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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.35 電王の世界

緊急特務車両『エクリスエクスプレス』。
全十三両編成という長大な構成のこの車両は、基本的なデザインラインこそ統一されているがそれぞれ各車両異なった外観をしており、それぞれ「黄道十二星座」をモチーフとした形状をしている。
ちなみに三号車「ジェミニ」が二両構成のため合計十三両編成となっている。
その中の八両目、七号車「リーブラ」内に一同はやって来ていた。


「……なに、これ……」
それを見た瞳子が、うわごとの様に呟いた。
ほか、美穂と秋乃も似たような感想を抱いたように痛ましげに眉をしかめていた。
曰く言うところの「時空嵐の元凶のひとつ」であると見せられたものは。
エクリスエクスプレスの中でも危険物の搬送等に活用されると言う特に内壁の頑丈なこの部屋に閉じこめられていたものは。
年端もいかぬ儚げな少女であった。
簡易な布にくるまれただけの少女には、両腕がなかった。
一見、両腕がないように見えた。
それは実の所は、両腕を胸元で交差させてベルトで固定し上体を束縛する拘束具。
そんなものを着せられて、しかも粗末なシートに腰掛けた彼女の両足は枷を填められ、一切の身動きを封じられていたのだ。
その状態で、少女は憔悴し、疑惑に満ちた面持ちでこちらを見つめている。それは、警戒し怯える小動物のように見えた。
エクリスエクスプレスのオーナーの背後で、恭也が渋面で舌打ちしている。
一同が少女を遠巻きにしている中でその少女を観察するように見ていた透が、やおら無言で一枚のカードを取り出した。
それは、いつものライドカードでも、龍騎のアドベントカードでもなく、「時の列車」のチケットとも異なる瞳子も見たことのないカード。
枠線のデザインのみで、枠の中が空いているそれを見た瞬間、少女が恐怖に目を歪ませて「ひっ!?」と小さく悲鳴をあげたのが聞こえた。
構わずそのカードをかざして少女の元へ歩き出した透の前に、恭也と瞳子が血相を変えて飛び出した。
そして透の胸倉を掴んだ恭也とその振り上げた拳にしがみ付いた瞳子が絶叫する。
「てめえナニするつもりだぁッ!?」
「やめなさい透っ!」
一旦歩みを止める透。
何が起きたのか分からない美穂と秋乃は呆然としていた。
「おいコラぁ!てめぇナニするつもりだったッ!」
いまだ殴るつもり満々の恭也の拳にしがみ付いたまま瞳子も言い募る。
「透!説明して!」
激しい勢いで暴れる恭也の片腕を必死で抑えながら瞳子が続ける。
「遥と一緒に戦った時、透がいっぺん停止した時から思ってたんだけど!あんた、まず説明しなよ!? それから、せめてあたしには相談して!あたしにもそれなりのアドバンテージがあるってことを、あんたは学んだはずでしょ!?」
「…………。」
恭也に胸倉を掴まれていることは全く無視し、透は瞳子の言葉を検討しているように沈黙している。
「……ふむ。いいだろう。説明しよう。」
やがてカードを持つ手を下げ、透は進行する態勢を解いた。
「恭也、もう、大丈夫だから……」
「…………」
瞳子に宥められ、恭也も手を離して距離を置く。だが、透から少女を遮る位置からは動かなかった。
「お前の言うことに一理あることも認めるが、これは本来なら見た瞬間に片付けなければならなかったことだ。 お前のアドバンテージが今回も有効に働くか分からないが、一度 試行してみるとしよう。」
まず透は、瞳子に向かいそう前置きしてから語り始めた。
「そいつは、『ジョーカー』だ。」
「『ジョーカー』!?」
恭也が胡散臭げに聞き返す。
「先ほど言った通り異世界の存在で、その世界では生物の進化と人類が世界を支配し繁栄した歴史の根拠に、53種の生物の始祖によるバトルロイヤルに人間の始祖が唯一勝利したという過去があった。その戦いを「バトルファイト」と呼び、それに参戦した各種生物の始祖を「イデアファウンダー」と言う。イデアファウンダーは各種生物の概念が一個体として顕現した疑似物理存在。例えば「赤」とか「前」といった「概念」そのものを物理的に破壊することができないのと同様、各種生物の存在の概念の化身であるイデアファウンダーは、疑似的とはいえ物質でありながら破壊することができない。「バトルファイト」においては、一定のダメージを負うと敗北が確定するルールがあったが、そうでなくとも、物理攻撃で弱らせることはできても、絶対に殺すことはできない。よって現地の研究者はイデアファウンダーを不死生物「アンデッド」と名付けた。が、まあそれはいい。 バトルファイトにおいては、勝者には全生命を統率する「統制者」から「万能の力」が与えられ、世界に種として君臨できると言う。だがそこに、もうひとつルールがあった。「ジョーカーが勝ち残った場合、「統制者」は全生命を消去し、全てをリセットする」というルールが、な。」
真顔で滔々と語る透の言葉に、瞳子、秋乃、恭也は内容とその先の見当が付いたのか、顔色が変わってきている。
「その本来の世界で、ある事件により封印されていたアンデッドが流出する事件があった。殺せないイデアファウンダーは、敗北が確定した段階でカードに封印される。それが解き放たれたのだ。奴らにしてみれば、再び地上の覇権を狙えるチャンスと見なしただろう。人間の始祖、言わば「ヒューマンアンデッド」が再び勝ち残らなければ、人間の世界は滅びてしまう。 だが、それはその世界の事件だとして。さて。」
透は再び間を置き、一同の理解を待った。
特に恭也の顔色がひどい。
「さて。ここに「ジョーカー」がいるな。この世界に他にもイデアファウンダー「アンデッド」が紛れ込んでいるのかは分からんが、「時の列車」の情報にはかかっていない。『この世界には「ジョーカー」一体しかいない』と見做すべきだろう。ならばこの世界はどうなる。これから向かう地点に「統制者」が出現しており、『「ジョーカー」の勝利と見なして今まさにこの世界にリセットをかけようとしている』と考えるのが一番妥当だろう。そしてそれを防ぐことは簡単だ。その「ジョーカー」をこのカードに封印し、「勝者なし」の状態にしてしまうことだ。そうすれば「統制者」はリセットを行わない。」
ひょい、と再びカードをかざす透。
「分かったか。なぜジョーカーがこの世界のここに現れたのかは謎だが、今すぐ封印せねば、世界は滅びる。」
「……ねえ、透。封印されたら、彼女は、どうなるの?」
瞳子が、少女の表情からでもすぐ分かりそうな質問をした。
「特に高等なイデアファウンダーには人格を模したインターフェースを持つものがいるが、封印されればその人間態の姿と人格は消失し、概念の情報のみの存在として、カードに永遠に記録される。」
つまり、死や消滅と同義。
「これで、俺が事を急いだ理由が分かっただろう。さあ。そこをどけ。」
「!、どかねえって言ってんだろ!?」
再び歩みを始めた透に喰ってかかる恭也の腕を掴んで宥めながら、瞳子は必死に思考を巡らせ言葉を紡ぎ出した。
「……ねえ透、それって、まだ時間はあるよね!?」
「誰一人被害を出さないという条件なら、猶予はない。仮に人類の最後の一人が残ればいいという条件なら、約148時間か。」
「うわ極端な。」
「そこじゃないでしょ!? そいつは、一週間で全世界の生命をリセットできるの!?」
美穂の呟きに秋乃が驚愕を被せた。
「……少なくとも、透があたしの話を聞く時間はあったわけだよ。そうでしょ?」
必死に頭を回転させながら言葉を続ける瞳子。
「ねえ透。その「統制者」っていうのは、具体的にどうやって全世界の生命をリセットさせるの?」
「不明だ。」
「ねえオーナー。」
瞳子は、今度はエクリスエクスプレスのオーナーに問いかけた。
「今、この時空嵐のほかに、なにか大きな被害は出てる?」
「いえ。ですが、全ての「時の管理者」は「高確率で148時間後に世界が壊滅状態に陥る」という計測結果で一致しています。」
エクリスエクスプレスのオーナーは、つらっと澄まし顔で終末を告げた。
アリアライナーのオーナーも、そっぽを向いているが肯定的な気配だった。
「……それなのに駅長はあの笑顔なの……?」
秋乃が泣きそうな顔で呟いた。
「オーケー。これからじわじわ来るのか、148時間後にいきなりバーンと来るのか分かんないけど、「今は」まだ大丈夫みたいだね。 ねえ透。」
言って再び透を見つめる。
「この娘を、その「護るべき人類」の中に入れてくんないかな。」
「…………。」
「あたしの考えてること、分かるよね? ジョーカーだとしても、怖がるとか感情を持ってる一人の人間でもあるんだよ? そうと分かった以上、この娘を、この感情を犠牲にして得た平和の世界にあたしは居られない。あたしはこの娘も守りたい。みんな、そう思ってる。」
美穂が、秋乃が、恭也がうなずいた。
「…………。」
「ねえ透、お願い。最後の最後まで、あたしたちに戦わせて。透も、あたしたちのやり方に協力して。 あたしたち全員がダメになったら、その時は透が手を下して。」
「…………。」
瞳子の必死の訴えに、透は黙したまま。
見た目には無視しているように見えるかもしれないが、瞳子には、透がなにか検討しているように見えた。
あとひとつ。
あと一押しで同意を取り付けられるかもしれない。
そう見当を付け、瞳子は知恵を絞り続けた。
「あのさ。」
そこに、美穂があっけらかんと言ってきた。
「その「統制者」っていうのをやっつけるんじゃダメなの? これから、そこに行くんだよね?」
「「……!?」」
なんと透までもが美穂を振り向いた。
「……え?なに?」
「ふむ。いいだろう。 瞳子、基本的にお前の方針で動く。」
唐突に透は意見を翻した。
「まずは「統制者」を叩く。全員が、全力で、全戦力を尽くす。ただし条件がある。瞳子の策が尽きた時、俺はジョーカーを封印する。それでいいな。」
「……。」
あまりの切り替えの早さに全員が面食らっていたが、やがて瞳子はその意味を理解した。
「うん!それでいい! 恭也!封印はしないって!」
「……お? ……おお」
恭也はいまだきょとんとしていたが。
「美穂。あんた偶にとんでもないこと思い付くわよね。」
「そう?」
秋乃の呆れたような安堵の言葉に、当然のような顔をしている美穂は首を傾げた。
「じゃあ透!この娘のこの拘束って、意味ある?」
瞳子が少女を指して透に問い掛けた。
「……いや。まるで意味はないな。」
言って少女に近付いた透は、怯える少女に構わず拘束着のベルトを摘んだり引いたりして素材の具合を確かめながら。
「もしジョーカーがその本性を顕したなら、こんな拘束など簡単に引きちぎるだろう。」
「ねえオーナー聞いた!? これ意味ないから解いてよ! ねえ、一緒にお茶しよう?」
「……いや、しかし……」
言い渋るエクリスエクスプレスのオーナーの上腕を、アリアライナーのオーナーがぽんと叩いた。
「ワールドスライダーの超越権限よ。外してあげなさいな。 大丈夫よ。あの子たちがいるんだから。」
「はい分かりました」
あっさりと首肯すると、エクリスエクスプレスのオーナーのフィンガースナップの音一発で、少女の拘束がすべて解けた。
「おお!?」
「ほら、恭也。」
「あ、ああ」
美穂が目を輝かせ、瞳子が恭也を促して少女を立たせた。

『ね! このケーキおいしいでしょう!』
『ああ素敵!おいしい!おいし過ぎて死んじゃう!ああでも死ぬのはイヤ!? 死ぬ前にきちんと食べておかないと……』
『ああなんたる美味!? かつてこれほどの感動があっただろうか!? どっかの恭也は甘味処を迂回して歩くようになってしまったのでこの味わいは久しぶりだ!ああ素晴らしきかな! ああそこのウェイトレス。同じものをあと五つ頂けまいか』
「畏まりました。」
「かしこまらんでええわ!あんたもほいほい出してっとそいつら懐いちまうぞ!?」
ひとつのテーブルについたイマジンたちが大量のケーキをがつがつと貪り喰っている。
『あらなによけちんぼ恭也。男の嫉妬は見苦しいわよ?』
『恭也もかのウェイトレスの器量を見習わねばならんぞ。良い男はもっと心を広く持つものだ。』
「うるせえよ!? ヒトの堪忍袋の緒の上でシリー・ウォークしている奴に付ける薬はねえよ!」
通路を挟んだ漫才に、拘束を解かれた少女がけらけらと屈託なく笑っていた。
今、一同は再びアリアライナーの食堂車に移っていた。
「でね、あなたのこと、なんて呼んだらいい?」
そこで隣に座る瞳子が少女に問いかけた。
「はい。わたしの名前は、|相川 初《あいかわ・うい》っていいます。」
にこにこと少女、相川 初は自身の名を告げた。
ぼさぼさだった髪は櫛で梳いて整えられ、秋乃の持ち物から渡されたヘアピンを差したその少女は、愛らしい純朴さであると言えた。
同様に、アリアライナーに置いてある秋乃の着替えを着せているが、秋乃よりもさらに小柄な初にはだぼだぼだった。
恐らく、十代半ばにも満たないに違いない。
「そっかぁ。じゃあ、ういちゃんでいいね!」
美穂が朗らかに愛称を呼んだ。
「あ。ねえ、ここって飲み物は他に何があるかな」
「ちょっと待って。竹中さん!手が空いたらメニューちょうだい!」
「畏まりました。」
瞳子の問いに秋乃がケーキを大量に運んできたメイドへと声をかけた。
『やたー!今日はケーキ食べ放題!?』
『ああ!?感動の連続よ!? この極上の甘さの素晴らしさを知る度にわたしの矮小さが身に滲みるわああ死にそう……』
『ふむほむ。 ああ、この味わいの感動を言葉で表したいが、喉元まで言葉が出かかってはまた嚥下してしまう。またよく味わわなくては』
「って、おまえそれひとつ寄越せ!」
『あああ何をする恭也!?』
「ほらよ。」
言って、恭也はシーザーの前から奪い取ったケーキを、シートの背もたれ越しに瞳子と初の間に突き出した。
「あ。……ありがと。」
ぼそぼそと、顔を赤くしてそれを受け取る初。
「おおー!恭也くん気が利くね! ……ろりこん?」
「紳士的って言え!そいつのこと好きになんぞ!?」
美穂の一言に歯を食いしばった凶悪な笑顔で言い返す恭也。
だが、指差された秋乃は困ったように曖昧な笑顔で小首を傾げるのみ。
「あー秋乃はヤメといたほうがいいよ。ハリセンでべっこべこにうぐ!?」
曖昧な笑顔の隣に座っていた美穂が突然言葉の途中で悶絶した。
「ほら。女の子の前で悪い冗談。」
秋乃が、まるで陶でできたような笑顔で窘める。
その目はまるで笑っていなかった。
「……で? 私がなんですか?」
その笑顔で恭也を見つめてくるが、シートの背もたれに肘を突いた恭也はそれを半眼で見返した。
「……ロリコンにでもならねーとピリとも来ねー女だなって言ったんだよ。」
「……え!? ちょっと、恭也……」
振り向いて見上げた瞳子の制止にもよらず、なぜか二人の険悪なオーラは共鳴し増幅し始めた。
「あら。見る目がない男は可哀想ね。紳士が聞いて呆れるわ。」
「生憎と俺の知ってるレディーの得意技に「暗殺」ってのは入ってないんでな。ところでハリセンって何のことだ?」
「あら?知らないの?……これのことよ」
言って、凄まじい笑顔で秋乃は傍らの小さいバッグから一体どうやってか長大なハリセンを引き摺り出した。
「ちょっと!? 秋乃も!?」
瞳子の声は届かない。
ハリセンをぶら下げた秋乃はまるで怨霊のようにゆらりと立ち上がると通路に歩み出てゆく。
「ついでに教えてあげる。ハリセンっていうのはね。無礼で無粋でとにかくダメな男を躾る為の道具なの。」
同様に怒気を放ちながら、恭也も青白い笑顔でシートから降り通路に出てくる。
対峙する二人の身長差は隔絶しているというのにその纏う気迫は同等で、今なお増大している。
「ほう?どっかの猫かぶりの巧いヤツに良く似合いそうな道具だな。 で。そりゃどうやって使うんだ?」
「本来はこの平らな面を使うんだけれど、格別に効果的なのはこの折れ線が並んだ面ね。」
秋乃はハリセンの折れ線を指でつつーとなぞる。
「ははっ。そんな紙っぺらでダメ男が真人間になればいいけどな。」
「試してみる?」
「言ってる意味がわかんねーよ。どこで試すってんだ?」
きりきりと、緊張の糸が引き絞られてゆく。
「ねえ?あの?ちょっと?ふたりとも?」
瞳子がなんとか宥めようとするが、どうも聞こえた様子がない。
固唾を飲んで二人を見守っている美穂と初。
美穂は言い出しっぺなのに。
そして。
「……ここでよッ!」
『とうっ!』
とうとう機が満ちて緊張が弾けた瞬間。
なぜか突然シーザーが横っ飛びに恭也の身体に重なった。
フルスイングのハリセンを崩れた体勢でかわした恭也は、姿勢を戻した時、既にその様相を変化させていた。
すっ、と背筋を伸ばして立った恭也は、髪をテカテカのオールバックに纏められ、その中に一房だけピンクのメッシュが入り、微かに眉をしかめたその瞳は力強くピンクに光り、そしてなぜか鼻の下に雄々しいカイゼル髭が付いていた。
『やめたまえ!我が輩は争いは好まない!』
「「……ぷっ。」」
そして片手を挙げ堂々と宣告した「シーザーが憑依した恭也」のその姿に、秋乃を含めた少女たちの仮借ない爆笑が沸き上がった。
『さあ恭也。恭也も怒ってばかりいないでこの味の芸術を堪能するのだ。身体に甘いものを入れればきっと恭也のような誰彼構わず噛みつく狂犬のような男でもまるまるに丸くなるであろう!』
『コラ待てテメエ!? 誰が何だ!? 味わうのはやっぱおまえだろ!? それから丸くなんのは性格か!?身体か!?』
押し退けられた意識の中で罵声を飛ばしまくっている恭也の身体は、ヴァイオラの隣のシートにどっかと座ると猛然とケーキを貪り始めた。
『うん!美味い!』
『こらーー!?』
もぐもぐと頬を膨らませた恭也の顔はクリームにまみれ、立派だったカイゼル髭が真っ白になっていた。
「「…………!?」」
再び絶叫のような爆笑が巻き起こる。
秋乃は既に脈絡を忘れたように笑っていた。
初も、目尻に涙を浮かべて腹を抱えている。
もう争いの空気はどこにもなくなっていた。

瞳子らが賑やかにしている脇では、専用シートにアリアライナーのオーナーが、その通路を挟んだシートにエクリスエクスプレスのオーナーが、そして瞳子らを挟んだ一番後ろのシートに透がそれぞれ腰掛け茶を飲んでいた。
当然のように透はコーヒーのおかわりを延々と続け。
竹中はその間、各員のオーダーを代わるがわる持ち運ぶなど細々と動き回っていた。それは瞳子にも遠慮を感じさせない機敏かつさりげない動き。
この食堂の憩いの空気は、控え目な彼女の高い能力によって維持されている。
これから戦いに赴く彼女らの心身のコンディションをベストな状態に保つ為に。
そしてその時は訪れた。
『インフォメーション。該当座標地点に大型構造物の反応を確認。あと十秒で目視可能距離に到達します。』
突然、車内に女声の合成音声が響き渡った。
「え!? なに!? 今の誰!?」
「失礼。我がエクリスエクスプレスの制御システム《プトレマイオス》です。」
びっくりして見回す美穂に、エクリスエクスプレスのオーナーがゆったりと立ち上がりながら答えた。
「目的地が見えてきたようです。」
言って、エクリスエクスプレスのオーナーは近くの窓を覗き込む。
「えぇ!? どこどこ」
美穂に続き全員がそれぞれの窓に張り付いた。
だが。
「ちょっと待ってよ。「目視可能距離」って、誰の視力を基準にしてるの?」
秋乃の冷たい指摘の通り、延々と続く荒野には、特にこれといった物は見当たらない。
「融通が利かないのは、オーナーに似たのかしらね?」
そこに、唯一シートに腰掛けたままのアリアライナーのオーナーが呟いた。
「あんた。ここのスクリーン使っていいから映像を出しなさい。」
「ええ。それでは。」
あっさりと引き下がったエクリスエクスプレスのオーナーに、瞳子らが肩をコケさせる。
「……やっぱり。」
「例え点に見えても「目視可能距離」、か。」
秋乃と瞳子が疲れた表情でぼやいた。
「プトレマイオス。こちらのスクリーンに映像を出してください。」
『ラジャー。』
その声と共に、この食堂の壁の一部をモニターと成して映像が出現した。
地平線を画面の中央よりやや下に。荒れ狂う空の虹色と吹きすさぶ荒野の砂色の間に、奇妙なものがぽつんと立っているのが見えた。
「……なにあれ。」
一瞬、それが何か分からなかった。
何となく、瓶に見えた。黒く、細長いビンに。
だがそれは角度を変えてゆくにつれ、別の姿を現してゆく。
「……え?」
美穂が、その意味が分からず呆けた声を漏らした。
ビンと思われたそれの、細い上半分の幅が増し、太い下半分が細くなってゆくのだ。
すなわち、それは黒い板状の構造物。もし黒い長方形の鉄板を、中心で九十度捻ったらこうなるであろうという形状をしていた。
「……へんなの。」
「え?ちょっと待って。これ、どれくらいの大きさなの!?」
突然、秋乃が喫驚した。
瞳子と恭也は瞬時にその意味を悟る。
映像の、その黒い板の手前を、荒野の光景が、無数の岩が通り過ぎていっている。
つまり、現在列車は目標地点を遠巻きにして走行しており、カメラは横を向いているということ。
そしてその間を通過してゆく荒野の岩の配置からその構造物がカメラの視点からしても遠くにあると言うこと。
その構造物の近くに比較対照物がない為に判別しづらいが、恐らく、とても大きい。
「プトレマイオス。対象のサイズを計測してください。」
『ラジャー。 計測完了。当該構造物は、全高100メートル。最大幅25メートル。』
「……高層ビル並じゃない!?」
プトレマイオスの出した計測結果に秋乃が悲鳴をあげた。
「なんなのよあれ!?」
「「統制者」だ。」
唐突に透が呟いた。
「なんだ?あの中に「統制者」が住んでんのか?」
恭也の問いに透は首を振った。
「生憎と、この「統制する者」の存在の概念は人類の概念を遙かに越えている。言うなれば、その正体である情報思念体がこの次元に干渉することで空間と質量を歪めて現地の知性体の目に移る姿。 他のなんでもなく、あれが、統制者だ。」
「…………」
透の答えを裏付けるかのように、初が真剣な面持ちで映像のそれを注視している。
「さあ。皆で頑張ってあれを倒すぞ。」
「……えーっと。とりあえずこの距離でそれが分かって良かった。 みんな、集合。」
透の平坦な発破を無視して、頭痛を堪えるようにこめかみを押さえる瞳子の号令でぞろぞろとテーブルに戻る一同。
「……どうしよう。今「殴っても効かないぞ」って言われたような気がしたんだけど。」
「うん。私もそう聞こえた。」
沈鬱な面持ちで呟く瞳子と秋乃。
「ねえオーナー。オーナーは、あそこに初ちゃんを連れて行って、何をする予定だったの?」
「両者の接近によって発生する現象の調査を行う予定でした。ディレイドが来ると分かるまでは。」
しれっと応えたエクリスエクスプレスのオーナーの言に、また頭を抱える瞳子と秋乃。
「行くだけのつもりだったのか……」
「もしかして駅長、匙投げたんじゃないでしょうね!?」
呆れるほど杜撰な行動。
いや、それほどにこれが「手の打ちようのない事態」と言うことだ。
「……ねえ透。 いや、そのカードはしまって。まだだから。」
例のカードをかざしていた透にぞんざいに手を振る。
「ねえ透。初ちゃんを元の世界に連れて行けば、万事解決するんじゃないの?」
「それができないから封印しようとしたんだが。」
「はあ!?」
あまりにも想定外の言葉に瞳子は驚愕のあまり立ち上がった。
「な、なんで?」
「この世界で起きている時空嵐のせいだ。入ることはなんとかできたのだが、このままでは出ることができない。」
「そこを無理矢理、なんとかならないの!?」
「例えば、猛吹雪の雪山で遭難した人間が、緊急避難場所からそのまま出て行くようなものだ。この世界から離脱すること自体は可能だが、その後どこに辿り着くか、あるいは宇宙の狭間に落ちて永遠にさまようか分からない。そんな不確定な手段は使えない。」
「……………………。」
へなへなとテーブルに沈没する瞳子。
しばし食堂を沈黙が支配する。
「……とりあえず、ありったけの火力を叩き込んでみようぜ。」
そこに、恭也が声をあげた。
「元々その予定だったじゃねえか。やるだけやってみようぜ。もしかしたら効くかもしんねえじゃねえか。試してもいねえのにいきなり諦めてんじゃねえや。」
ぎらぎらした目つきで映像を睨みながら言う恭也を見上げ、瞳子は溜め息を吐いた。
「……そうだね。ゴメン、我ながら透に感化されてたよ。」
頭を掻いて身を起こした。
「みんな。予定は変わらない。あいつをぶっ壊すよ!」
「「おう!」」
美穂と恭也の気勢が重なった。
『アラート。』
その時、プトレマイオスが警報を発した。
『アラート。当該座標地点より反応が多数出現。計測完了。全高2メートル前後・90キログラム前後の物体が一万を越え、なおも増加中。当該群は、エクリスエクスプレスを目指して移動しています。』
「「は!?」」
たった今あげた気勢が怪訝声に変わった。
見れば、映像に映る「統制者」の根本に、蠢く影が見える。
プトレマイオスの報告によれば、人間サイズの「何か」が一万以上出てきたと言う。
「……な、なによあれ」
「「統制者」の尖兵、「ダークローチ」だよ。」
初が、恐れ混じりにきっぱりと言った。
「ふむ。あれが生命をリセットさせる手段か。」
透の呟きが、初の発言を裏付け、この現象の意味を明確にした。
人間大のモンスターが、大挙して襲いかかってきた、ということだ。
「オーナー!ありったけの火力を出してくれよ!あいつら突っ切って、「統制者」を直接叩く!」
「もちろんです。プトレマイオス、バトルステーション。」
『ラジャー。』
恭也に応えたエクリスエクスプレスのオーナーが、エクリスエクスプレスの戦闘態勢の指示を下した。
「オーナー!こっちも!」
「ああ。ダメ。」
「へ?」
秋乃の要請に、アリアライナーのオーナーはぱたぱたと手を振った。
「なんでですか!?」
「この領域でアリアライナーの武装を動かす権限がないのよ。単独航行ができないからこうして連結してるわけだし。」
「そんなあ!?」
秋乃が悲鳴をあげる。
「しょーがないよ秋乃。」
「美穂!?」
ベルトを抜き出した美穂が、眉をVの字にして立ち上がっていた。
「やれることをやろうよ。もともとあたしはこうする約束だし。」
複雑な顔を見せる親友に、美穂はいつもの笑顔を向けた。
「よし。ならばエクリスエクスプレスを借りるぞ。」
唐突に透が言って、ドアに向かい歩き始めた。
「っておい!? なにするつもりだよ!?」
「瞳子の方針に従い、その範囲で俺は俺のやれることをする。 エクリスエクスプレスの戦闘機動に優秀なオペレーターが必要だろう?エクリスが稼働できない今、俺が代わって戦闘機動をコントロールする。」
「ええ。よろしくお願いします。 恭也君。ヴァイオラ君とシーザー君も。ついて来て下さい。」
恭也の問いに応えた透に続きオーナーが言いながら歩き出した。

エクリスエクスプレスの先頭車両一号車『アリエス』のコックピットにやって来た透は、まずディレイドライバーにカードを装填してスライドカバーを閉じディレイドへと変身した。
《カメンライドゥ・ディ・ディレイド!》
迅速に纏ったボディスーツを黄色に変じ、続いてもう一枚カードをドライバーに装填する。
《アタックライドゥ・マシンディレイダー!》
このコックピットルームの中央に設置されている「運転席」、エクリスの拡張機能にしてエクリスエクスプレスのトータルコントロールデバイス、やたら豪華なバイクにしか見えないそれに歩み寄り、ディレイドはカレイドブレイドをそのバイクに振り下ろした。
「ああーー!?」
恭也の悲鳴を聞き流し剣を透過させると、そのバイクの形をした運転席は、迅速にその身をドット柄のノイズに包んで形状を変移させてゆく。
やがてそこに、代わってディレイドの高速移動手段マシンディレイダーが現れた。
さっさとそのバイクに跨ったディレイドは、さらにもう一枚カードを装填し、スライドカバーを閉じた。
《ファイナルアタックライドゥ・ディ・ディレイド!》
だが、別にここで必殺技を放つわけではない。ディレイドの持つ無限のエネルギー源「クラインの壷」を、自身を介してエクリスエクスプレスに接続させてエネルギーを供給し、武装の攻撃力の底上げを図ったのだ。
そうして剣をしまい、ディレイドはハンドルを握った。
『さて。始めるぞ。総員、戦闘機動に備えろ。何かに掴まれ』
ディレイドの宣告に、このコックピットルームに至る通路に佇む恭也とオーナー、ヴァイオラとシーザーは各々近くの突起を掴み身体を固定させた。

進路を「統制者」に向け正対させたエクリスエクスプレスは一直線に荒野を突き進んでいた。
その先には、地平線を埋め尽くす黒い波が広がっている。
それはすなわちこちらへと迫るダークローチの大群。
もうじきその先頭と接触するところで、エクリスエクスプレスの車体に変化が起きた。
一号車から次々と、車体後部の上半分がリフトアップしそれが展開変形してゆくのだ。
全十三両、三両目と四両目を除き全て形が異なっているが、共通して細長い円筒を突き出したそれらは巨大な砲頭であった。
これがエクリスエクスプレスのバトルモード。
僅かに進路を曲げ緩やかに蛇行を始めたエクリスエクスプレスの全砲門が、一斉に光線を発射した。
二十数条の光線は、黒の大群に扇状に突き刺さると広い範囲に渡る各所で甚大な爆発を引き起こした。
木っ端微塵になって消滅するダークローチたち。
だが、その塵芥の向こうからさらに黒の大群が押し寄せた。
続けて一斉射される光線。ダークローチの大群のあちこちを抉り散らしながら、エクリスエクスプレスは群の中に飛び込んでいった。
直線上の質量差はいかんともし難かったらしく、あっさりと轢き潰されて爆散してゆく無数のダークローチ。だがエクリスエクスプレスはやがて線路を空中に生成して高度を上げて大群をかわした。正面からの力任せでは、いずれ数で押し負けると判断したのだ。
だがあまり高度を上げることもできない。吹き荒れる時空嵐に煽られて脱線する危険性もあるからだ。
たたらを踏むダークローチの群。まるでボートに引き裂かれた水面の波のようにエクリスエクスプレスを追って黒の群はその外形を歪ませた。
黒の大群の頭上を、光線をあちこちにバラ撒きながら蛇行するエクリスエクスプレス。光線の一撃でかなりの数のダークローチを吹き飛ばしているが、「統制者」の足下からは今もだくだくとダークローチが溢れ出ており、大勢に変化は見られない。
やがて、黒の大群の形状に変化が出てきた。
ダークローチ達は、出てくる者と後を追って戻る者とでごった返し、踏み潰され折り重なる者も出てきたのだ。
それを繰り返し、ダークローチで構成される波は各所で高さを生み、それはやがて肥大化し、まるで太陽の表面で弧を描くプロミネンスのごとく隆起してエクリスエクスプレスに襲いかかった。
間一髪、その弧の下を潜り抜けるエクリスエクスプレス。
今もあちこちで生まれつつある黒い隆起をもぐら叩きのように片っ端から光線が叩き潰しているが、いくつか撃ち損ねたそれは素早く高さを延ばして襲いかかる。
辛うじて、その黒のプロミネンスをかわし潜り抜けてゆくエクリスエクスプレス。

『よいしょっと。』
戦闘機動中のエクリスエクスプレスに牽引されるアリアライナーの屋根に、人影が現れた。
白のボディスーツに丸い黒色の装甲を装着し、赤い瞳が光る黒のマスクの頭頂からは二本の細長い紡錘形を延ばしたその姿は、まるで白黒を反転させたバニーガールのようである。
美穂が変身した姿、「仮面ライダー アーリア・ソロフォーム」である。
『んん~。ちゃっちゃかやりますか。』
蛇行運転に揺れるアリアライナーの屋根の上で、片膝立ちで身を安定させたソロフォームは、アリアガッシャーを組み立てながら呟いた。
『ちょっと美穂!? あんた大丈夫なの!?』
意識の内から心配するレイラの声が聞こえてくる。
『大丈夫だよ~。って言うか、この状況って飛び道具持ってるあたしの独壇場だし。』
一直線に繋いだ五基のパーツの両端をそれぞれ内側に曲げ、やがて完成した『アリアガッシャー・ボウモード』を構えて応える。
その時、斜め後方を向いたエクリスエクスプレスの砲頭が光線を発射した。
『おおう!?』
巨大な光条にびっくりして身をすくめるが、プトレマイオスも、自身の状態を把握した上で射線を選定している。
『大丈夫だいじょうぶ。』
むしろ自身に呟きながらソロフォームは、ボウモードの両端を繋ぐオーラの弦をつまみ、矢がないにも関わらずまるで矢を番えるように引き絞ると、一方を狙って弦を解き放った。
すると同時に出現して射出されてゆく光条。それは列車の下で蠢く無数のダークローチのどれかにヒットした。
『……焼け石に涙?』
『なに?どうしたの美穂?』
『なんでもないよっ?悲しくなんかないっ!』
呟きを聞いたレイラに慌てて言い返し、美穂は気を取り直した。
『できることを、あきらめないんだっ!』
大声で言いきり、ソロフォームは再び見えざる矢をオーラの弦につがえた。
<i3778|538>
『なーに!あとたったの一万うん千匹!』
言って、次々と光の矢を放ってゆく。
もう特に狙わなくても矢はダークローチのどれかに当たっている。
『えっ!?  美穂!逃げて!』
『へ?』
そのレイラの叫びはあまりにも突然で。
だからそこに襲いかかった激震に、対応する意識が一瞬遅れた。

激しく振動するアリアライナーの食堂車内では瞳子は初を抱きかかえながら、秋乃が、レイラがシートにテーブルにそれぞれしがみ付いていた。
オーナーはこの揺れの中でもいつもの姿勢を崩さない。
『アラート。十秒後にアリアライナー八号車は大破します。』
『えっ!?』
突然告げられたプトレマイオスの警告に、レイラが素っ頓狂な声をあげた。
「やってくれるわね! 「時の列車」の未来予測を越えて干渉してくるなんて!」
『って言ってる間にっ!?』
毒づくオーナーに続き、テーブルにしがみ付くレイラが悲鳴をあげた。
『美穂!逃げて!』
「全員!衝撃に備えろ!」
絶叫と同時、食堂を最大の衝撃が襲った。
「『あああああああああっ!?」』
あまりの衝撃にレイラが辺りを転げ回り、瞳子も秋乃も額をテーブルにぶつけた。
初は必死に瞳子にしがみ付いている。
『インフォメーション。アリアライナー八号車は大破しました。』
「いちいち言わなくてもいいっ!?」
オーナーが、珍しく怒声をあげる。
「竹中っ!全員を連れて「前」へ行けっ!」
「オーナー!? どうするんです!?」
テーブルにしがみ付いたままの秋乃が問いかける。
「いいから、装甲の厚い「前」に避難しなさい!せめて一矢報いてやる!」
髪を掻き上げ、オーナーは犬歯を剥き出して気勢をあげた。
「瞳子様。初様。どうぞ、こちらへ。」
「……ありがと」
「ちょっと、レイラ!? 立って!?」
なぜか泡を喰った様子のレイラを駆け寄った秋乃が助け起こす。
『ああ……美穂が、みほがっ!?』
意識の接続を失ったことに混乱するレイラを、秋乃は無理矢理立ち上がらせた。
「大丈夫だから!美穂は大丈夫だから!立って!」
揺れる車内で全員をドアの向こうに誘導したオーナーは、無人の食堂を見回してから身を翻して叫んだ。
「ディレイド!大破したこっちの八号車を切り離せ!奴らにお見舞いしてやるんだ!」
『わかった。』
アリアライナーのオーナーの通信を受け、ディレイドは思考トリガーでそれを操作した。
長大な二十一両編成の車体では、無数に生まれつつある黒のプロミネンスの乱舞をかわしきれなくなってきている。
今の攻撃も、潜り抜けきれなかったプロミネンスが最後部車両を直撃したものだ。
『アラート。十秒後に十二号車「ピスケス」は中破します。』
ディレイドの高速思考演算でも進路の選択に綻びが発生し始めている。
やがて車体を第二の激震が襲った。
『インフォメーション。十二号車「ピスケス」が中破しました。F・Eキャノン「エリダヌス」、使用不可。』
淡々と報告するプトレマイオス。
ダークローチの大群にかすられた十二号車から砲頭が吹き飛ばされたのだ。
もはや一面黒の荒波と化したダークローチの大群の上を疾走するエクリスエクスプレスは、大きくカーブを描くとその円弧の頂点でスクラップと化したアリアライナーの最後部車両の連結を切り離した。
遠心力を受け、切り離された最後部車両は脱線して線路から飛び出し、その身を激しく回転させダークローチの海に飛び込んでいった。
大量のダークローチを巻き込んで爆発する最後部車両。
「よぉしっ!」
その様子を窓から見たアリアライナーのオーナーが喝采をあげた。

だが、それでも途絶えることのない黒の濁流の中をエクリスエクスプレスは光条を撒き散らしながら駆け抜けてゆく。
隆起した黒の津波に阻まれ進路変更を余儀なくされたエクリスエクスプレスの、「統制者」へ至る道のりは、まだ遠い。

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