FC2ブログ

ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

track.52 ネガの世界

四人のダークライダーが四方からディレイドに襲いかかる。
逃げ場はない。跳躍などで上に回避する他には。
四人はそう思っていた。
だがディレイドはその場を一歩も動くことなくダークドライの、ノクスルーキスの、ダークシークロスのパンチを上体の捻りだけで避けて各々の拳を両手で捌くと、あろうことか三者のパンチはそれぞれダークライダー同士に激突した。
『がっ!? 』
『痛い!? 』
ところが、互いの攻撃によって跳ね飛ばされるダークライダーに混じってディレイドまでが吹き飛ばされていた。
唯一躱される直前に拳を引いたダークミラージュが神速で放った二発目のパンチが他のダークライダーの身体の陰からディレイドを捉えたのだ。
『イイ男ってのはな、パンチを外さねえんだよ』
気取った仕草で肩をすくめて迫るダークミラージュの前で次々と跳ね起きた三人のダークライダーとディレイドが間断の隙なく跳び退き間合いを取った。
その頃には影すら残す速度でダークミラージュがディレイドの懐まで接近していた。
だが同時に炸裂した爆音が聴こえるや否や、ダークミラージュは即座に反応した。
『!? 』
そこに飛び込んできた銃弾に、身を翻して躱したのはディレイドだけではなく、先ほどの地点まで一瞬にして退避していたダークミラージュも同様であった。
見れば、ダークシークロスがフリントロック銃にも似た奇怪な銃器を構えてこちらをポイントしていた。もろとも狙撃しようとしたのだ。
『てめえ魚虎!? なにしやがる!? 』
『忌々しい。貴様のおかげで射線が逸れたぞ』
二人が言い合う内に、ダークドライとノクスルーキスがディレイドに迅速に迫る。
『さあ!僕の気持ちを受け止めておくれ!』
振りかぶったダークドライの拳に大気中の水分がまとわり付き、アームガードとリストバングルの中に充填されると、それらは遠心力によって腕の装甲の中を迸り撃ち出されたパンチの威力を増幅させた。
それは攻撃をいなすことを得意とするディレイドの力を上回り、正拳突きの軸は逸らされたものの捌いた腕ごとディレイドの体勢を崩させた。
『くらえ!正義のキック!』
丁度そこにノクスルーキスの蹴りが襲いかかる。あまりにも絶妙なタイミングなのはつまり、ダークドライの攻撃を受けたディレイドのリアクションを待って攻撃を仕掛けた為だ。
「うーわ。相変わらずえげつない。」
傍観している瞳子をして言わしめる狡猾さ。
結局それは命中には至らず、一回転して立ち直ったディレイドとダークライダー四人が向き合う配置となった。
『はっは。ヤルじゃねえかよ。最初、跳んで逃げると思ったのによ。』
『言ったはずだ。俺の使命の邪魔をする者は、すべからく排除する、とな。』
ダークミラージュの嘲笑に淡々と応え、ディレイドは間近にいたノクスルーキス目掛けて疾く走り、その胸郭に拳を叩き込んだ。
『う!? 』
虚を突かれた様子のノクスルーキスだったが、ディレイドの拳はなぜか威力を著しく殺がれ とん、とその胸を小突くに終わった。
『っと、無駄だよディレイド!悪の攻撃は俺には効かない!』
瞬時に立ち直ったノクスルーキスに蹴り返されたたらを踏むディレイド。
だがディレイドは今の一瞬の交錯でその怪現象を見抜いていた。
アンチエネルギーフィールドの類だろう。
ノクスルーキスが纏う力場は、体表付近のごく狭い範囲だが、全てのエネルギーの流れを阻害している。
運動エネルギーさえも。
最初に相打ちを誘った時に仲間の攻撃を食らっていたということは、その後に展開していたということか。
その分析の一瞬に遠くのダークシークロスの手元でマズルフラッシュが瞬いた。
瞬時に引き抜いたカレイドブレイドの腹で弾丸を受け止めるが、その剣の死角を縫って駆け込んできたダークミラージュとダークドライが拳を、蹴りを打ち込んできた。
『いま僕のこと忘れてたでしょ!? 忘れてたよね!? 』
『はあっはっはっはあ!御挨拶はまだまだこれからだぜえええ!』
二人の奇妙な特性を孕んだ連撃はディレイドをして圧してゆく。
ダークドライの攻撃は非常に重く、打ち払うのは容易いことではない。
そしてダークミラージュの動きはとにかく素早かった。
その素早さは「クロックアップ」や「超高速移動」とはまた種類が異なり、ダークミラージュの素体である竜胆寺自身の反射速度が異様なまでに速いことに寄る。
ダークミラージュの攻撃は、ディレイドがガードしようとしたと見るやことごとく軌道を変えてヒットし、ディレイドからの攻撃は、死角から打ち込んだにも関わらずダークミラージュはそれらを全て「見てから」回避しているのだ。
接近戦に不利なカレイドブレイドを収納し、まずは攻撃動作がやたら大振りなダークドライを蹴り倒すが、同時にダークミラージュに軸足を蹴り払われて転倒してしまった。
『もらったっ!』
倒れたディレイドを踏み砕こうとダークミラージュが僅かに飛び上がる。
そこへ瞬時に取り出したカレイドブレイドでディレイドは寝転んだまま空を薙いだ。
『っちっ!? 』
回避不能な空中にあって、あろうことかダークミラージュはその不意打ちにすら反応を見せ、かろうじて宙で身を捩って反対側へ着地した。
すぐに間合いを開けるダークミラージュと起きあがるディレイド。
ふと見ると、ダークミラージュの肩から白煙が立ち昇っていた。カレイドブレイドがかすっていたのだ。
『……ヤロウ……』
途端に据わった声で唸るダークミラージュ。
どこかだらけた挙動だったこれまでと打って変わって突然 隙のない動作で手首のリミッターに手を遣り身構える。

きゅりっ!

突如鳴り響いた甲高い擦過音にダークライダーの身動きが止まった。あろうことか、全員が変身を解除して戦闘態勢を解いてしまったのだ。
それを隙とばかりに突撃しようとしたディレイドの前に一人の男が現れ、ディレイドもそこに立ち止まった。
派手なスーツを着こなした男は広げた両腕にそれぞれヴァイオリンと弓を提げており、さながら喝采を浴びている音楽家のように閉じた瞳で天を仰ぎ特徴的な唇の端を吊り上げて何やら興奮と感動に打ち震えている様子だった。
『……お前が『王』か。」
その姿を見た瞬間に正体を看破したディレイドが、自らも変身を解除しながら呟いた。
男はぱちりと瞼を開くとおどけた仕草で両手を前後に回して深く礼の態度を取ると歓迎するように両腕を広げた。
「その通り!王さまだ! だが『王』だなんて堅っ苦しい呼び方をすることはない。特にディレイド。「悪魔の影法師」。お前には特別に「紅 音也《くれない・おとや》」と呼ぶことを許してやる。 なにせ俺は千年に一度の、……いや、謙遜が過ぎたかな、万年に一度の宇宙の奇跡……天才だ! 「音也さま」と「様」を付けても構わんぞ!」
いちいち気取った仕草で己と相手とを指し示し身振り手振りを交えながらハイテンションに滔々と宣う「紅 音也」なる男。
「おい王さんよ。ナニ邪魔してくれてんだよ今イイとこだったのによ」
ぎぎゃりいいっっ!
紅 音也の背後から竜胆寺が威嚇的な態度で詰め寄った途端、音也がいきなりヴァイオリンを盛大に引っ掻いた。
「っがああああああああああッッ!? 」
それは常人には不快極まりない騒音で、響いた瞬間 透を除く皆が眉をしかめたのみだったが、唯一 竜胆寺だけが耳を押さえてのたうち回った。
「あああああああッッ!? っがああああっ、くそッ!? 」
「ちょっと良男!? 大丈夫!? 」
「しっかりして。良男。」
「「良男」言うんじゃねええええッ!? っがああああッ!? 」
ダークアンカオスの少女たちが駆け寄るが、どうも傷に塩を擦り込んでいるようにしか見えない。
「……黙ってろ。ダレが「王さん」か。俺様が今しゃべってるところだろ」
苦悶にのたうち回る竜胆寺を冷たく見下ろし吐き捨てた音也はやがて透に向き直ってきた。
「……まあ、かのホームラン王も偉大には違いない。おかげでこれから先 二万年ほどは宇宙は天才に恵まれないことだろうがな。」
ころりと態度を変えて朗らかにしゃべり出す。
「熱烈歓迎が過ぎたようだな。それとも「悪魔の影法師」には今さら大した持て成しでもなかったかな?」
「問題ない。」
対照的に透は素っ気なく応えた。
「それより、お前に話がある。」
「わかっている皆まで言うな」
掌を突き出して斜に構え、大げさに頭を振りながら音也が言葉を遮った。
沈痛な面持ちを装い、立てた掌をくるりと指さしに変えて。
「お前を遣わせた奴らから俺もハナシは聞いている。礼の物を取りに来た。そうだろう?」
「うむ。」
「へ?」
離れた場所で成り行きを見ていた瞳子が怪訝な声を上げるが、誰も採り合わない。
「渡してもらおうか。」
「だがその前に俺の話を聞いてもらおう。」
はぐらかすように指先を回すと音也はそのまま語り始めた。
「この世界がどんな所かは知っているよなディレイド? ここは全宇宙の裏面領域。当然その概念も「表」の宇宙とは異なる。」
言いながら、音也は透を遠巻きにゆったりと歩き出した。
「「表」に対する「裏」、「光」に対する「闇」のように、「多数ある表の世界」に対して我らが世界は「単一」だ。すなわちここは全ての「表の世界」の「裏」であり「闇」である。」
歩きながら音也は持ち直した弓を教師の持つポインター宜しくひょこひょこ振りながら滔々と語り続ける。
「その概念も裏返り、無力な人間は淘汰され、半端な力を持つ怪人を管理し、仮面ライダーを統制する「力による絶対支配」! これこそがこの世界での常識だ! ……まさかそれを否定し俺たちを駆逐するなどとは、言わないよな?」
「ああ。」
再び両腕を広げて宣言してから試すように弓を突きつけて問う音也に、透は素っ気なく同意した。
「当該宇宙の常識に口出しをする気はない。俺は使命の遂行にあたり、原住民の心情は斟酌しないからな。」
「イイ子だ。」
くるくる回る弓の先端の向こうで音也の顔がにやりと歪む。
「そこでだ。俺様にも使命があってな。なにしろこの世界は「力が全て」だ。そんで、もう世界丸ごとシメちまったモンだから、やる事がなくなってしまった。ヒマなんだよ!」
再び歩き出した音也は大きな身振りでぼやきつつ、最後は大げさに肩をすくめて全身で退屈を表現した。
そしてヴァイオリンを担ぐとまるで楽器が腕の延長であるかのように自然に弦を操り弓が滑って華麗な音色を紡ぎ出す。
「いかに創世以来の奇跡たる俺も頂点を極め過ぎていささか退屈だ。 ……だからさ。」
ゼ ン ウ チュ ウ ヲ セ イ フ ク シ テ ヤ ル~♪
あろうことかヴァイオリンの音色で言葉を表現した音也は楽器を操る腕をぴたりと止めてこちらを睨み上げ、にやりと口角を吊り上げた。
「 とまあそんなワケでな。最初はディケイドに手厚いお持て成しを振る舞ったんだが敢えなく袖にされちまったんで、お前に協力を頼みたいんだけどな。」
「断る。」
透は一瞬の遅滞なく即答した。
「それは俺の使命に反する。」
「オーケイ。交渉決裂だ。」
音也も実にあっさりと引き下がった。
「預かり物は俺が隠した。お前の手には渡らない。そしてお前の力を俺が頂こう。ディケイドのフォローバックアップの力をな。 お前たち!」
透に背を向けた音也は、ダークライダーの四人に向かって弓を一振りした。
「全力で倒せ。手加減ナシだ。」
「……ンだよ、結局ヤるんじゃねえか」
未だ側頭部を押さえたままの竜胆寺が両脇を三人の少女たちに支えられながら立ち上がった。
その後ろから潤が、沙威が、魚虎が歩み出て立ち並ぶ。
そしてそれぞれ、三人の少女が龍人にそして光球に変化してリミッターに取り付き、ベルトを巻き付け、腹部に手を添えてベルトを召還し。
全員が身構えると同時に叫んだ。
「「変身!」」
三色の光球を三角に配し、サインを形作った両手を交差させ、大見得のポーズで影に包まれ、両腕を妖しく蠢かせ。
共通して凶々しいオーラの奔流に包まれた彼らの姿は次の瞬間には再びダークライダーに変じていた。

『ああ。残念だよディレイド。『王』から命が下された。ウェットかつセンチメンタルな僕としては御下命に従わなければならないのが心苦しくて悲しいよ。 でも』
ダークドライはマスクの巨大なセンサーの縁の水分を拭っていたハンカチをピッと放り棄て。
『やるからには全力を尽くそう。 ……「悪魔の影法師」相手に「ドライ」も「ヴァッセル」もないよねえ……じゃあ』
白々しい泣き真似から一転してワクワクといった様子であれこれ手札を吟味していたダークドライは、やおら中指と親指で輪を作った両手を舞台役者のように左右に伸ばすとマントを翻すかのようにその場で優雅にターンした。
するとその姿が瞬時に変化を遂げていた。
装甲各所が凶々しく反り返って渦を巻き、まるで沿岸地域を襲う凶暴な津波の濁流のごとき異相と化していたのだ。
『「アイネフルートフォーム」。君の息の根を止める水害の化身さ。』
言うや、ダークドライ・アイネフルートフォームが何かを捧げ持つように両掌をかざすと共に、辺りの地面が鳴動を始めた。
激震が臨界に達した途端、あちこちで鉄の円盤が吹き飛び口を開いたマンホールから汚水の濁流が吹き上がった。
『さあ!全て洗い流してあげるよ僕の涙で!跡には何も残りはしないだろうけどね!』

「うひゃー!? 」
ダークドライの切り札の機能により際限なく増幅された海参の能力で招き寄せられた大量の下水が津波の勢いで辺りを飲み込み、瞳子は慌てて近くの廃ビルの非常階段の踊り場まで跳躍し着地した。
『クラァ!海参テメエ俺サマの超カッコいいプロテクターが汚れんだろうが!』
同様にブロック塀に飛び乗ったダークミラージュが罵声を吐きつける。だが際限なく濁流を喚び寄せ続けるダークドライには聞こえた様子がない。
『チッ、いくら命令でも俺ァ全力はゴメンだぜ!? ルージュ!ブルー!ビオレ!「スーパースターフォーム」だ!』
叫び、ダークミラージュは右手首のブランクユニットを掴んで外し、右手でベルトバックルの青のユニットを取り外すとそこに代わってブランクユニットを設置し、持ち換えた青のユニットを右手首に付け直した。
『マスター。何度も言いますが、正確には「コーディネイトフォーム」です。』
右手首の青のユニットから、ブルーと呼ばれた少女の冷たく呆れた声が訂正した。
それには構わずダークミラージュの変化は進行した。
全身の赤、青、紫の装甲が分離して僅かに浮かび上がり、左右で配置を入れ替えると再び身体に装着された。
それだけで、全体の印象が大きく異なる。
まだ変化は終わらない。
姿を変えたダークミラージュの背部から赤の、青の、紫の突起が一本ずつ突き出し、それぞれ赤い皮膜の、青い羽毛の、紫の機械の翼に変形したのだ。
背中から三本の異様な翼を生やしたダークミラージュは すっ、と不自然な挙動で宙に浮かび上がった。
『さぁて。俺サマの「スーパースターフォーム」の超カッコいい強さを見せてやるぜ』
『ですから、「コーディネイトフォーム」ですってば。』
ブルーの再三の訂正は届かず、ダークミラージュは疾く飛翔していった。

襲い来る汚水の津波を背後にノクスルーキスは相変わらず大見得の構えで両腕を振っていた。
己の装甲各所に埋め込まれた黒水晶・紫水晶を順に触れてゆくその仕草は、それは十字形ではないにせよ、どこか「聖印を切る」動作を思わせた。
『「正義バリアー」!』
その動作の雰囲気をブチ壊すネーミングセンスに瞳子は思い切り肩をコケさせた。
だが新たに発現された機能はいかんなく発揮されたようで、なんと濁流に飲み込まれたはずのノクスルーキスがなんの痛痒もなくそこに立っていたのだ。
濁流に流されることなく立ち続けるノクスルーキスの足下は、よく見れば水のほうから避けて通って地面を円形に露出させており、ノクスルーキス自身を中心とした不可視の球形の力場が水を押し退けているように見える。
『俺の正義はこんなものに屈したりはしない! 行くぞ「悪魔の影法師」! とうっ!』
絶好調に元気良く宣言したノクスルーキスは、足場の悪さを全く無視してディレイド目掛けて駆け出していった。

『ふん。忌々しい。忌々し過ぎて反吐が出る。あの海参と おれの相性が戦場において合致するとはな。』
吐き棄てたダークシークロスは、自らコートのようなクロークアーマーをはぎ取るとそれをふくらはぎまで埋める水面に叩きつけた。
するとクロークアーマーは瞬時に黒い渦と化し、ダークシークロスはその黒渦に飛び乗った。
『変身態のまま反吐を吐いたら、そうとう泣ける事態になるだろうね?マスクの中が。』
『戯けたことを抜かすな。忌々しい』
ダークドライの茶々入れにも悪罵で返し、ダークシークロスは黒渦に乗ったまま水面を滑るように走り出した。
ダークシークロスの装備は、水の属性に反応し自在にその境界を操る。
ノクスルーキスと距離を空けて併走するダークシークロスは黒渦の上で銃の上部を腰の鞘に接続させると、その鞘の中から三日月のように湾曲した刃を引きずり出した。銃把を柄としたサーベルだ。
その白刃を構え、ノクスルーキスと共にディレイドに襲いかかった。

「変身。」
《カメンライドゥ・ディレイド!》
カードをドライバーへ装填しスライドカバーを閉塞させて迅速にディレイドへと変身した透の足元を濁流が流れ見るみるうちに水位を上昇させていった。
膝下までドス黒い水に浸されたディレイドの元へ、それぞれの持つ機能で足場の制限を無効化して走るノクスルーキスとダークシークロスが迅速に迫る。
ダークシークロスは脱ぎ捨てたアーマーコートを変化させた渦状の力場の上で、引き抜いたサーベルを振りかぶるとゴルフスイングのように足元の水を斬り上げた。
すると斬撃に釣られるように水流が立ち昇り、ダークシークロスのサーベルの動きに合わせての蛇竜のごとくたうち回るとディレイドめがけて鋭く迸った。
それは水流を薄く研ぎ澄ました長大な水の刃。
ディレイドはカレイドブレイドの腹を立ててその水の刃を受け止めるが、断たれた水流の残りの部分はそのままディレイドの身体に激突した。
ホースで蒔かれた水のごとく鞭のようにしなる水流の刃が複雑な曲線を幾重にも描き、続けざまにディレイドを打ち据える。
『忌々しい。水が棒きれごときで止められるか。』
濁流を蹴立ててバランスを崩し転倒するディレイドにダークシークロスは悪罵を吐きつけた。
すぐさま起き上がったディレイドは足場の確保の為に近くの建造物に見当を付け、そちらへと跳躍した。
だが空中で何者かに激突され水面に叩き落とされた。激しく水しぶきを蹴散らして転倒してしまう。
『逃がしゃしねえよ「悪魔の影法師」。』
浴びせられた嘲笑を見上げれば、上空でその姿を変形させたダークミラージュが三本の異形の翼を背負って空中の一点で静止していた。
『地べたを這いずり回ってろよ。滅茶苦茶にぼてくりこかしてやるからよ』
言うや否や空中のその姿が掻き消え次の瞬間にはディレイドの背後に殺気と共に現れた。
『ほらよ!』
水面から僅かに浮いた位置で滞空し繰り出された蹴りをディレイドはかろうじてブロックしたが、蹴り足を跳ね返した次の瞬間には既にその姿はディレイドの死角に回り込んでいる。
慣性を無視する有り得ない空中機動で飛び回るダークミラージュは次々と痛撃を浴びせ、ディレイドの身体は右へ左へと跳ね回った。

力場で濁流を退けた地面に立つノクスルーキスは大仰な動作で両腕を振り、全身各部の装甲に埋め込まれた黒水晶にひとつずつ触れていった。
聖印を切る仕草にも似たそれは、ノクスルーキスの機能を発現させる為のサイン。
先ほどの強力なアンチエネルギーフィールドを発動させた時とは異なる経路で黒水晶を辿りきると、両の手甲の黒水晶と胸郭の中央の紫水晶から短剣ほどの長さの漆黒の針が突き出てきた。
『ノクスルーキスの正義の必殺技さ!『|三本の釘《トレ・チオード》』! 罪深き「悪魔の影法師」よ!この釘で|磔《はりつけ》になるがいい!』
左手の甲から生えた漆黒の針を掴み引き抜くと、ノクスルーキスはそれをダークミラージュに翻弄されるディレイド目掛けて投げ放った。

「コーディネイト」とは「座標」の意。
推力や揚力に寄らず慣性を無視した空中機動を行うダークミラージュのコーディネイトフォームはその三本の翼により重力の楔から解き放たれ「絶対座標に対し自身の座標を変更する」ことで空間を自在に移動している。
そしてその機能は、素体である竜胆寺自身の持つ特性によってディレイドの高速思考演算すら凌駕する速度の超高機動を発揮する。
『!? 』
そこに突如飛び込んできた投射物を察知しダークミラージュは即座にディレイドから離れ謎の射線から退避した。
二人の間を通過したその漆黒の針はディレイドの右腕に激突するとくぐもった異音を立てて針の長さを直径とする空間を丸く抉り取りディレイドの右手を削り飛ばした。
『テメエ!なにしやがるッ!? 』
泡を食ったダークミラージュが針を投げ放った張本人・ノクスルーキスに向かって怒鳴りつけた。
『なにって。正義の必殺技さ。』
対するノクスルーキスはしれっと言い返し、続いて己の身体から生えた針を二本引き抜いた。
『今の 俺に当たるところだっただろ!? 』
『君が押さえててくれれば、もろともディレイドの頭を吹き飛ばしてやれたのになあ』
『てンめええええ!? 』
仲間を巻き込むことを厭わないノクスルーキスの発言にダークミラージュが激高した。
『|三本の釘《トレ・チオード》』はノクスルーキスの持つ局所重力制御機能の一端。
三発しかなくその効果範囲は極めて小さいが、針が穿った指定の空間にある あらゆる物を効果半径を境に硬度の区別なく球状に切り離し、飲み込んで超縮壊をかけどこかへと消し飛ばしてしまう。
宇宙外物質であるカレイドブレイドで弾き返そうとしても、その空間掘削範囲はカレイドブレイドを越えて発揮されるであろうことを、喪失した右腕の先を眺めながらディレイドは看破していた。
盾にしたカレイドブレイドは無傷でも、ディレイドの上半身を丸ごと抉られるに違いない。
『チッ!コイツは俺の獲物だぞ!』
『知ったことじゃないね。正義を成すには犠牲は付き物だしさ!』
改めてダークミラージュがディレイドに襲いかかるが、構わずノクスルーキスが漆黒の針を投擲したのを見て慌てて軌道を変えた。
ディレイドもノクスルーキスの投擲体勢を見て回避行動に移る。
『忌々しい。貴様らまとめて海の藻屑となるがいいわ』
波を蹴立てて水面を旋回してきたダークシークロスが怨嗟を吐きながら水流の剣『レイヤースライサー』を一閃させ、逃れる隙のない広大な斬撃を放ってきた。
その水の刃の範囲はダークミラージュとディレイドとノクスルーキスの三者を捉えて余りあるほど巨大。
だがダークミラージュは呆気なくそれを躱し、残ったディレイドとノクスルーキスを激しく打ち据えた。
『痛い!? 』
脇腹に水圧を喰らい「く」の字に折れ曲がって吹き飛ばされるノクスルーキス。
だが既に投げ放たれた二本の漆黒の針は、一本は明後日の方角へと逸れていったが、同様にバランスを崩したディレイドの左足に激突し片足を周囲の水と地面ごと丸く削り飛ばしていた。
さすがに体勢を維持できずディレイドは転倒してしまう。

ちなみにこの間も非常階段の踊り場に座る瞳子は眉ひとつ動かさず、楽しそうな顔で成り行きを眺めていた。

すかさずダークミラージュがディレイドに襲いかかるが、蹴り飛ばす直前に水面が隆起し手足を喪失したディレイドを飲み込んだまま水柱が高く高く伸び上がっていった。
『さあて。そろそろお別れの時間だね悲しいよディレイド』
『海参!てめえもッ!? 』
この洪水のような水浸しの環境を作り上げた張本人であるダークドライが白々しく惜しみを告げながら、同様の能力で大量の水を操っていた。
『ウェットかつセンチメンタルな僕としてはすっきりさっぱりとしたお別れなんてしたくないよ。 ……だからじっくりねっとりねちっこく送ってあげるよ。地獄までね』
水を操っているのはライダーシステムによって増幅された潤の持つESPであり、本人は悠々と気取った仕草で白々しくマスクのセンサーをハンカチで拭っている。
ダークミラージュの恫喝も聞かず、ダークドライ・アイネフルートフォームは一帯を浸す水を掻き集めて作り上げた巨大な水柱の頂点にディレイドの身体を掴み上げ、水を操り まるで腕のようにしならせると近くの廃ビルの壁面にディレイドを叩きつけた。
鉄筋コンクリートの壁が粉々に砕ける程の勢い。
だが水柱は瓦礫の中からディレイドを引きずり出すと再び持ち上げ反対側のビルに叩きつけた。
水中にあっては手がかりが何もないため脱出は不可能。
ディレイドはダークドライの成すがままあちこちのビルに叩きつけられていった。

関連記事

テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://lwisfgarden.blog.fc2.com/tb.php/68-90c53fc3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。