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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.26 カブトの世界

「まずは、わたしのことを説明しておこうか。」
台場 和馬が、改めて三人を前に語り出した。
「わたしはマスクドライダーシステム「クライプ」の適合資格者にして、クロックアップシステムの要、「観測者」だ。」
ワームのクロックアップに対抗するためには、人間側もクロックアップしなければならない。
その為のシステムの開発と同時に、「加速空間」の存在を解析し、加速空間への干渉の足がかりを用意しなくてはならない。
「クロックアップ装置さえあれば加速空間に突入できる」という、そんな簡単な話ではなかった。
まずは「加速空間」を認識し、その存在確率を確定しなくてはならなかったのだ。
「その為にわたしは、存在をこの現実世界から乖離させられた。今のわたしは、ここにいて、ここにはいない。時の流れから若干はみ出した世界にいる。そこから「加速空間」を認識し、ライダーシステムのクロックアップのための足がかりとなっている。」
「例えて言えば、この世界を一冊の書籍だとするならば、この男は登場人物のひとりにして読者でもある。読者ならば、ゆっくり読むも、速く読むも自由自在だ。」
透の補足にうなずきながら台場が続ける。
「わたしは時の流れから乖離しているゆえ、過去と未来を全て視ることができる。書籍の例えで言うならば、読者たるわたしは、本のいかなるページからでも内容を見ることができる。ディレイドの行動を予見できたのもそれが理由だ。」
「へえ。」
瞳子がぼんやりと生返事した。
正直、瞳子には言っていることがよく分からなかったが。
「……って、ちょっと待ってくれよ」
呆然と聞き流していた各務が、ようやく意識を帰還させたらしい。
「俺も初めて聞いたぞそんな話!? もしそいつが事実なら、ゼクトの機密中の機密事項じゃないのか!?」
「うむ。」
台場はあっさりとうなずいた。
「だが、今この世界に起きている異常事態に対処するためには必要な情報だ。お前にも知っておいてもらいたい。」
「いや、だとしてあんたは本当に何者なんだよ!? まさか「ネオゼクト」じゃないだろうな!?」

秘密組織「ゼクト」から、思想の違いにより離反した者たちが結成した「ネオゼクト」。
カウンターイントゥルーダーとしての本分には違いはないのだが、この両者は互いをも敵と見なし、それぞれが開発したマスクドライダーを多数擁して小競り合いが続いている。
「ふむ。わたしの出自はゼクトだが、今となってはあまり関係ないな。どちらにも。 だがそれは後で話そう。まずはこの世界の異常についてだ。その異常に対処するために、ディレイドの力が不可欠なのだ。」
「……あのさ。」
そこに、ぽつりと瞳子が口を挟んだ。
「それなら、その厄介事も解決できるんじゃないの?未来が読めんなら解決方法も分かるってことでしょ?」
「それがこの世界の中でのことならな。」
台場 和馬曰く。
その異常現象は、この世界のものとは異なる物理法則によってもたらされているらしい。少なくとも「加速空間」を含めた「時の流れ」から完全にはみ出した事象であるらしいのだ。
そして、その異常を引き起こしたのは、見たこともない怪生物の仕業。
「ゆえに、わたしもその怪生物が干渉した後の未来は読めん。 だが、奴等も干渉してくるこの三次元中ならばこちらからも直接干渉できる。」
「……じゃあ、やっつけられるんじゃないの?」
ことさら眉間の皺を深くした瞳子が問うが、台場は笑顔でうなずいた。
「うむ。倒すことはできたのだ。なにしろ奴等はクロックアップを持たない。クロックアップしない存在など敵ではない。」
「……なら、いいんじゃないの?」
台場はゆるゆると頭を振る。
「奴等は、倒した後 復活するのだ。何度でも。これは脅威だ。対処はできる。一方的に倒すことも。だが、無限に復活されては解決できない。そして問題はこれだけではない。」
台場は今度は全員に向き直り、三人を視野に収めながら。
「今、この世界は世界の住人の気付かぬうちに三十回ほど上書きを繰り返している。」
「「は?」」
瞳子と各務の素っ頓狂な声が重なった。
「ど、どういうことだよ」
僅かにその言葉に不吉なニュアンスを感じ取った各務が問い返す。
「この世界は実は、三十回ほど滅びているのだ。正確には、過去を破壊されて歴史を消去されている。この「現在」が、何度も「なかったこと」にされているのだ。」
しばし、静寂が辺りを包む。
瞳子と各務の中で、情報が浸透するのを台場はじっと待った。
「……だとして、じゃあ今ここでこうしてるあたしらは、なんなの?」
どちらかと言うと眉唾な話にケチを付けるような顔で瞳子が聞き返した。
「うむ。この世界は、破壊される度にその都度復元されているのだ。 カブトによって。」
「「カブト!?」」
再び瞳子と各務の声が重なった。
「カブトって、クロックアップの暴走とかで、あちこちで事件を起こしてるアレ!?」
「いや待った瞳子ちゃん!そいつはゼクトの反逆者がばら撒いた嘘の情報だ!実際にはワームしか攻撃していないって今のゼクトも把握してる! ……で、なんでそのカブトが世界を救えるんだ!?」
「うむ。現在のカブトはクロックアップシステムを暴走させて現実世界に帰還できないでいる。そしてその暴走は、一年後にロールアウトする「ハイパーゼクター」を未来から喚び寄せさらに悪化している。」
「……いやだからそれ機密事項……」
「黙れ。ハイパーゼクターまで暴走したシステムに取り込んだカブトはさらなる加速に見舞われ、システムが装着者の運命に干渉して輪廻のループに突入し、現在三十回ほど人生を繰り返している。」
「はあ!? ……え、三十回って、」
同じことに思い至ったのか、各務に続き瞳子も驚愕の表情で固まっている。
「そうだ。奴は、自分の人生を差し出すことで過去の破壊から歴史を守り世界を復元させ続けている。」
「…………。」
もしも言う通りなら、カブトは孤軍奮闘などという言葉すら生易しい孤独な戦いにさらされていることになる。
「各務。実は、元々の歴史には「ネオゼクト」は存在していなかった。マスクドライダーシステムも、これほどの数は生まれていなかった。これらは全て、カブトが繰り返した歴史から漂着してきた異歴史の産物なのだ。」
「そんな……」
薄ら寒さに僅かに身震いする各務。
世界の根幹を揺るがす一大事である。
「カブトシステムの暴走を停止させる方法はまだ見当が付かんが、このまま奴にだけ人生を浪費させるのも忍びない。ハイパーゼクターの異常干渉も、その怪生物の存在と歴史への干渉が無関係とも思えん。どちらが先だったのかも、詳しくは分からん。だから、まずはその怪生物を片づける。 そこでディレイド。その怪生物に心当たりはあるか?」
「うむ。」
ぐきゅるるる~。
「えっと、ちょっと待った!」
そこに、腹をおさえて顔をしかめた各務の声が割り込んだ。

「ちょっと一旦待ってくれよ!? 大変なのは分かったけど、こっちは飯食う直前に拉致されて腹減ったままなんだ!?」

かように空腹の怒りを炸裂させた各務 新は今、三人から離れて一人、近くのコンビニでパン棚を物色していた。
「天堂屋」に連敗しているため、ここのコンビニではおでんを取り扱うのをやめたと言う。恐るべしおばあちゃん、と新は思う。
「各務!」
それはさて置きパンを選んでいると、あの二人と待っているはずの瞳子がコンビニに入ってきた。
「なんだい瞳子ちゃん。あの二人に急かされたかい?」
だとしたら冗談じゃない。世界の危機は聞き捨てならないが、救う本人も腹が減るのだ。
だが瞳子はサンバイザーのツバを後ろに回しながらいつもの飄々としたペースで歩いてくる。
「あのさ各務」
「ん?……ぅい!?」
会話の間合いをあっさり踏み越えていきなり首筋に抱きついてきた瞳子の行動に仰天する。
「ちょちょちょちょっと、瞳子ちゃん!?」
「……あんたの願い、叶えてあげよっか。」
抱きつく腕は緩めぬまま間近で蠱惑的に笑む瞳子と、かかる吐息に新は混乱していた。
「へ?え?なに?ちょっ」
「あの娘と仲良くなりたいんでしょ? あたしが一肌脱いであげようかって言ってんの。」
瞳子の言う「あの娘」が「天堂屋」の看板娘・|天堂 真優《てんどう・まゆ》のことを指しているのは言わずもがな。
「え?いや、そりゃありがたいけどなんでいきなりこんな」
一肌脱ぐ、の言葉でそういや瞳子のファッションは露出が多いなと気付き、一気に顔が熱くなる。
さらにはコンビニの棚は総じて低く視界が拓けている。店員と他の客の目を気にして新が焦りまくっていると。
「……あんたの願い、聞いたよ。」
にこっ、と艶っぽく微笑むと抱擁を解放し、瞳子はととっと軽い歩調でコンビニを出ていった。
「……な、なんだったんだ……」

やがていたたまれない空気の中からようやくパンを買って脱出した新は、インカムを耳に挿し直しながらせかせかと歩いていた。
「あーもう!? なんだ!? 瞳子ちゃんまであいつらの仲間入りか!?」
普段なら可愛いいたずらで済ませられようが、空腹状態の今では少々癇に障る。
照れ隠しも含めて大げさに憤慨しているそこへ、向こうから瞳子が再びやって来た。
「各務!」
「あーもー! だからちょっと待っててくれって」
まるでさっきのことがなかったかのように今度は普通のいつもの笑顔で近づいてくる瞳子に、若干八つ当たりぎみに言い返した。
「パンくらい歩きながらでも食えるからさ」
「各務、あのさ」
パンの包みを破こうとしたところへ、またも瞳子が会話の間合いをあっさり踏み越えて肉迫してきたことに気付いた瞬間。
鈍い痛みと共に新の意識は深い闇に落ちた。

「……ダメ。コンビニにもいなかった。買い物して出ていったってのは店員が見てたけど。」
なかなか戻ってこない各務の様子を見に行った瞳子が戻ってきた。
「どーこ行っちゃったんだか。なんか店員に変な顔されるし。」
「……むう。怪生物に干渉されたな。」
「へ?」
台場の確信を込めた呟きに瞳子が聞き返す。
「なんで分かんの?」
「先ほども言った通り、わたしには未来が視える。正確には主観の基点を要するが、それは置いておこう。そして怪生物が干渉した未来は視えないとも言ったな。今、各務の行く先が視えない。すなわち、各務はその怪生物に接触したと言うことだ。」
「イマジンだな。」
唐突に透が告げた。
「その怪生物のことか。」
「うむ。イマジンは、遠い未来から一定距離ごとに過去へと跳び移り、過去を破壊して現在を消去しその歴史線の時間軸を奪う習性がある。そういう異世界の存在だ。」
「ふむ。なるほどな。まさに今起きている異常そのものだ。」
「なんなのそいつ!? そんなのどうやってやっつければいいっての!?」
台場によれば、その上いくら倒しても復活すると言う。
「うむ。イマジン自体は未確定確率の塵の存在で、確定事項たる現実世界には完全には干渉できない。だが、人間とある契約を結び、その人間の記憶を拠り所とすることで疑似的に自身の存在確率を確定することができる。言わば「実体化」だ。この状態なら物理に干渉できるようになる、そしてこちらから破壊してやることも。」
台場がうなずく。
「だが、その状態のイマジンは、契約者の記憶を拠り所とした疑似的な実体。契約者の記憶がある限り何度でも実体化する。完全に滅ぼすには、契約者のイマジンについての記憶を消去するか、さもなくば契約を履行させ、完全に実体化したところを叩くしかない。」
「ふむ。ならば次にイマジンを発見したなら、成り行きを監視しつつ追跡すればいいのだな?」
「いや。そうもいかない。」
台場の言葉に首を振る透。
「イマジンが契約を完遂した時は、同時に過去に跳ぶ時でもある。イマジンが過去に跳ぶ手段とは、契約者の過去への思い出を時間跳躍の道標とし、契約の履行によって契約者の精神を支配し、契約者自身をゲートにすることによって可能となる。そしてそれで時間跳躍できるのはイマジン本人のみだ。 この世界に単独で過去へ跳べるライダーはいまい?」
「ハイパーゼクターを装備したカブトなら、あるいは可能だと思われるが、この現在の時間を守らねばならん現状では、カブトは身動きできまい。」
「うむ。だから、まずは今活動しているイマジンは俺が撃破する。その後、過去へ跳躍できる仮面ライダーを俺が連れてこよう。正確にはその仮面ライダーを擁するタイムマシンをな。」
「……あれ?」
その時、瞳子が振り向いた。
「いま、なんか聞こえなかった?がしゃーんとか凄い壊れる音。」
「うむ。」
「ああ。聞こえたな。」
「しれっと聞き流してんじゃない! 事件かな?事故かな?」
言いながら、ジャケットのポケットからデジタルカメラを引き抜いて神社の境内から飛び出してゆく瞳子。
「ああああっ!?」
そして、道路に出るなりその方角を見て悲鳴をあげた。
「どうした。」
大股で歩いてきた台場が瞳子の背後からそちらを覗き込んだ。
「あ、あそこ!?」
瞳子が指さした先では、玄関を破壊された天堂屋から騒動の音が響いていた。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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