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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.42 ブレイドの世界

もう、何を願っていたかなんて思い出せない。
ヒューマンアンデッドを封印し取り込む以前のことなんか、何もかも忘れてしまった。
ただ平穏であればいいとどこからか聴こえる声にどうすればいいか分からなくてたまらず眠りに就いたのに、呼び覚ます騒音は争え争えと心を掻き乱す。
あの灰色の悪魔に動けなくなるほど痛めつけられて気が付いたら知らない世界にいた。
初めての「トモダチ」のアリス。元気かな。大丈夫かな。瞳子お姉ちゃんが一緒にいてくれてるから、心配ないかな。
まだ何物でもない未確定確率の塵の砂漠を宛もなく歩き回ったあの旅も、アリスがいてくれたから辛さを感じずにいられた。
その感情をなんと言うのか知らないけれど、「時の列車」に捕まった時はアリスだけは守りたいと思った。それだけを考えていた。
その感情をなんと言うのか知らないけれど、なんて危ない思考だろうと思った。他の存在の為に自分の身を危険にさらすなんておかしいと思ってたはずなのにアリスを必死に押し隠していた。
どこからか聴こえる声はそれでいいと優しく思考を塗り潰す。
どこか心地良いその支配に身を委ねるうちに「トモダチ」のアリスだけじゃなくて恭也お兄ちゃんも瞳子お姉ちゃんも美穂お姉ちゃんも秋乃お姉ちゃんもレイラお姉ちゃんもシーザーお兄ちゃんもヴァイオラお姉ちゃんもみんなみんな守りたいと思うようになった。
なんてことだろう。自分が危なくなるかもしれないのに、そうせずにはいられないなんて。
あの灰色の悪魔は動けなくなるくらい怖いけど。
みんなが守りたいと思ってるものも守りたいと思い始めている。
だけど結局勝ち残ればみんなを死なせてしまうジョーカーの自分がいったいどうすればそれを叶えられるのか、まだ、分からない。
もう、何を願っていたかなんて思い出せないけれど、今はみんなを守りたいと思ってる。そこに一緒にいたいと願ってる。
なんてひどい|我が儘《わがまま》だろう。
これはきっと、忘れてしまった願いよりもずっとひどい我が儘だ。


『ぃやあああああ!』
円環を三つ巴に配した穂先による刺突が灰色の異形の手首を打ち据える。
『ーーーッ!?』
その衝撃にたまらずその両手の、表皮と同じ灰色の短剣を取り落とすオルフェノク。
素早く踏み込んだレンゲルは落ちた武器を後方へ蹴り払いさらなる槍の連撃でオルフェノクを押し退けた。
『ーーーッ!』
そこへ別のオルフェノクが長大な灰色の槍を振りかざしてレンゲルに迫る。
『いっ!?』
睦月は慌ててレンゲルラウザーを引き戻すが、既にオルフェノクの方は腰溜めに槍を突き出すところだった。
同じ間合いの武器同士では一瞬の差が命取りである。
だがその槍は、突き出されることなく全身に火花を散らせて仰け反ったオルフェノクの体勢とともに彼方に投げ出された。
レンゲルの後方にいたギャレンからの射撃による援護だ。
『菱形さん! ああ良かった!槍だったらレンゲルのシステムでも上手く扱える!』
『……銃を持ったオルフェノクはなかなかいないものだな。』
無手になったオルフェノクになおも銃撃を浴びせて追い払いながらぼやくように言う菱形。
レンゲルは構わずにほくほくした様子で灰色の武器を拾い集めている。
『いたとしても、銃なんてどうやって奪い取ればいいんです?』
『お前が突撃して隙を作るしかないな。』
『しかなくもないですよ!? ……ああまあ一真さんにはこれで我慢してもらおう。ブレイラウザーよりかなり短いけど。』
灰色の、不思議な質感の短剣をためつすがめつしながら睦月はぼやいた。
『菱形さん!睦月!オルフェノクはどこ行った!』
『あっちです!はいこれ!』
その場に専用バイク「ブルースペイダー」で駆け込んできたブレイドに、すれ違いざまに二本の灰色の短剣が投げ渡された。
『さんきゅ! ってちっさ!?』
手に飛び込んできた短剣に驚きながらも慌てて胸に抱えて持ち換え走ってゆくブレイド。
その後を、専用バイク「エクリストリーム」に跨ったエクリスとそのタンデムに腰掛けてエクリスにしがみつくカリスが駆け抜けていった。

一同は現在、作戦通りオルフェノクの武器を奪いつつ、アンデッドとオルフェノクにそれぞれ対応していた。
『アンデッドサーチャー』によって所在を感知できるアンデッドと違ってオルフェノクにはそういった目印がなにもない。
しかも人間に化身できるというのだから、より質が悪い。街中に紛れ込まれたら探し出すことは不可能だ。
だがディレイドのバックアップによれば、オルフェノクは自身の能力にかなりの驕りがあり、自らを「人類を超えた存在だ」としてその力を誇示せずにいられない輩が多いと言う。
そう言った驕りと、タガが外れた精神は、下等種たる人間を殺して「自分は優れているのだ」と悦に浸りたいという欲求にまみれている。
そしてオルフェノクに殺害された被害者の死体は塵化して消滅してしまうと言う。
今「BOARD」の情報網によって「怪物」の出現を極力早く察知するよう努力してはいるが、そういった前述のオルフェノクの特性による暴虐を目撃した一般人の情報の他は変死、あるいは行方不明事件を追うという後手に回らざるを得ない状況だ。
その上もっとも厄介なことは、オルフェノクは「殺した人間」を「仲間」に変えてしまう場合もある、ということだった。
『くそったれ!「進化」ってのは、誰かを見下す為にするもんじゃないぞ!』
追いついたオルフェノクに駆け寄りざまに振りかぶった灰色の短剣を叩き込むブレイド。
やはり武器のリーチと重心のバランスが異なるため剣を扱うブレイドのシステムを以てしてもブレイラウザーを振るう時のようにはいかないが、効かない武器を使うより遙かにましだ。
同じく渡されたもう一本の灰色の短剣を手に、カリスももう一体のオルフェノクに攻撃を加えて足止めし、巧妙に指定の方角へと誘導してゆく。
『よおし!どけ二人とも!』
そこに掛けられたエクリスからの合図にブレイドとカリスは同時にオルフェノクらから飛びすさり後退した。
《フルチャージ。》
『おらああああああ!』
電光を纏ったグレイブモードを一回転させ、発生したフリーエネルギーによる烈風でオルフェノクらを薙ぎ倒し足止めする。
『あああああああ!』
そこへ、背後から振りかぶった巨大な稲妻の縦一閃がオルフェノクらをまとめて飲み込み爆砕させた。

「……なんだよ?これ……」
瞳子はその異空間でそんな交錯する仲間たちの声を聞きながら、事の異様に呆然としていた。
「……なんで、初の声が聴こえてくるんだ……? 一真のも、恭也の声も聴こえる……?」
『一真はディケイドからコンバートした情報だが、初と恭也はお前が接続したものだ。瞳子。』
「透!?」
聞こえてきた透の声に、瞳子は慌てて意識をそちらに向けた。
だが視覚に捉えられる情報はなにもないのに、そこに透が存在していることが解る。
「おい!? なんなんだよここは!?」
『お前の中に構築したディレイドのバックアップの内部情報領域だ。』
「もっと分かり易く言いやがれよ!?」
『これ以下もない状況なのだが。』
ついいつものノリで言い合ってしまったが、瞳子の意識はこの異様な状況を受け入れてしまっている。
目に映るものとは異なる空間認識。耳に聴こえるものとは違う言語の伝達。声帯を振るわすものとは異なる意識の主張。そしてそれらをおかしいとは思わず新たな常識として受け入れる概念。
自身の体勢や顔の向きなどという肉体的感覚も存在しないものとして既定されており、そのことで喪失感も不安感も抱きはしない。
ディレイドの内部情報領域。
言うなれば、思念のみの世界。
言い方はあるじゃないかと思ったが、確かにこれ以上もこれ以下もない状況ではある。
「でも、だからってなんで初と恭也の声が聞こえるんだ?あたしは特になにもしてないぞ!?」
ディケイドからの情報によれば、これが「絆を繋ぐ」ということらしい。『システム・ディケイド』には全て標準装備されているが、俺には実行不可能なものだった。俺と接続したお前がそれを実行可能にしたのだ。』
「……わかんねえよ。」
いや。瞳子の理性は既に理解していた。感情が納得していないだけで。
こんなことの為にみんなと協力した訳じゃない、と。
「わかんねえけど、でも透、おまえ、初がこんだけのことを思ってるのに、おまえ、なんとも思わねえのか!?」
『うむ。そこの感情の有無がお前と俺の「絆」の接続の可・不可の違いの根拠だろう。』
瞳子の激高にも透は冷静なまま解説した。
『おかげで現時点まで使命を遂行できている。『システム・ディケイド』にパートナー設定があるのは恐らくこの為なのだろうな。』
「いや。お前の場合違うだろ。なんとなくだけど。」
いけしゃあしゃあと宣う透に、瞳子は半眼で告げるような心地で言い返した。
「そんなことより、お前、今までこんなものをずっと聴いていたのか?」
瞳子の認識が脆弱なせいで全ては聞こえないが、この情報領域には瞳子と透が出会ってから透が接触した全ての世界の「基点となる仮面ライダー」たちの「声」が満ちていた。彼ら全ての思考が、リアルタイムで流入しているのだ。
そしてこの世界にあっては特に「初」と「恭也」と「一真」の声が明瞭に聴こえていた。
『そうだ。だから言っただろう。「自分と接続した者の思考は全て読めている」と。』
「だったら!?」
瞳子は叫んだ。
「だったら、初のこと、助けてやれよ!? このままじゃ恭也だって帰れねえじゃねえかよ!?」
『初のことは、この世界の問題だ。そして俺には使命がある。宇宙の接触崩壊の危機に対しては、このまま進むしかないことも、今のお前になら分かるだろう?』
「んう……!?」
その通りだ。今の瞳子なら理解できることだ。
『だから初のことはお前が好きにしろ。……いや、むしろお前でなければ解決できまい。』
「……え?」
透の言葉にきょとんと聞き返す瞳子。
「それって、どういう……?」
『俺とお前の違いはそのまま「できること」と「できないこと」の差でもあることを俺もようやく認識しつつある。きっと、「初」という個体を救うことは俺には構造的に不可能だが、お前になら可能なのだろう。……これまでの事と同様に。』
「…………。」
どこか、透にしては真摯な物言いに、つい聞き入ってしまう。
『話はここまでだ。ディレイドの活動体の復元までお前の身体を借りる理由は先ほど話した通りだ。そしてそれまではこの世界に侵入した異世界の驚異を排除する。』
「ちょっ、まて……」

そして瞳子は静かに瞼を開き黄色に輝く瞳で眼前の光景を見据えた。
「『…………。」』
そこは拓けた場所の工事途中で途切れた道路の端。
計画が中止されたのか、中途半端な姿をさらして佇むコンクリートの高架の柱と、その周辺に置き去りにされた錆びた重機。そしてあちこち部品を失い同様に錆びて朽ちた数台の乗用車。
やはり錆だらけのフェンスで囲まれたこの敷地内には今、風に吹かれた砂埃が渦巻いていた。
否。
吹き荒れているのは砂ではない。
物質を粒子レベルで識別できるディレイドのバックアップの目にはそれがなんなのか瞬時に判別された。
『灰』だ。
辺りに点々と散らばった灰の小山が風に吹き散らされているのだ。
今、そこの朽ちた重機の向こうから人影が歩み出てきた。
片手に巨大な灰色の人型の首を掴み上げて。
だらしなく衣服を着崩した長身痩躯。だがその天真爛漫な笑顔を浮かべた顔は体格に比して幼い。
片手でオルフェノクの重量を掴み上げているのが何かの冗談かと疑うほどの曇りない笑顔。
「キミタチさぁ、なにしてんの?」
その状態で男はオルフェノクに向かって朗らかにしゃべり出した。
「今ボクの前に出てくると危ないってのになあ。知らなかった?」
『ッグ!? ッガッ!?』
宙吊りにされたオルフェノクが己の首を絞め上げる手を掴み返して振り解こうとするが、なぜかその手が、掴まれた首が表面から灰化し風に散り始めたのだ。
『ッガッ!? アアアアアア!?』
男が触れた場所からオルフェノクの身体が灰化し崩壊してゆく。
辺りに点在する灰の小山は、この男が滅ぼしたオルフェノクの残骸か。
自身の身体の謎の崩壊に恐慌に陥ったオルフェノクをぽいと放り捨てたその男は、その笑顔を瞳子のほうに向けてきた。
「で?あれが「悪魔の影法師」?あれオモチャにしていいんだね?」
「あ、ああそうだ!」
自らが投げ捨てたオルフェノクなどもはや忘れてしまったかのように踏み砕いて歩いてきた男の問いかけに、男の後方から女声の返答がかけられた。
見れば、男が歩み出てきた重機の陰に、隠れるようにこちらを覗き見ている震(フルル)の顔がちらりと見えた。
なにやらやたらその男を恐れて怯えているように見える。
「そうだ!霧崎!そいつを好きにしていいぞ!」
「ふうん。面白そうじゃん。」
震の言葉を聞いた「|霧崎《きりさき》」と呼ばれた男は、着崩れた着衣を直そうともせず、満面の笑顔のまま瞳子に近寄ってきた。
その途上で霧崎の顔に複雑な文様が浮かび上がり、次の瞬間には肉体が膨張し、灰色の巨大な異形へと変貌した。
「でぃ、ディレイド!今度こそ貴様の最期だ! こ、こいつはね、オルフェノクの世界でも裏で「イルラッククローバー」の名で知られた最強のオルフェノクのひとりなんだよ!こいつで塵になっちまいな!ディレイド!」
顔だけ出して言うだけ言った震はすぐに引っ込んでしまった。
「さあ。なんかあのおばさんが、おまえで遊んでいいって言うからさ。 ……楽しませてくれよ。」
霧崎が変貌した凶々しき蛇竜のごとき相を持つ「ウロボロスオルフェノク」は、面白がるような素振りで眼前で合わせた掌の指先を端からぱらぱらと閉じたり開いたりしながらゆったりと歩いてくる。
「『ふむ。」』
瞳子の身体を借りたディレイドのバックアップは、震の言うことも霧崎の異様も一切意に介さずカードとディレイドライバーを取り出した。
カードをスリットに挿し入れ、抜刀の動作でスライドカバーを閉塞する。
「変身。」
《カメンライドゥ・ディ・ディレイド!》
無数のヴィジョンが殺到してグレーのボディへと変移し、彼方より飛来した幾本ものライドピラーを前後左右から頭部に収め、全身の各所をイエローに変じてディレイドへと変身する瞳子の身体。
そこに現れたディレイドは、透自身が変身するものよりもかなり小柄な体躯となっていた。瞳子を素体とした為にサイズが瞳子に合わせられたのだ。
だがディレイドのバックアップはそんな自身の身体のことも意に介さず次のカードをスリットに挿し入れカバーを閉じた。
《カメンライドゥ・ファ・ファイズ!》
カレイドブレイドからの指令に従いドット柄のノイズに身を包んだベルト・カレイドサーキットから部品がひとつ飛び出しディレイドはそれをキャッチした。
それは黒とシルバーに彩られた巨大な携帯電話。
それを手首のスナップで展開したディレイドは親指でキーを次々と打ち込んでゆく。
《スタンディングバイ。》
キコンキコンと特徴的な音で打ち込まれたキーの入力内容に従い待機状態の旨を告げた携帯電話を手首のスナップで閉じたディレイドは、その携帯電話をひょいと僅かに放り上げ三軸回転させてからキャッチした。
「『変身。」』
再び呟いて手の中の携帯電話をそのまま、変移が完了したカレイドサーキットのバックル部分に出現したコネクタに振り下ろして接合させ、時計回りに九十度押し倒した。
《コンプリート。》
携帯電話を合体させることでベルトバックルと化したその両端から赤い光条が上下に伸び、ディレイドの体表で幾何学模様を描き出し一際強い輝きを放った。
後に現れたのは、やはりディレイドのままであったが。
だがこれで、オルフェノクの王を守護するために造られた、フォトンブラッドによる『同族殺し』、ライダーズギア・仮面ライダーファイズの能力を発現できる。
『……ふうん。面白いよ「悪魔の影法師」。』
そのディレイドのベルトを見た霧崎・ウロボロスオルフェノクが笑みを含んだ声音で呟いた。
『本物くらいには遊べるんだろうねえ!?』
次いで叫んだ瞬間にはウロボロスオルフェノクの姿は掻き消え同時にディレイドが宙を舞っていた。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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