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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.41 ブレイドの世界

「……とおるっ!? とおる……うぅっ……」
瓦礫の野となった『ぼ~だれす』駐車場の拓けた場所で泣き崩れている瞳子。
そこから離れた場所で恭也と一真らも立ち尽くしていた。
「……なあ。とりあえず場所変えようぜ」
「……ああ。」
変身を解除して辺りを見回した恭也の提案に同じく変身を解除した一真が応えた。
「瞳子お姉ちゃん……」
初が、唯一遺された黄色の大剣カレイドブレイドを重たげに抱えて瞳子の元へとやって来た。
「あ……」
涙でぐちゃぐちゃになった顔をあげ、瞳子は初からカレイドブレイドを受け取った。
だが思いもかけない重量に瞳子の両腕が地面に押しつけられた。
「っっ!?」
それは本来は仮面ライダーの腕力で振るわれることを想定された剣だけあってとても重く、二十キログラムは越えているのではないだろうか、それを重たげに運んできた初の正体がジョーカーであったことを今さらながら思い出させられた。
そこに、遠くからサイレンの音が響いてくる。さすがに誰かが通報したのだろう。消防か、警察か。
「よう、とりあえずエクリスエクスプレスに乗っちまえよ。しばらく身を隠したほうがいい。」
「ちょっと待て。睦月、店長に伝えておいてくれ。あとのことは「BOARD」で引き受けるって。」
「分かりました。」
恭也に促され、一真は睦月に指示しながらそこに再び停車した巨大な列車へと歩いてゆく。
菱形も、ケータイを耳にあてた睦月も二人に続いた。
「……瞳子お姉ちゃん……」
「……」
歩み去ってゆく恭也らを見遣り、初が瞳子を控え目に促すが、剣の重量に身を屈めた瞳子からは返事がない。
「……? お姉ちゃん?」
初が瞳子の顔を覗き込むが、その表情は髪に隠れ伺えない。
「初!どうした!?」
「恭也お兄ちゃん!? 瞳子お姉ちゃんが……」
恭也の呼びかけに初が返事をしようとしたその時。
突如、初を無視して立ち上がった瞳子が事も無げにカレイドブレイドを握り締めすたすたと歩き出した。
「え……!?」
「……は?……」
胸を反らして堂々と直立し、大股でのしのしと歩く、どこかで見た覚えのある挙動でエクリスエクスプレスに向かう瞳子の姿に、恭也と初は言葉を失った。
それとも透を失ったことでどこかおかしくなってしまったのかとすら恭也は疑った。
「『全員。エクリスエクスプレスに乗れ。説明はその後だ。」』
「はぁ!?」
恭也の脇を通過しながら、その瞳子は二重にぶれた奇妙な声音で告げた。
「『早くしたほうがいい。異世界の脅威も投入されてしまったしな。」』
黄色に輝かせた瞳で見返してくる瞳子。
その声は、瞳子自身の声と、あろうことかもう一つ、透の声が被せられていたのだ。
「えぇえええええええ!?」

時の列車『エクリスエクスプレス』十号車にある休憩室。
他の「時の列車」と違い旅客車両ではないエクリスエクスプレスには、それほど洒落た憩いの施設というものが存在しない。
病院のロビーに毛が生えた程度のソファとテーブルの並んだ部屋に、一同はやって来た。
「…………。」
一真は、黒い艶やかなプレートがはめ込まれた多角形の枠という変わった壁の装飾を覗き込んでいた。
よもやそれが、外界を見せないようにとシェード機能によって塗りつぶされた、実は窓だということなど一真には知る由もない。
「へぇ~。「未来の列車」ねえ。」
言って室内を見回した一真は、今度は部屋の奥に目を遣った。
「……で。お前等はいったい何をやってるんだ!?」
「おい剣立。大変だぞ。このアンデッド、封印できない。」
「このッ!? このッ!? このッ!? このッ!? 」
部屋の端のソファに腰掛けていたピンク色の二体の異形を挟んで、菱形と睦月が無数のプロパーブランクを一枚ずつぺちんぺちんとメンコ遊びのようにその異形に叩き付けていたのだ。
『痛い!? 痛いわ!? なによ「アンデッド」なんて死なないような高尚なもんじゃないわ!? 自慢じゃないけどわたし、殺したら死ぬわよ!?』
『ふむ。歓待の紙吹雪とはもっと細かくて上から舞い落ちるようなものだと思っていたが……』
「……で。お前、本当に透なのか?」
それらの騒動を後目に、離れたテーブルで恭也は瞳を黄色に輝かせる瞳子に問いかけた。
「『うむ。」』
その瞳子は腕組みし、どこか見覚えのある動作で鷹揚にうなずいた。
「『正確には、ここでしゃべっている俺は、出会ってからこれまでの活動中に瞳子の中にサポート用のプログラムを色々と仕込んだついでに埋め込んだディレイドのバックアップなのだがな。」』
自身を親指で示しながら宣う瞳子。
「『それが、カレイドブレイドの引き渡しをキーとして覚醒するよう設定していた成果だ。」』
だからあの時、瞳子はカレイドブレイドを受け取るなり豹変したということか。
「……それじゃあよ。お前は……あのディレイドは、死んだ……って、ことなのか?」
「『うむ。」』
瞳子の姿をした者相手に遠慮がちに言葉を選んだ恭也の問いを、その瞳子・・ディレイドのバックアップはあっさりと肯定してきた。
「『あのディレイドの活動体は完全に破壊された。現在修復中だ。」』
「直んのかよ!?」
「『時間はかかるがな。その為のこのバックアップだ。だが、それを待ってはいられまい。この世界に異世界の脅威が侵入してしまった。」』
自身の胸をとんとんと突付きつつディレイドのバックアップが言うが、恭也もそれを抑えて言い募った。
「いや、確かに世界も大変だけどよ。お前だって大変だろ。ってか、こっちの気持ちの整理にも気を遣えよ。」
掌を振って言葉を続ける。
「じゃあ、お前は生き返るんだな? いやほら、瞳子がすっげえ取り乱してたのを、お前だって分かってるだろ!?」
「『活動体は完全に復元されるし、記録情報もこのバックアップから完全に復元される。それはもう「生き返る」と表現して差し支えあるまい。瞳子は心配し過ぎだ。」』
「いや、お前ひとりの尺度で割り切んなよ。」
恭也は頭を抱えてソファに沈没した。
どうやら「仲間の死」という最悪の憂き目は、形式はどうあれ免れたと見て良いらしい。
「……んで、その瞳子は今どういう状態なんだ?イマジンの憑依みたいに瞳子の意識はあんのか?それとも寝てんのか?」
「『ああ。意識はあるぞ。今も内部情報領域で罵倒を繰り返している。」』
「つらっと聞き流すなよちゃんと聞いてやれ。あとでイヤってほど殴られんぞ。」
「『問題ない。」』
鷹揚にうなずくディレイドのバックアップに、呆れたように返事を返す恭也。
「……じゃあ、悪いけど、あの「オルフェノク」とやらの対処法を聞かせてくれよ。」
「『うむ。」』
そこに挟んできた一真の問いかけに、瞳子の姿をしたバックアップは鷹揚にうなずいた。

「『あの「オルフェノク」とは異世界の住人で、人類の進化形として顕れた突然変異種だ。」』
改めてそれぞれテーブルについた一同の前に立った瞳子……の姿をしたディレイドのバックアップが説明を始めた。
「『戦闘生物として人間を遙かに上回る能力を持ったオルフェノクは、元は人間でありながら、その高い能力に溺れ、自らを驕り、その精神を、人類を脅かす脅威へと変質させてしまっている。」』
「怪物になっちまった人間、か……」
「『うむ。」』
恭也の呟きにうなずく瞳子。
「『その能力は今言った通り高く、皮膚も強靱だが、そもそも完全に滅ぼすには専用の属性攻撃が必要だ。」』
「それなんだけどさ。さっき、恭也がこの列車のビーム砲で吹き飛ばしてたよな?」
一真の言う通り、F・Eキャノンに巻き込まれたオルフェノクが消滅するのを、一真も恭也も見ている。
「『うむ。専用攻撃以外が完全に無効というわけではない。」』
「アンデッドも、俺たちの持つライダーシステムだけじゃなく、例えば低いランクのアンデッドは120ミリ滑腔砲一発でグロッキー状態に追い込めることが分かってる。」
「……なに?ひゃくにじゅうみりかっこーほう?」
「ぶっちゃけ、戦車の主砲だ。」
ぶっ。
恭也が吹き出し、初が顔を恐怖に歪めて恭也にすがりついた。
「一回「BOARD」で実験したことがあるんだよ。ライダーシステム以外で有効打はないのかって。でも、効果はあっても実用はされなかった。……なんでか分かるか?」
一真は、ディレイドのバックアップではなく恭也に向かって言った。
「……なんでだよ。」
「展開能力が著しく低いこと。簡単に言えば、アンデッド出現を感知して、戦車が現場に着くまでどれくらい時間がかかるか、ってことだ。ちと残念な遅さだった。」
「あ。」
一真の説明に恭也の目からうろこが落ちた。
「それともうひとつ。実験の時はアンデッドを柱に括って撃ったけど、実際にはアンデッドはじっとしていない。砲弾を外したら周りに被害が広がるし、当てても被害が広がる。」
「なんでだよ」
「命中した砲弾ごとアンデッドが吹っ飛んで民家とか建物に突っ込む可能性もあるからさ。」
「…………。」
「だから、この列車のビーム砲を使ってそのオルフェノクとやらを殲滅すんのは、ナシだぜ?」
そこまで言い切って一真はいたずらっぽく片目を閉じて見せた。
確かに、先ほどの戦闘では駐車場を壊滅状態にしてしまった。
人間社会に紛れ込む害悪を、街中で大砲で退治することは不可能だということだ。
「まあ、あのディシェッドとか言うやつは危険だったし、世界の危機でもあったから今回は責任は問わないしこっちで片付けるけどな。……もうやんないでくれよ」
「悪かった悪かったよ!?」
なにやら黒い笑顔で念を押す一真に恭也は掌を振って謝り倒した。
「剣立も大変だな。」
「やっぱトップは責任が重いですよね。ボクはナンバー2でいいや。」
後ろで無責任なことを宣う二人を怒りを押し殺して無視し、一真は瞳子に向き直った。
「という訳で、そういう制限で作戦の立案を頼む。」
「『いいだろう。」』
瞳子の顔でディレイドのバックアップはうなずいた。
「『先ほどは時間がなかったので説明しなかったが、オルフェノクには専用の属性攻撃の他にも効果のある攻撃があと二つある。」』
「あんのか!?」
「『うむ。恭也らの世界の仮面ライダーが持つ属性「フリーエネルギー」だ。」』
色めき立った恭也に、ディレイドのバックアップがあっさりと告げた。
「『オルフェノクの生態及び能力に対し、フリーエネルギーの確率干渉は全くの無関係という訳でもない。だが、攻撃方法に制約がある。」』
「制約?どんなだ?」
「『一撃で一定値以上のダメージを加える必要がある。簡単に言えば、通常攻撃ではいくら当てても効果はないが、フルチャージアタックならば当てれば一撃でオルフェノクの防御を突破できるだろうと言うことだ。」』
「……ほう。」
「『だから、俺がオルフェノクの世界の仮面ライダーを連れてくるまでは、例えばお前たち全員で連携して最終的にエクリスのフルチャージアタックを命中に導く陣形を構築することだ。」』
「なるほどな。分かった。」
「もう一つは?」
恭也がうなずくのに続いて一真が問いかけた。
「『うむ。もうひとつは、手持ち武器を使用するタイプのオルフェノクからその武器を奪い、それで攻撃することだ。奴ら自身同士の攻撃は普通に通用する。ただし、その状態だとライダーシステムの大技が使えないだろうから地道に殴り続けるしかないがな。」』
「ふーむ。」
それを聞いて一真は顎に手を遣り考え込んだ。
その脇で恭也が身を乗り出した。
「じゃあ、こうだな。まずどうにかしてオルフェノクの武器を奪って、それを使って俺がフルチャージアタックをぶち込む状況を作る。」
「その「どうにかして」がまず大変そうだけど、なあ恭也。」
「あ?」
その時、一真が真摯な表情で恭也に向き直ってきた。
「その前に、お前はいいのか?ここで油を売ってて。 ここはお前の世界じゃないし、命まで懸ける義理がないだろう。自分の世界は守らなくていいのか?」
「あー……」
言われ、恭也は明後日の方角を向いて頭をがしがしと掻いた。
「まあ、細かいハナシすっと、俺が仮面ライダーやってんのは、事故で巻き込まれたようなもんなんだ。もちろん今となっちゃ世界を守るべき意義も見出してはいるけど、でも俺の世界には実は仮面ライダーがかなりの数存在している。」
「それは、ちゃんと自分の世界を守るに足る数なのか?」
「逆に何人いたって万全にはならないってことは、どの仕事だって同じだろ。それに、俺にとってはこの世界も「守りたい世界」になったんだから。」
「なに?」
苦笑しながら恭也は傍らにくっついている初の頭に手を置き。
「こいつがウチの世界に迷い込んできた時から、俺、こいつも守りてえって思ったんだよ。」
頭を撫でられた初が、くすぐったそうに目を細めた。
「いずれ、初をこの世界に戻して俺は帰らなくちゃならない。だから、心配なんだよ。こいつはジョーカーだし、この世界にちゃんと居場所を作れるのかって。」
そこで恭也は眇に菱形と睦月を睨み付けるが、二人はそろってそっぽを向いた。
「だから、悪いけどそれがはっきりするまでは俺はこの世界に居座るぞ。」
「……そうか。」
恭也の意志を聞いた一真は、それでも顎に手をあてたまま思案を続けた。
「別に揚げ足を取るつもりじゃないんだが、ってことはこの列車はお前個人の所有物じゃないんだな?」
「ああ。オーナーがいるけど、俺はこの列車にでかい貸しがあるんでな。けっこう無理が効くんだよ。」
「……そっか。 分かった。オルフェノクの退治にはお前にも協力してもらおう。」
「ってゆーかやらせろ。」
犬歯を剥き出して笑んだ恭也と一真ががっちりと手を握り合った。

「ってとこでハナシがついたところでよ。お前はそのオルフェノクに対抗できる仮面ライダーの世界に行かなくていいのか?」
「『うむ。」』
恭也の何気ない問いに、瞳子はあっさりと首肯した。
「『どのみち、このバックアップの身ではワールドスライドは実行できない。活動体の復元完了までは身動きが取れないから、それまではこの世界の脅威の排除に回る。」』
「ん? じゃあ変身はできるってことか?」
「『そうだ。」』
一真の指摘にもうなずいて見せる。
「一応聞くけど、お前、ディケイドと同じ能力を持ってると見ていいんだよな?」
「『その通りだ。」』
「よし。じゃあおおまかに三隊に分けよう。菱形さんと睦月でアンデッド専属対応。俺と恭也と、それから初ちゃんでアンデッドとオルフェノクの両対応。そんで透はオルフェノク専属対応ってことで、どうだ?」
「ちょっと待って下さい。ジョーカーを作戦に同行させるのは反対です。そもそも人間の世界を守るこの作戦にジョーカーが本心で協力するなどあぶげ!?」
言い募った睦月の顔面を、ドス黒いニコニコ顔の一真が黒縁メガネごと握り締めた。
メガネのフレームがみしみしとイヤな音を立てる。
「あっはっは。おかしなコトを言うなあ。世界まるごとぶっ潰れるかもしれない危機だぞ?人間だのジョーカーだの言ってる場合か?」
「あいっ、いちっ、いひぃーーー!?」
「それにもし初ちゃんに悪意があったら、恭也たちが無事でいるのもおかしいだろ?」
「そっ!? それはっ!? いっ!? 元の世界に帰る為にいいぃいぃいぃ!?」
「アンデッドは自分の種を繁栄させるのに別に世界を選ばないだろ。帰ろうとする必要性が全くない。 聞けば、ジョーカーは恭也の世界で危うく勝ち残るところだったらしいじゃんか?それをわざわざ危険を冒して「残り二体」の状態にしたんだ。初ちゃんには他のアンデッドと違って共存の余地があると思うけどなあ?」
「あいいいいいいっ!? わかっ!? 分かりました一真さんの言う通りでいひいいいい!?」
「ん。分かってくれて嬉しいよ。」
ぽい、と睦月を投げ捨てる一真。
「それに、仲間とは協力し合うもんだろ。そうやって俺たちは今日までやってこれた。違うか?」
「違わんが……アンデッドとの共存を認めるのは、俺たち仮面ライダーの存在意義と矛盾しないか?」
そこに、菱形が額に脂汗を浮かべながら反論した。
「ぶっちゃけアンデッドが人間に危害を加えない状態になればいい訳でしょう?無駄に戦うこともないし、結果的には同じことですよ。」
「何を以て無害と判断するかは各個人の見解によって異なるだろう。 ……だがまあ、剣立の言う通り宇宙規模の危機でもある。この件がおさまるまで、という条件で、そこのジョーカーとの共闘に協力しよう。睦月もそれでいいな?」
「え~~?」
菱形の問いに心底イヤそうな顔をした睦月だが、やがて掴まれた箇所をさすりメガネの位置を直しながら居住まいを正した。
「……まあ、二対一になったら仕方ないですね。三人の共同経営を始めた時からの伝統の過半数決裁ですし。分かりました。」
「よし。じゃあ透、恭也。さっそく始めるぞ。」
「ああ!」
「『いいだろう。」』
一真の号令に、恭也と瞳子の身を借りたディレイド・透が迅速に応答した。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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