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鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.36 電王の世界

秋乃は、初が解放されてからずっと「ある事」を考えていた。
初自身はとても良い娘だし、彼女に悪意を疑う要素が何一つないことは分かっている。
ただ、ひとつ解せないことがあった。
透は言った。「ジョーカーの本性を顕せば、こんな拘束など簡単に引きちぎる」と。
では初は『なぜそうしなかったのか』?
初自身のパーソナリティが非常に穏やかで無垢で繊細なのは分かる。もし初がただの人間の少女だったなら、訳も分からず捕らえられてあんな拘束をされ監禁されれば怯えもするだろう。
だが、彼女は『いつでも脱走が可能だったのに、それをしなかった』。
なぜ?
最初に紹介された時に居合わせた中で、彼女に危害を加えることが実質的に可能だったのは、ジョーカーを封印できるというカードを持つ透のみだった。
にも関わらず、透の存在を知る以前から、初は部屋に入ってきた全員を警戒していた。
先ほどのささやかな茶会でずいぶんと馴染んでもらえたし、恭也に対してはあからさまな好意も抱いている。
つまり初が茶会を境にその警戒を解くに値すると判断したからこそ。
(もしかしたら、「自分がジョーカーだ」っていうのとは別に、何か抱えているのかも。)
彼女に悪意など疑いようもない。
ただ、その抱えている問題を、お別れの前に解消してあげられたら。
そう、秋乃は思っていた。


ぎゃぎゃぎゃと線路に火花を盛大に咲かせてエクリスエクスプレスは自ら生成した急カーブを疾走してゆく。
ダークローチの大群が寄り集まった黒い荒波による体当たり攻撃は激しさを増し、エクリスエクスプレスと続くアリアライナーはあちこちが傷だらけになっていた。
アリアライナーの食堂にいた面子は一号車の乗務スペースに移り、それぞれ一人用のシートに腰掛け身体を×字に固定するハーネスを装着していた。
乗ったことはないが、F1レーシングカーに乗せられたらきっとこんな感じであろうという激震に瞳子も秋乃もくらくらしていた。
そんな中、オーナーと竹中は普通の顔で前を見つめ、初はなにやら真剣な面持ちで唇を引き結んでいた。
「……初。大丈夫だから。」
激しい振動の中、横を向いて秋乃がそう声をかける。
「……はい。」
初は素直にうなずくが、どうも恐怖や心配とは違った表情だった。
むしろ、比較的前向きなニュアンスで、瞳には力がこもってすらいた。
(なぜ……?)
ふと、先ほどの思考の続きを思う。
だが未だ答えは出ない。
その時、また車体を激しい衝撃が襲った。
「ああもう!? 透はなにやってんの!? あああせめて分離できれば……」
つい毒づいてしまう。
「……そっか。」
その時、瞳子が自分の呟きになにか閃いたらしい。
「透!アリアライナーを分離して走れない!? あんた、分身できたでしょ!?」
『なるほどな。それは想像だにしなかった。』
透が瞬時にその意図を汲み、通信越しに感嘆した。
「ちょっと瞳子?アリアライナーは単独で走る権限がないって」
「よく分かんないけど、透がエクリスエクスプレスを運転できるなら、アリアライナーも同じなんじゃないの?」
「……ああ。」
そこに、オーナーの感心したような声があがった。
「瞳子ちゃん、頭いいわねえ!」
『アリアライナーを借りるぞ。』
そこへ、静粛に開かれた後方の自動ドアからディレイドが現れた。『アタックライド・イリュージョン』の効果で出現した分身だ。
エクリスエクスプレスと、連結するアリアライナーは、それぞれのドアを空間を歪曲させて接続させている為、こうして徒歩で車両間の移動が可能となっている。
ディレイドはすたすたと一同のシートの間の通路を通過すると、その先のドアの向こう、コントロールルームに入っていった。そこにはアーリアの専用バイクにしてアリアライナーのトータルコントローラーであるマシンアリアードが設置されており、ディレイドはさっさとそれに跨った。
だが、そこでディレイドの動きが止まる。
「……どうしたの透!?」
『このままでは連結を解除できない。』
ディレイドの後ろ姿が、とんでもない事態を告げてきた。
『エクリスエクスプレスとアリアライナーを繋ぐ連結器に、美穂が引っかかっている。』
「『えええええええ!?」』
一同の悲鳴が重なった。
先ほど、単独で屋根に登っていったアーリア・ソロフォームが、あの最後部車両を襲った攻撃の衝撃でそこに転落していたのだ。
『誰か回収してこい。このままでは連結を解除できないし、危険だ。』
「……って、言われても……」
透は運転中、美穂は危険な場所で気を失っている。車外は無数のダークローチが乱舞するという危険地帯、他に変身できる者がいない。
この乱戦の最中、生身で救出活動など自殺行為にも等しいだろう。
『あたしが行って、憑依してくる!そうすれば動けるようになるから!』
「待ってレイラ!」
ハーネスを解きにかかったレイラを瞳子が窘めた。
「ちょっとちゃんと方法を考えないと、例えあんたでも一人じゃ危ないよ!?」
『でも、こうやってるうちに美穂が落っこちちゃうよ!?』
レイラは今にも飛び出す構えだ。
その時、何かどこかで気配が動いた気がした。
初のいる所からだ。
なんとなく初を注目した一同の見つめる前で、うつむいていた初が、やおら がばっと顔を上げた。
『あはっ! あはははははっ♪』
初は、さっき見せていた笑顔とは明らかに違う顔を見せていた。
なんと言うか、底の抜けたハイテンションな爆笑。
その初は、髪の中にいつの間にか一房だけピンクのメッシュを付け足しており、その瞳は鮮やかなピンクに彩られていたのだ。
そしてその声質も微妙に異なる。
これは。この現象は。
「……イマジン!? 初の中にいたの!?」
秋乃が絶叫する。
『あはははは♪ちょっと待っててねお姉ちゃんたち!アタシ、ちょっと必要なものがあるの!』
口を大きく開けてはきはきとしゃべるその語り口は、明らかに初のものではない。
『キョーヤ!キョーヤ!ベルトこっち持ってきて!』
『はあ!? 分かった!すぐ行く!』
車内通信で恭也が応え、やがてこの車両の後ろの自動ドアから恭也が現れた。
「って、どうすんだこれ」
『あいがとっ! ワケは瞳子お姉ちゃんに聞いて?』
恭也から複雑な機械の塊のようなバックルのエクリスベルトを受け取ると、瞳をピンクに輝かせた初は通路の中央に立ち、その身体から同じ大きさの人影を吐き出した。
飛び出したそこに新たに現れたのは、全身ピンクの衣装を纏った令嬢に見えた。
だが、腕脚は節くれ立ち、頭に載せた つばのやたら広いフリルつきの帽子は顎まで深く被せられている。否、そういう形状の「頭部」なのだ。
そしてピンクのエプロンドレスのような表皮を持つそのイマジンは、一同を振り返ってピンクのパラソルを片手に、ちょこんと膝を曲げて会釈して見せた。
『はーい♪アタシの名前はアリス! って、細かいハナシはあとあと♪手が必要でしょ?さあ初、変身しちゃって♪』
「うん」
そのアリスと名乗ったイマジンに応え、きょとんとする一同の前で髪と瞳の色を元に戻した初は、もたもたとエクリスベルトを腰に巻き付けると、ベルトバックルの左端に飛び出しているレバーを押し込んだ。
するとバックル右側面のパネルがフラップドアのようにカシッと跳ね上がり、チェンバロによるアメリカのカントリー風味の音色が流れ出した。
「……変身。」
言って、初がパスをバックルのフラップパネルの下のスリットに押し込むと、がしゃん、とパスがバックル内部を通過し、バックル中央のクロスディスクが時計回りに九十度回転し、左端に突き出たパス表面の「3」のような文様とクロスディスクの文様を併せて銀色の「B」を描き出した。
《バロウズ・フォーム。》
ベルトが認証を告げた途端、初の身に殺到した光の粒子は黒の平坦なボディスーツとなり、そこで両腕を胸元で交差させた初を、どこからか伸びてきた光のレールがまるで先ほどの拘束具のように縛り付けてゆく。その状態で、初の周囲に金属パーツが次々と出現し、初の身体に張り付いてゆく。
そのパーツの量は膨大で、通常の「時の守り人」の装甲のパーツ数を遙かに上回る。
それは主に上半身を、自ら拘束した腕の上から巨大な胸郭として装着された。タキシードを意匠化したような両襟のプレートの間に蝶ネクタイ型のパーツが花開くように現れた。
背中にもより大量の部品が集中し、装甲とは無関係な巨大な円形のユニットを構築してゆく。
そして足には膝下で大きく膨らんだ部位を持つブーツが装着された。
やがて頭頂のレールを辿ってきたパーツが顔面の位置で迅速に展開変形し、バイザーのようになって目の位置に張り付き、続けて現れたパーツが、腕ほどにも長い靴べらのような「うさぎ耳」を形成して頭頂に二基、設置された。
背中には巨大な懐中時計のような無数の歯車が複雑に絡み合う機械をまるで雷神の雷太鼓のように据えつけ、腕のない銀色のバニーガールとなったこれが初が変身した姿、「仮面ライダー エクリス バロウズフォーム」。
バロウズフォームは、体中に設置された十二基ものエクリスガッシャーの部品を、手も触れずに分離し浮遊させると、次々と空中で部品を合体させ、中程で折れまがり先端を細かく分解して展開したそれらは、左右六基ずつで構成された一対の「機械腕」を形成した。
中程に肘関節を持ち、先端を変形させて精密な五指を構成した、腕に。
《エクリスガッシャー・アームモード。》
そのアームモードを、本来腕がある位置に浮遊させて己の腕と成し、初が変身したバロウズフォームは、アリスとレイラをそれぞれ見遣った。
『……じゃあ、お願い。手伝って。一緒に美穂お姉ちゃんを助けよう!』
『……う、うん。』
『らーじゃっ♪』
レイラは戸惑いながら、アリスはテンション高く返事をし、唖然とする他の一同を置き去りにして後部の自動ドアを出ていった。
「……知ってたの? 初にイマジンが憑いてること。」
秋乃が眇に恭也を見つめ訊ねる。
「ああ。最初に捕まった時、俺にだけ話してくれた。「アリスを消させたくないから、他の「時の守り人」には黙っててくれ」って。「見つかったら消されちゃうから、怖がってる」ってさ。」
恭也は、空いたシートに腰を下ろしながら言った。
「あいつ、自分があんな重大な運命を背負わされてんのに、自分に取り憑いたイマジンのこと心配してんだぜ? たいした奴だよ。」
「……そう。」
秋乃が呟いた。
「あのアリスっていうのも、悪い奴じゃなさそうね。」
「まあ、な。最初は過去に跳ぶつもりで取り憑いたらしいが、初に「過去がない」ってのと、「特異点体質」に良く似た体質だってことで脱出できなくて泡喰ってたそうだ。」
「ふうん。」
くつくつと笑う恭也と、気の抜けた溜め息を漏らす秋乃。
「って、じゃあ初が「時の守り人」のベルトを使えたのって!?」
「そういうこった。体質が似てるってだけで今のはぶっつけ本番だったんだけどな。俺が変身できないから、万が一の時にはベルト貸して手伝わせてくれって言われてたんだ。……できるなら、やらせたくはなかったけどよ。」
「……ホント。たいした娘だわ。戦うつもりでいたなんて。」
呆れたような、感心したような声を漏らしたその時、がくんと車体が揺れた。
「っと。和んでる場合じゃなかったな」

アリアライナーの先頭車両一号車の屋根に、初が変身したエクリス・バロウズフォームとアリス、レイラがやって来た。
無数のダークローチが飛び交う中を這っての移動でやり過ごし、アリアライナー一号車の舳先を見下ろす位置に辿り着いた。
そこから先のフロントノーズは、流水のようになだらかなカーブを描くデザインになっており、迂闊に降りればそのまま滑り落ちる危険がある。
特に今はダークローチの群の体当たりをかわすため乱数機動で激しく蛇行している。この平らな屋根の上でも、何か突起に掴まっていないと振り落とされてしまいそうだ。
『少し待て。十秒間直進できる隙を探す。』
外部スピーカーから透が指示を発する。
『俺が合図してから十秒、その間に助け出せ。』
少しでも揺れの少ない状況を作り出すと言う。
レイラも焦る心を押さえつけ、じっとその時を待った。
何しろ、すぐそこに連結器に引っかかっている美穂の姿が見えているのだ。カーブを曲がる度に腕を力無く揺らす姿が。
レイラとしても、これほど心を乱す出来事は滅多になかった。どれほどの強敵を前にするよりも遙かに恐ろしい。
『捉えた。五秒前。……三、二、行け!』
透のカウントと同時に行動を起こす三人。
言う通り、列車は直進し安定している。
まずはアリスが屋根の手がかりを掴んでフロントノーズ上に身を投げ出した。
そしてバロウズフォームが続いて滑り降り、アリスが伸ばしたピンクのパラソルの柄を掴み、さらに頭頂から生えたウサギ耳をパラソルに巻き付けて片腕を下方に伸ばす。
そして二人の身体を掴みながらレイラがフロントノーズを下まで滑り降り、アリアライナーの物質生成照射装置のあるフロントバンパーを足がかりに屈み込むと、連結器に引っかかっている美穂の体勢を慎重に把握してから飛び込むように憑依した。
途端にウェーブのかかったロングヘアと水色のメッシュ一筋を伸ばして水色の瞳を見開く美穂の身体。
自身の体勢とバランスを慎重に捉え、連結器や車体の突起に手足を掛けて身を起こす。
『さあ!』
『うん!』
バロウズフォームが伸ばす機械腕に向かって手を伸ばす美穂の身体。
その時突然、直下型の振動が車体を襲った。
『ひゃ!?』
一瞬、身を浮かせた三人。
掴みかけた掌を互いに見失い、慌てて体勢維持に気を遣う。
『アリス!大丈夫!?』
『なんのまだ負けないよお!』
『早くしろ。そろそろ限界だ。』
透の言葉に各々自身の中のカウントを思い出す。
あと二秒あるかないか。
『くっ!? ういちゃん!』
『はいっ!』
互いに伸ばし、掠めた手が、今、しっかりと握り合った。
『『よしっ!』』
歓喜の声が重なる。
そしてそのまま引っ張り上げた。
瞬間。
列車がいきなりカーブした。直進制限時間が終了したのだ。
『わあぁあああ!?』
途端に投げ出された美穂の身体。
掴んだ手は離さなかったが、続いてバロウズフォームも車体表面から引きはがされ飛び出してゆく。
『初!?』
いかなイマジンといえど振り子のように吹き飛んだ二人分の重量をすぐに支えきれるものではない。特にイマジンとしても矮躯のアリスの小さな手から、ピンクのパラソルが重力の暴虐にもぎ取られた。
『ああっ!?』
絶望的な悲鳴をあげるアリス。
その傍らを、列車を狙って降ってきたダークローチの濁流が落下していった。
『ういーーーっ!?』
そこへ、何者かが飛び込んでアリスとバロウズフォームを繋ぎ止めた。
『諦めるな!希望の灯火はまだ消え去ってはいない!』
『ああもうダメ!? これで一生分の奇跡を使い果たしたわ!? 残りの一生は絶望の暗闇よ!?』
間一髪、身を投げ出したシーザーがアリスの手とバロウズフォームが握るパラソルを掴み、ヴァイオラがそのシーザーの足とアリスの腕を掴んで支えていたのだ。
『シーザー!ヴァイオラ!』
『さあ早く!自慢ではないが我が輩の根性は恭也の機嫌ほどに脆弱だぞ!』
既に列車は乱数機動を再開している。激しい揺れを逆に利用し、アリスとシーザー、ヴァイオラはバロウズフォームと美穂の身体を車体の方へと振り向けた。
バロウズフォームもその勢いを利用して美穂の身体を車体に近付けようとし、レイラも一刻も早く全員の負担を軽減させようと懸命に美穂の腕を伸ばして車体の突起を求める。
やがて美穂の手が車体の枠を掴み、今度はバロウズフォームの身体を引き寄せた。
『ういちゃん!? 大丈夫!?』
『ありがと!良かった!』
『よし!撤収だ!』
シーザーが叫び、バロウズフォームと美穂の身体はそこの一号車のドアから車内へ飛び込み、アリスとシーザー、ヴァイオラは慌てて屋根の上をかさかさと這い戻っていった。

直後、エクリスエクスプレスとアリアライナーを繋ぐ連結器が解放され、やがて距離を開けたアリアライナーの前方に新たな線路を敷設してアリアライナーはエクリスエクスプレスとは別方面へと駆け出していった。
車体の全長が縮まった分被弾領域が圧倒的に縮小し、両車両の動きは目に見えて軽快になった。

「美穂!? レイラ!? 初ちゃん!? ああ良かった!」
秋乃が涙目で一同を迎えた。
一号車のエントランスでくたくたになっているバロウズフォームとイマジンたち。
だが、状況は依然乱戦の渦中だ。
『アリアライナー七号車に進入者だ。排除しろ。』
車内放送を通して透の報告が入る。
『……守らなきゃ。アリス、立てるかな。』
『行けるよ!……代わろうか?』
幾分か元気の落ちた様子ではあるが立ち上がったアリスが、エクリスベルトを指して訊ねた。
『ううん。手が多いほうがいいと思うの。手伝って。』
『うん!』
『我が輩も援護しよう。』
シーザーとヴァイオラも立ち上がり二人の後に続いた。
『秋乃。美穂のことよろしく。』
「うん。」
言いながら、美穂の身体で秋乃に抱きつくレイラ。
秋乃がしっかり受け止めたことを確認してから美穂の身体から離脱したレイラは、アーリアベルトを引き抜いた。
『これ、借りてくから。』
途端に脱力した美穂を支える秋乃に断り、水色のカードを取り出して腰に巻き付けたベルトのバックルに上から挿し入れる。
流れる水を思わせる涼やかなミュージックホーンが流れ出す中、レイラはパスをバックルの前に振り抜くように翳した。
《ディーヴァ・フォーム。》
認証の音声と同時に光の粒子が殺到し、瞬時に扁平な白いボディスーツとなってレイラの身体を包み込む。
続いてベルトバックルから飛び出した水色のパーツが胸に肩に、前腕に臑にと装着され装甲を成した。
後頭部から体表のレールを辿って三つ並んだ涙滴形のパーツが顔面に移動し、扇状に展開すると薄べったく変形して顔に張り付いた。
さらに別のパーツが後頭部に取り付き、そこからフリーエネルギーによる波打つ豊かな水色の髪を生成し、マスクのセンサーを閃かせて変化は完了した。
これがレイラの力を取り込んだアーリアの第二形態「アーリア・ディーヴァフォーム」である。
『さぁて!あたしのビート、隅々まで刻み付けてやるわ!』
勢い良く声をあげ、ディーヴァフォームはアリアガッシャーを組み立てながら初たちの後を追って駆け出していった。

食堂と厨房を抜け、七号車の物資倉庫に辿り着いたところで、初たち一同はその向こうに蠢く影と対峙した。
黒い人型の異形・ダークローチたち。
最後部車両が大破した衝撃でひしゃげたドアの向こうにも、今だ蠢く影がある。
いったいどうやってかアリアライナーの最後尾に群の一部が取り付いたらしい。
『ここから先には通さないよ!わたしに優しくしてくれた、みんなの大切な場所だから!』
きっぱりと宣言し、バロウズフォームはダークローチめがけ駆け出していった。
それに続くアリスも、自らの武器であるピンクのパラソル『アリスアンブレラ』を振りかざしてダークローチに踊りかかる。
ダークローチたちは二本足で立っているものばかりではなかった。
壁を、天井を虫のようにかさかさと這い回る奴も現れ、それらは初たちの手の届かぬ所を迂回して侵入しようとする。
『させぬよ。招かれざる客らよ、立ち去れ!』
『落ちなさい!虫ケラのように落ちて死ぬのよッ!?』
ずどぎゃぎゃぎゃと後方からシーザーとヴァイオラによる二丁の銃剣銃『ヴァイオラバヨネット』のそれぞれ一組・計四丁が続けざまに火を噴き壁を、天井を這い回るダークローチたちを撃ち落としてゆく。
だが銃の数に反して一発の威力が極めて低いのが難点で、撃ち落としてなおシーザーと、特にヴァイオラは執拗に一匹に対して連射を浴びせていた。
『はぁい!あたしも混ぜて!』
シーザーとヴァイオラの間を飛び越えて、レイラが変身したアーリア・ディーヴァフォームが一直線に合体させたアリアガッシャーによる棒杖を転倒しているダークローチに一閃させた。
既に弱っていたため途端に黒の霞と化して爆ぜて消えるダークローチ。
『あんたは取りこぼした奴を足止めして!』
『承知!』
『うふふふふチクチク行くわよチクチク。』
レイラの指示に明朗かつドス黒く応えるシーザーとヴァイオラ。
その間もバロウズフォームとアリスは壊れたドアからぞくぞくと侵入してくるダークローチを迎え討ち、ディーヴァフォームもそれに並んで迎撃する。
『六号車に侵入者だ。排除しろ。』
そこに、車内放送で透がさらなる襲撃の報をもたらした。
『って、前の車両じゃん!?』
レイラが悲鳴をあげた。
『レイラお姉ちゃん、六号車に行って! アリスもちょっと下がって!』
初の指示に、各々目の前の敵を蹴倒して飛び退いた。
バロウズフォームがベルトバックルの左端に突き出たレバーを引くと、電光を迸らせたカードがせり出てくる。
《フルチャージ。》
そのカードを引き抜き、バロウズフォームは右の機械腕のスリットにそれを一閃させた。
《フルチャージアタック。『ラピッドレイド』レディ。》
そして迸る電光が左右のアームモードから全身に行き渡ると、胸の装甲が弾け飛び、露わになったアンダースーツに包まれた初自身の腕が解放された。
さらに頭頂の二本の「うさぎ耳」までも腕のように動き、左右三対、計六本の腕が使用可能になる。背に負う巨大な懐中時計のようなユニットが、内部の歯車が一斉に加速し高速回転を始めた。
力強く身構えた初は、目前のダークローチの群に飛び込んでいった。
『やあああああああああああああああ!』
初の絶叫が轟き、六本の腕が凄まじい速度と威力で振り回され、フルチャージを施された腕一本の一撃でダークローチ一体を確実に、次々と屠っていった。
これがバロウズフォームのフルチャージアタック、可動肢を増設し身体能力を増強する「ラピッドレイド」。
『あああああああああああっ!』
その勢いで、残りの群を壊れたドアから車外へと押し出した。
フルチャージアタックの効果の終了と共にバロウズフォームはまた己の身を拘束してしまう。
『……、こっちは、わたしとアリスで守るから、お姉ちゃんたちは前の方に行って!』
『わかった。 ……気を付けて。』
『うん!』
快活に返事した初を残して、レイラはシーザーとヴァイオラを伴って前方車両へ続くドアへ飛び込んだ。

『さああて!そこ汚されるとここのオーナーが超~ご立腹なんだけど!?』
砕かれた窓の先に、前方の車両へと向かおうとしていたダークローチが数体がいた。
『ゴキブリは大っ嫌いだけれどね!無視されるのはもっっと嫌いよッ!?』
アリアガッシャーの棒杖を振りかざし駆けるディーヴァフォーム。
シーザーとヴァイオラによる射撃を受けてようやく振り向いてきたダークローチらに向けて、ディーヴァフォームはガッシャーを一閃させた。
『ーーーッ!』
『りゃああああっ!』
続けざまに縦横に振るわれるガッシャーに薙ぎ払われるダークローチたち。
だがその時立て続けにガラスの破砕音が響き、左右の窓からぞくぞくとダークローチの群が飛び込んできた。
それは、距離を開けたディーヴァフォームとヴァイオラ・シーザーの間を遮り埋め尽くした。
『おのれ!?』
『イヤー!? 死んじゃうー!?』
シーザーの怨嗟とヴァイオラの悲鳴が黒い群の向こうから聞こえる。
四丁の銃の連射でも、この数を押し切るのは困難だ。
『ええい!そんなにあたしの歌が聴きたいの!?』
手前のダークローチを振り払い、ディーヴァフォームはパスをベルトバックルに翳すとそれをぽいと放り捨てた。
《フルチャージ。》
認証の音声と共に、ディーヴァフォームは一直線に繋げたガッシャーの端、グリップパーツを折り曲げて片仮名の「イ」の字にしたそれのグリップ部分を眼前に添えて構えた。
あたかもそれはマイクスタンドのようで。
『ならいいわ!遠き者は音に聴け!近くば寄って、もっと聴け!』
電光を迸らせたアリアガッシャー・マイクモードを両手で支え、大きく息を吸うように身を退け反らせたディーヴァフォームは、次の瞬間。
『~あっち行けこのゴキブリ野郎どもおおおおおお!!』
渾身のシャウトが炸裂し、レイラの音声とフリーエネルギーを取り込んで破壊音波に変換したマイクモードから凄まじい衝撃波が放たれ室内を蹂躙した。
ディーヴァフォームのフルチャージアタックはその特性上、対象は無差別で密閉空間では使用に制限があった。
発振元の自身には効かないとしても、一番遠くの部屋の端にシーザーとヴァイオラがいた。
だが、その間を埋め尽くすダークローチの群が衝撃を緩和してくれるとレイラは踏んだ。
『おおおお!?』
『うひゃー!?』
突然の轟音にびっくりしたシーザーとヴァイオラが耳をふさぐ。
その手前で、ダークローチたちが次々と黒の霞となって爆ぜて消えていった。
『ゴメン!大丈夫!?』
『問題ない!助かった!』
『今のはアレよね!? わたしに「死ね」って言ったのよね!?』
『違うから!? 悪かったから!?』
大袈裟に狼狽えるヴァイオラに駆け寄り必死で謝るディーヴァフォーム。
その背後でまた一匹、二匹とダークローチが車内に侵入してきた。
『ちっ!? ああもう!?少ないうちに片付けよう!』
『心得た!』
再び各々武器を構えたイマジンたちは、ダークローチめがけて突撃していった。

もしもこの光景を上空から見ることができたなら、黒い荒波の中を輝く列車が二本、蛇竜のごとくうねりながら走り抜ける様が見えただろう。
今だ時空嵐が猛威を振るう上空は暴風が蹂躙して時の列車の頭を押さえ、地上は無数のダークローチに埋め尽くされ、黒い海と化したその僅か上を走るしかない状況。
おかげで黒の波がわずかでも高さを増せばそれが障害物になる。破壊するか迂回するかせねばならない。
エクリスエクスプレスはそれらを多数搭載したF・Eキャノンやバルカンの光条で吹き飛ばして進み、アリアライナーはそれらをかわしながら、あるいはエクリスエクスプレスがフォローの為に放った光条で拓いた道を突き進む。
両車両と「統制者」との直線距離は近いのに、大きく迂回して進まねばならない為に今だ到達には至らない。
だが、分かり難いほどゆっくりとではあるが、ピッチの細かいネジ孔の溝を辿るように、その距離は着実に縮まりつつあった。

アリアライナーの現最後部車両七号車も、あれからさらにダークローチが侵入してきていた。
バロウズフォームとアリスは六号車へ続くドアの前に陣取り、ダークローチらを迎撃していた。
『あーもーしつこいしつこいしつっっこいっっ!? 』
『アリス!がんばって!』
とうとう癇癪を起こしたアリスを、初が必死に宥める。
だが、アリスの癇癪は意のままにならない状況に対する逃避の為ではなく、堪忍袋の緒が切れたものだったようだ。
『やっぱ初、借りるね!』
『え?』
ダークローチの勢いが一瞬空いた隙に、アリスがバロウズフォームの身体に横っ飛びに憑依すると、バロウズフォームは身動きを止め、バックルの左端に突き出ているパスを引き抜いて左端のレバーを押し込んだ。
チェンバロによるカントリー風味なメロディーが流れる中、バロウズフォームはパスを裏返しフラップパネルを解放したバックルの右端のスリットにパスを押し込んだ。
がしゃん、とバックル内部をパスが通過すると同時フラップパネルが閉じ、中央のクロスディスクが反時計回りに四十五度回転し、左端に突き出たパス表面の「7」のような模様と併せてピンクの「A」を描き出した。
《アリス・フォーム。》
ベルトの認証と共にウサギの電仮面が消失し、全身の装甲が部品単位で分割し、腕を成していたガッシャーも全て分離して宙に浮いた。
全ての部品がその配置を迅速に上下逆さに回転し、パーツの表裏を転換してピンクの面を露出する。
そして一斉に身体に張り付いていく装甲。
それは特に腰回りに集中して合体し、巨大なドーム状のスカートを形成した。
ほか、エプロンのような胸部装甲と、両肩にパフスリーブのようなアーマーを装着し、まるで元のアリスをそのままロボットにでもデザインしたかのよう。
やがて後頭部から体表のレールを辿って大きな半円形が頭頂を越えて巡ってきた。まるで巨大なモヒカンヘアーのようにも見えたが、そのパーツは中央で左右に展開し、広い円形の つばを持つ帽子となって頭部を覆い尽くした。
余剰のフリーエネルギーによるつむじ風で弧を描いて変化が完了した、これがアリスの力を取り込んだ「仮面ライダー エクリス・アリスフォーム」の姿。
『キライキライキライ!しつっこいのキライ!ゴキブリもだいだい大っキライッ!』
その場で地団太を踏むと、イマジンとしての自身の武器「アリスアンブレラ」を取り出して びっ とダークローチの群に突き付けた。
『みんな、いなくなっちゃえばいいんだあっ!』
そう叫ぶのと同時、スカートアーマーの中から十二基のエクリスガッシャーが分離状態のまま飛び出してアリスフォームの周りを旋回した。
《エクリスガッシャー・アサルトモード。》
『行ってー!』
指揮棒のごとくかざされたアリスアンブレラに導かれるように、分離状態で「アサルトモード」なる特性を発揮されたガッシャーパーツは、砲弾のように飛び次々とダークローチを打ち据えてゆく。
『おりゃおりゃおりゃおりゃあーー!』
さらに滅茶苦茶にパラソルを振り回すと、それに併せてアサルトモードのパーツたちが旋回して乱舞しダークローチに突き刺さってゆく。
小さな部品による体当たり攻撃に、ダークローチの群は完全に泡を喰っているようだった。
『キライキライだいっキライ!みんな消えちゃえーー!』
叫んだアリスフォームがバックルの左端のレバーを引くと、一枚のカードが電光を纏いせり出てくる。
《フルチャージ。》
それを引き抜くと、手元に飛来したガッシャーパーツのスリットに一閃させる。
すると、そこから迸り出た稲妻がこの部屋中を跳ね周り、乱舞するガッシャーパーツに取り付いてはまた電光を放射し、稲妻の網の目で覆い尽くしてしまう。
《フルチャージアタック。『アリスインワンダーランド』レディ。》
『どっかーーん!』
叫び、パラソルを振り上げた瞬間、室内はまるでミキサーに攪拌されたかのようにガッシャーパーツと電光が入り乱れて旋風を巻き起こし、その渦中に閉じこめられたダークローチの群を縦横に切り刻むと一匹残らず爆散・消滅させてしまった。
『あースッキリし……』
全てのダークローチを一掃し、大きく伸びをしようとしたところで、アリスフォームの身体からアリスが抜け出て床に突っ伏してしまい、アリスフォームは変身を解除して初の姿に戻ってしまった。
「アリスっ!? ねえ!? しっかりして!?」
倒れ伏すアリスを慌てて抱え上げるが、アリスは弱々しくも、片手をひらひらと振って見せた。
『……ちこっと、元気出し過ぎて、疲れちゃった……』
「……もう!? そんなに力使っちゃダメだよ!?」
初だけならば、皮肉にもジョーカーとしての本能が戦いにおける力のペース配分を整えてくれるが、アリスは精神が非常に幼い。イマジンとはいえ、闇雲に暴れては保たないだろう。アリスにはそういう力加減がまだ上手くできないのだ。
「ここで休んでて。わたしが守るから。」
言ってアリスを横たわらせ立ち上がったその時、割れた窓の外の光景が変化していることに初は気付いた。
時空嵐が、消滅していたのだ。
「……え?あれ? ……あれ、なんだろ」
そして、遠くの丘陵に現れた異常を。

「……あん?なんだありゃ。」
「どうしたの?」
アリアライナーの一号車の乗務員用シートに座って窓の外を見ていた恭也が素っ頓狂な声をあげた。
「ほら。あそこ。」
言われ、恭也の指が示す方を見遣る瞳子。
見れば、遠くの丘陵の上に、まるでグレーのオーロラのようなものが現れていたのだ。
『インフォメーション。時空震の干渉を感知しました。方位、281°。』
プトレマイオスが報告した反応は、恭也が発見した通り、ほぼ真左の方角である。
やがてそのオーロラは、まるで舞台の幕のように下がってゆくと、その中から数体の人影を吐き出したのだ。
「なんか出てきやがったぞ!?」
「透!? 左側! なんか出てきた!」
『確認している!あれは……』
ディレイドの背中が応えるより先に突如起こったその現象に、恭也と瞳子は愕然とした。
それは同じ光景を目撃した、六号車にいるレイラとヴァイオラ・シーザーと七号車の初とアリスも同様だった。
あれほど絶望的な数で荒野を黒い海と埋め尽くしていたダークローチの群が、潮が引くよりも遙かに速くどこかに吸い込まれるように片端から消えていったのだ。
その消滅は実に迅速。この時間の激戦はなんだったのかと思うくらいあっさりとした幕引きだった。
それと同時か、いつの間にかあれほど虹色の空に荒れ狂い渦巻いていた時空嵐も消滅していた。
「……なん、なの? これ……」
瞳子が呆然と呟いた。

自身の持つ「ワールドスライド」の能力でこの世界に現れた放埓な赤毛に赤のビジネススーツ、そしてその上から安全ピンを大量に刺した白衣を羽織った女、震(フルル)は眼下の光景に一瞬だけ見えた膨大な数の異形の群に仰天していた。
見間違いかと疑うくらい迅速に掻き消えてしまったが。
「……なんだ今の? ……まあいい。この世界もディレイドに壊されちまった!せめてこの世界の無念もあたしの怒りに加えてやるよ! ディレイド!」
震は片手を振りかざし、荒野を走る「時の列車」に向かって絶叫した。
あの二種の「時の列車」のどちらかにディレイドが乗っているであろうことは分かっている。
その二本の列車がいま、なぜかひと繋ぎに連結して進路を変えた。
「ディレイド!今度こそお前の最期だ!絶対死なないこいつらがお前の息の根をとめる……」
そこまで弁舌をぶったところで、こちらを向いた荘厳な意匠の「時の列車」のフロントノーズが異様に速く その姿を拡大させていることに震は気付いた。
有り体に言えば、「時の列車」が直撃コースでこちらへとまっしぐらに迫ってきたのだ。
「ぃええぇえぇええええ!?」
慌てて横っ飛びに列車をかわす震。異世界から連れてきたモンスターたちも、各々飛び退いてかわしており無事なようだったが。
それらのすぐ脇を、巨大な質量の濁流が暴風のように疾走してゆく。
「なっ!? なにっ!? あぶ!? あぶ!?」
尻餅をついて口をぱくぱくさせる震。
列車に轢かれかける経験などそうあるものではない。
走り去った列車は数百メートル先で旋回すると、こちらへと半分ほど近づいたところで停車した。
『……ふむ。やはりサイズ差が大きいとなかなか当たるものではないな。列車では小回りが利かない。』
「……いや、今のはあんまりだと思うんだけど……」
その遠くに停車した「時の列車」から黄色い異形・ディレイドが降り立ったのが目に入った震は慌てて立ち上がった。
「お、お前!? 今の当てる気だったのか!?」
『言ったはずだ。俺の使命を邪魔するものは、すべからく排除する。』
しれっと告げた「悪魔の影法師」の言い種に、震の怒りはあっさりと沸点を越えた。
「世界の破壊には手段は選ばないってかい!? 卑怯だとかどうとかそんなのは軽く突破してるのは分かってたけど、なおさら惨たらしく潰したくなったよ!」
地団太を踏んだ震は、周りに立つ自分が連れてきた数体のモンスターたち指し示して宣告した。
「見ろ!こいつらは不死生物「アンデッド」だ!いくら倒しても起きあがるこいつらにかかれば、貴様とていずれ消耗して滅びるほかないだろう!」
『なるほど。だから「統制者」は生命のリセットを解除したのか。』
「助かったってことか?」
『だがあそこにいるのは、先ほどのダークローチと大差ない連中だ。倒さねばならんが、初を守るなら、この場合やり方に制限がある。』
ディレイドは、震の言うことをそっちのけでなにやら列車のドアの中の者と会話をしているようだった。
「……おのれ「悪魔の影法師」!余裕をぶっこいていられるのも今の内だよ!なんせあたしには「奥の手」がある」
横の列車のドアの中を向いているディレイドに向かって指をさした震は、己を掻き抱くように身をすくめた。
「鳴滝のボンクラの実験も、たまにゃあ役に立つもんだねえ!? そら!行くがいい!」
叫び、両腕を広げた震の身体から大量の砂が吐き出され、それは一塊に寄り集まるとまるで悪魔のような人型を成し、モンスターの中でも一際大きな体躯をもつ三つ首のモンスターに滑るように飛び付くと、溶けるようにその身体にまとわりつき、そいつの背中から上半身を生やして覗き込むように呟いた。
『……貴様の望みを言え。』
震が解き放ったデスイマジンの問いかけに、その三つ首のモンスター・ケルベロスアンデッドはぐるぐると唸りながら応えた。
『勝利を。全てを塵芥に帰し完全なる俺一人の勝利を!』
『よかろう。貴様の望み、聞いた。』
契約を取り付けたデスイマジンはケルベロスアンデッドの体内に溶け込むと、やがて三つ首の異形が体色を白っぽく変化させ、三つの頭から大きな角を生やし、全身の筋肉に当たる組織を膨張させ、爪を伸ばし、あちこちから鎌のような突起を生やした。
『ーーーーーッ!』
溢れる力に身を震わせ禍々しい咆哮を轟かせるケルベロスアンデッド。
『……イマジンとアンデッドの、デュアルビーイングか。』
訳の分からないことを言うディレイドに、震は誇らしげに宣告した。
「さあ!あたしらの知恵と、合体した世界物理に勝てるものならやってみろ、ディレイド! 行け!お前たち!」
震の命令に、一斉に動き出す数体のアンデッドたち。
ところが、デスイマジンが取り憑いたケルベロスアンデッドだけが、なぜか明後日の方角へとすたこらと走り去っていってしまったのだ。
「……へ? あ!? コラーーー!?」
ケルベロスアンデッドの背中に震の絶叫が聞こえた様子は、ない。

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