクサをよそに、瞳子はおずおずと問いかけるが、遥の反応はやや遅れて返ってきた。
「……ああ。ゴメンね?びっくりさせちゃって。ファンガイア族は階級社会だから、こういう時は人間の軍隊みたいになっちゃうの」
 言いながらも、今の通信の内容を吟味しているのだろう、苦悩の表情が抜けない。
「……なんだか、今度のマカモーはえらく大きいらしいのよ。要は、今まで通じていた捕獲手段が通じなくなって泡を喰っているみたい」
 完全に不測の事態なのだろう。遥の態度からは余裕が薄れている。
 その時、黙って立っていたイクサが彼方を見遣って動き出した。
『ザ・ヒョ・ウ・カ・ク・ニ・ン』
言って、一方へと歩き出すイクサに、遥も続いて歩き出した。
「調査隊の端末の位置を特定させたの。これから援護に向かうけど、今度こそ瞳子ちゃんはここにいて」
 ぎりぎりに張り詰めた笑顔で言う遥だが、透が瞳子の手を引いてついて来たのを見て完全に血相を変えた。
「ディレイド! 貴様、いったい何を考えている!」
 とうとう振り向いて怒鳴り付けてくる遥に、透はあくまでもいつものペースを崩さない。
「瞳子の異次元同位体は魔化魍退治の専門家だ。お前たちに魔化魍への対処の仕方を教えてやる」
「分からぬことを……!?」
「遥さん! お願いします!」
 立ちはだかる遥に、瞳子までもが言い募った。
「調査隊のファンガイアの方が大変なことになる前に……! 私と透なら、きっと確実に対処できますから!」
 遥を見つめる瞳子の目は、ただのヴァイオリニストの目ではなくなっていた。
 ティーラウンジでは戦士二人に挟まれただ震えているしかなかったはずの瞳子が、まるで遥をも救助せんとする専門家の顔になっていたのだ。
「……そこまで言うなら、ここからは自己責任になるぞ?」
「分かっています」
 敢えて戦士の顔で問いかけるも、きっぱりと返答する瞳子に、遥はわずかに目を閉じて黙考し決断した。
「ディレイド。瞳子のことは、場合によっては完全に任せるぞ」
「問題ない」
 万が一の際には「瞳子を見捨てる」と念押ししたと言うのに二人の表情は揺るがない。
 透に至っては逆に心配になるほどのあっさりとした返答だが、その確証は認めざるを得ないのは分かっている。
「よし! では付いて来い!」
 イクサに先行を促した遥と共に、透と瞳子も森の奥へと突入していった。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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