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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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クリサリス・エマージュ 第4話




朱と琥珀の格子模様に彩られた世界。
窓から夕日が差し込む寂れた空き教室の真ん中に、ずたぼろになって転がっている亮介がいた。
突然数人の男子生徒に囲まれ、からかわれ小突かれ、それらがヒートアップしていった揚げ句この有り様である。
カバンもその中身も辺りにブチ撒けられ、事の衝撃にずっと飽和していたのだった。
やがて物理的な痛みがひいたところでのそりと起き上がり、床に散らばった私物とカバンを回収していく。

『自分が、何の為に逃げるのか、それを忘れるな!おまえは、おまえの目的を成すために、この危機を回避するために逃げるのだ!』

あの日の夜に出会った大男の言葉が思い出される。
だがあの男は、亮介の存在を肯定しつつその実、なんら解決に至ることは言っていない。
「……どうしろっていうんだよ。まったく」
そして見てしまった緑色の異形の存在。
何年か前の渋谷隕石といい、世界が滅びるのは、実はそう遠くないのかもしれない。
「いいよ。どうせ死ぬんだ。俺なんか」
私物をカバンに詰め終え、だが立ち上がる気になれずあぐらをかいて座り込む。
「あぁあ。なんか、楽に死ねる方法とかないかなぁ……」
「死にたいの?」
「ッええ!?」
突如、独り言に応える声がかかりみっともなく狼狽してしまう亮介。
見れば、ほとんど人の寄りつかないこの空き教室に入ってくる女子生徒の姿。
どうってことのない肩ほどの長さの髪といい、これといって特徴のない女の子。
だが、気怠げにこちらを眺めるその斜に傾けた目つきは何か、ここではないどこかを見る・・あるいはなにものも目に入れようとしない突き放した印象を与える。
そして、見てしまった、左手首に幾重にも巻き付けられた包帯。
「(な、なんだ、この娘……!?)」
「……ねぇ。     一緒に、死なない?」


◆◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆





◆数寄屋 亮介・1◆

「……『自殺倶楽部』っていうのがあってね。」
「はあ。」
|枕木 春瑠(まくらぎ・はるる)と名乗った少女は衝撃の告白のあと、勝手に空き教室の真ん中に座る亮介の隣に座り込み、剣呑な話をさらりと切り出した。
「簡単に言えば、自殺のお手伝いをしてくれる互助組織かな。 例えば、ひとりで死ぬのがイヤな人のために、道連れになってくれる人を紹介したり、安楽に死ぬための、ガスとか薬とかを提供してくれる。」
後ろに両手をついて、横座りに脚を投げ出してぼそぼそと話し続ける春瑠。
亮介は、己の悩みを具体化するような内容に、恐れ半分で聞き入ってしまう。
「ただし、自殺を前提とした上で、知り合いの紹介でなければ登録できない、閉じたコミュニティ。それはネットの中にだけ存在するの。……ケイタイ持ってる?」
自分の携帯電話をかざして見せる春瑠。
「うん。持ってる。……でも、どうして俺が自殺したいだなんて知ってるの?」
ぷっ、と息が吹き抜ける音。うつむいた少女は、どうやら笑っているらしい。
「たった今、死にたいって言ってたじゃない。」
「あんな一言だけで?」
矛盾したことだが、逆に自殺をほのめかされたことで冷静になった部分が疑問を告げた。
「たまたま、その、からかわれてる俺を見かけただけじゃないの?」
「見てたよ。」
「え?」
その時、隣に座ってから初めて春瑠が目をこちらに合わせてきた。
斜に傾いた上目遣いで。
「見てたんだから。こないだ、あそこのビルの屋上で、飛び降りようか、降りまいかって足踏みしてた君のこと。」
途端に顔が熱くなる。
「、なんで、それ!?」
「偶然なんだけどね。たまたま斜向かいのビルにいたのわたし。あの時。それで。」
再びうつむいた春瑠は、手元の携帯電話を操作しだした。
「君はわたしが紹介する。別に、登録したらすぐさま、ってわけじゃないから。」
亮介は、携帯電話の赤外線通信機能で受信したURLを取得した。

「……そう。そのサイト。……そこに、この番号を入れて」
案内に従い、入会登録手続きを進める亮介。
隣から春瑠が差し出した携帯電話の画面に表示されている番号を、確認しながら入力してゆく。
肩に触れる感触にまごつきながらも操作を完了させた。
「……うん。これで完了。ようこそ、『自殺倶楽部』へ。」
「……うん。」
若干、キツネにつままれた感じが抜けないが、それでもうなずく亮介。
「これで、わたしと君はパートナーになったから。これからは、最期のその時まで、君とわたしは下の名前で呼び合うの。」
「え?なんで?」
斜に傾けた眼差しのまま、あきれたようにも聞こえる息を漏らす春瑠。
「……一緒に、死んでくれるんでしょ?言わば人生の連れ添いなんだから、当たり前のことだよ。  ……亮介。」
とくん、と鼓動が跳ね上がる。
見た目も華やかさに欠ける自殺志願者に下の名前で呼ばれただけなのになんでと亮介の脳は混乱の渦を描く。
ぼぉ〜、っとした亮介の視界の中で、春瑠が上に向けた片手の指をくいくいと動かした。
「……え?」
「……呼んで。名前。「さん」とか付けずに。」
「あう!? あ、その、……」
人の名前を気安く呼び捨てた経験の少ない亮介にとって、それはなかなか覚悟の要る儀式だった。
「……あ……その……えと」
「。」
なおも目で催促してくる春瑠。
「あの……は、春瑠。」


◆◆

窓も閉め切った薄暗い部屋。
カーテンも完全に閉じられ外界を完全に遮断したその部屋をぼんやりと照らすのは、カラーアクリルの塊が浮かぶ水槽や光ファイバーの束で構成されたオブジェなどイルミネーション・ツリーの灯のみ。
壁や天井にはアニメ調の絵柄のポスターがすき間なく並び、棚にはその絵柄を立体化したような人形が立ち並ぶ。
そして部屋の隅にあるベッドの上で蠢く影があった。
「イイヤツは〜、死んだヤツだけさぁ〜」
仰向けに寝転がって、調子っぱずれたデタラメな節をつけてぶつぶつと呟きながら、節くれ立った人型オブジェを玩んでいる。
それは総合エンタテイメント創造企業『粉微塵』謹製、『玩具とウェブの融合』が売り文句の美少女アクションフィギュア『魔装姫神』。そのシリーズの一体である。
そこに。
デスクの上から耳障りの良いメロディが一節だけ流れ出た。
「お、っ客さん〜」
一度脚をあげてから勢いをつけて起き上がる男。
立ち上がったその身はまるでカマキリのような痩身。
黒縁メガネを押し上げて位置を修正し、デスク前の椅子に腰掛ける。
フィギュアを横に置き、ぼさぼさの前髪をかき上げてからキーボードを操作する。
スリープから復帰したモニターに現れたのは、仰々しい装丁で描かれた『自殺倶楽部』の文字。
続いて開かれたウィンドウに現れた新着データを一瞥して口笛を吹いた。
「おーい舞菜ぁ。来てみろよ。また新しいお客さんだぁ」
「はい。ご主人様。」
開け放した部屋の入り口。
「舞菜」と呼ばれた漆黒のカントリー系の衣装に身を包んだ女が、その闇から歩み出てきた。
呼びつけておいて、特にそれ以上なにを言うでもなく、せかせかとキーボードとマウスを操作する男。
|曲月 七彦(まがつき・ななひこ)。二十歳そこそこの痩せぎすのこの男こそが、自殺互助組織『自殺倶楽部』の設立主であった。


◆◆

「おーい舞菜ぁ。来てみろよ。また新しいお客さんだぁ」
「はい。ご主人様。」
呼びかけに応えて、その人間の背後へ歩み寄る舞菜。
誰も見ていなくとも『憂いを秘めた顔』のまま、その人間の斜め後ろに立つ。
元々コミュニケーション能力に乏しいこの人間から、それ以上特になにを言われるでもなく。
だから舞菜は普通に人間の背後からそのモニターの内容を見やる。
新規の登録者として現れた名は『数寄屋 亮介』。
それを見て、|藍川 舞菜(あいかわ・まいな)と名乗るヒトの姿に擬態したマクロケイラワームは、その口の端をゆっくりと釣り上げた。


◆伊達 新星・1◆

ネオゼクト本部。

「……これだな。『モデル・シケイダ』。ゼクトのライダーシステム『クライプ』。」
「あぁ〜!?これこれ!こんなヤツ!?」
織田の操作するモニターに現れたライダーの画像を見るなり絶叫する新星。
「こいつ無茶苦茶やりやがってよ!ワーム全滅させんのにその周りまでブっ壊しやがって!」
「……おまえにそこまで言わせるってな、確かに只者じゃないな。」
「いやほんと無茶苦茶なんだって!?」
織田の視線の色にも気付かずに繰り返す新星。
「まぁ当人の言うこったからアテにゃなんねえが、バイクも持たされてねえんじゃ、あながちフリーってのも嘘じゃねえかもなコイツ。ゼクトのセキュリティも結構ザルだしよ。ドレイクみてえにどっか持ってかれたんじゃねえか?」
再びノートパソコンを操作して画像を消し、別のものを探し始める。
「ケンカ売ってこねえ限りほっとけ。俺たちの敵はまずワームだ。そんで今回の仕事だけどな。」
そして現れる画像。隠し撮りらしい不自然な構図の真ん中にいる人物。
「……『数寄屋 亮介』?変な字だな」
「例の『自殺ワーム』ネタを元にウチの情報部が拾ってきた自殺未遂及び最近ワームに接触したかもしんねえ人物その1だ。おまえはしばらくこのガキを張れ。」
うなずいて、目標の顔を覚えようと画像に注目したところで、新星はふと既視感に捕らわれた。
「あれ?こいつ、どっかで……」


◆数寄屋 亮介・2◆

ぽけ〜〜〜〜〜……。
まるでそんな書き文字を引き摺るような間抜けな顔のままゆらゆらと歩く亮介。

『言わば人生の連れ添いなんだから、当たり前のことだよ。……亮介』
……亮介 ……亮介 ……りょうすけ……

「(女の子に、名前で呼ばれちったあ〜)」
春瑠と出会ってから数日経つというのに、亮介の頭はその衝撃的かつ甘美な事実に埋め尽くされていた。
「(……でも、死ぬんだよなぁ〜……)」
そして『いずれ自殺する身である』という事実もきっちり脳裏に埋まっている。
その重さにがく〜と肩を落とす。
天下の往来の真ん中で、まるで体操の「前後屈運動」のような亮介の動作に、通行人たちが怪訝な顔で迂回し通り過ぎてゆく。
「(……いやいや!? ナニを妄想ブっ飛ばしてんだ俺!?)」
やおら起き上がって頭をブンブン振る。
「(別に、好きだとかなんとか言われたわけじゃなし!ただ、その、死ぬ時に、一緒に死んでくれるってのは、確かになんかこー、……イイかもなぁ)」
再び歩き出した亮介は、『自殺すること』の意味を脇に置いたまま妄想にふけり続ける。

人気のない遊歩道を歩く亮介。 その亮介の後方から、数体の緑の異形・・ワームの群れが静かに接近していた。


◆伊達 新星・2◆

「あああいつら!?」
物陰から慣れない尾行を続けていた新星の視界に、目標である少年を狙うワームの群れが現れた。
遠目からの観察が任務だったが、こうなっては仕方ない。とまでは新星は考えない。ワーム殲滅のため、はしご状神経並に短絡的にその場から駆け出してゆく。
「うおおおお!?」
ジョウントを抜け飛来したジェイルゼクターをキャッチ。
走りながらゼクターを右手グローブの甲に押し当てる。
「変身!」
叫び、両手を腹まで押し下げてセットアップ。
《ヘンシン!》
ハニカム構造状に展開形成されてゆく装甲。
駆ける新星の姿は仮面ライダー ジェイル・マスクドフォームへと転身する。
だがそこで新星は、再びかざした右手の甲のゼクターに左手をそえた。
走りながら、右手のジェイルゼクターをカキンとわずかに角度を変える。
チャージアップが始まりジェイルのマスクドアーマーが、パージのための準備状態に移行し、パーツ単位で次々とせり上がってゆく。
『キャスト・オフ!』
そして左手はゼクターを握り締めたまま、両手を腰の前まで引き下げた。
その動作につれジェイルゼクターがグローブのセットアップサークルの上で180°回転し(玉虫の頭が前を向く)、電光が全身を駆け抜け、全身のマスクドアーマーが全方位へ弾け飛んだ。
《チェンジ!ジュエルビートル!》
現れたのは、ゼクトの甲虫系ライダーとの共通部位を持ちつつ角の替わりに触覚のようなアンテナを生やし、より大型なアイスグリーンの軽装甲を全身にまとった『仮面ライダー ジェイル・ライダーフォーム』であった。

アーマーパーツに数体が打ちのめされた所でワームの数体がジェイルに気付いて振り返る。
そのワームの群れのその向こう、目標の少年までもが気付いてこちらを振り向こうとする。
その瞬間。
『ち。クロックアップ!』
《クロックアップ!》
ベルト横のスラップスイッチを叩いて加速空間に突入。
新星以外のその場の全ての者の動きが時計の長針よりも緩慢になる。
少年の顔はまだこちらを向いていない。

『まとめて片付けたらああああ!』
一連の動作中、ずっと走っていた新星は、その勢いのまま三度、右手のゼクターに左手をそえた。
カキン、と今度はジェイルゼクターを前方へスライドさせ、右拳の上に完全にかぶせた。まるで巨大な鋼のボクシンググローブだ。
同時にチャージアップが始まりそしてそれと連動してジェイル・ライダーフォームの肩アーマーや背面装甲、ふくらはぎのパーツが展開し、その下から虹色の器官が現れた。
輝きを増した各装甲の下から、虹色の輪が幾重にも後方へ拡がり、やがて彗星のような光芒を吹き出す。
『うおおおライダーチャージ!』
《ライダーチャージ!》
ドン!とジェイルの速度が増す。
今やジェイルは全身に虹色の輝きをまとい、地上を迸る一筋の虹の流星と化した。
《フォースフィールド》を高出力で全身にまとい背面ブースターによる加速を加えた体当たりを敢行する、これが仮面ライダー ジェイルのチャージアップアタック、ライダーチャージである。
もともと広くない遊歩道。その先を行く少年をつけて歩いていたワームの群れは、おあつらえ向きにほぼ一直線で並んでいた。
『でやあああ衝撃のファーストなんたらああああ!』
正面に突き出したゼクターに覆われた右拳でその群れを容赦なく貫通してゆく虹色の流星。
ワームの群れを突き抜けきった所でようやく停止するジェイル。
《クロックオーヴァ。》
ぼん!どどん!
加速状態を抜けた所で次々と緑色の炎を撒き散らして爆発・消滅してゆくワームの群れ。
ジェイルゼクターがワームの殲滅を確認したことで自らグローブから離脱して飛び去ってゆく。

新星が変身を解除したところでようやく少年が振り向いてきた。
「……あ。」
「あ。」
すぐ間近で向かい合うふたり。


◆数寄屋 亮介・3◆

そこにいたのは。
いつの間にか意外なほど間近に立っていたのは、もう一ヶ月ほど前だろうか、街中で暴行を受けていた亮介を救ったかに見せかけて、なお亮介を痛めつけてきた通りすがりの暴力男であった。
「たあすけてえ〜!」
「待てコラ!」
逃げようとしたところで男に襟首を掴まれた。
「な!?なんなんですか!?離してください!あの時、逃げろって言ったからいま逃げようとしてるのに!?」
「いやいいから止まれ!今度は逃げんな!」
「いやだああああ!? 痛いのは痛いから嫌で嫌なものは嫌だから嫌で痛くていやいやいやだああああ!?」
「……てい。」
結局、亮介は暴力男にはたき倒された。

「……。」
「まぁ食えよ。うめぇぞ」
頭頂部にでっかいコブを生やした亮介は、暴力男に引き摺られるように近くの喫茶店に連れてこられていた。
目の前のテーブルに出されたケーキとコーヒーには触れず、しかめっ面であらぬ方を見ていた。
「いや、悪かったって。つーか俺も目の前に出るとは思わなくてよ。そんで逃げられるとさ、捕まえたくなるじゃん?」
「なりません。」
「……だからその、なんだ、まぁワビだよワビ。ケーキ好きだろ?食っとけよ。な?」
「帰っていいですか?」
……しばし無言になるふたり。
「あああもう男らしくねぇなああ!?ヒトがこうして頭下げてワビ入れてんだからドカンとイッパツ気持ち良く許せってんだよゴラアアア!?」
「どの辺が頭下げて謝ってんですかッッ!?」
とうとう立ち上がって怒鳴りだす男に完全にすくみ上がってテーブルの下に避難しつつツっ込みを入れる亮介。
さすがに店内の他の客がこちらを見ているようだったが、男は一顧だにしない。
どすんと椅子に腰を下ろした男は、再び自分のチョコレートパフェをつっつきだす。
「……なんか最近、変なこととかなかったかよ」
「え?」
ようやく椅子の上に復帰した亮介は、素っ頓狂な声をあげてしまう。
「……!?」
またもギョロ目をひん剥いて亮介を睨め付けてくる男。
「いいからまず喰えよ!? 甘いの喰うと元気になんだよ!おまえはまずソレ喰って元気になれ!そんで俺の質問に答えろ!」
「は、はい!?」
反射的に返事をして、あわててフォークを取る亮介。
なんか最近同じようなことがあったなーと考えつつ、やはり切迫した空気でケーキを咀嚼し飲み込んでゆく。

「へぇ。自殺をね。」
「はぁ。すみません。」
「ぁ?俺に謝るこっちゃねぇだろ。てめぇの命だし」
「……はぁ。」
なんだか既視感に見舞われながら生返事をもらす亮介。
「(冷たいよな〜。自殺しかけたヒトのこと心配してくれたっていいのに。)」
胸中でぼやきつつ、すっかり冷めたコーヒーを飲み込む。理不尽と味の両方の苦味に眉をしかめた。
「……まぁその『そっくりさん』とかの心配はすんな。そのうち片付くからよ。おめぇはなン〜にも気にしねぇでメシ喰ってクソに変換して寝てろ。」
またその男の乱暴な物言いが、鬱に傾く亮介の癪に障った。
「……!」
顔を暗くした亮介に気付いたふうもなく、男は伝票を取り上げて立ち上がる。
「じゃあな。……悪かったな」
「え?」
通りすがりに亮介の肩を叩いて去ってゆく男。
不思議なことに毒気が抜けてしまった最後のひとことに、ついレジに向かう男を振り返る亮介。


◆ゼクト・1◆

港湾区のとある廃倉庫群の端にて。

連続する銃撃音の多重奏があちこちで炸裂する。
やがて倉庫の外へ後退してくる黒の防護服をまとった一団。
彼らの構える紡錘形の武器・マシンガンブレードに牽引されるかのように次いで進み出てくる緑色の異形数体。
後退してきた黒の一団は、河を背に陣形を組み直し緑の異形へ向けて一斉射を始める。
『三班、再配置完了!斉射開始!』
『斉射開始!』
そこに、緑の異形の一団の真横から銃撃の雨が降り注いだ。
突然の横からの攻撃にたたらを踏む緑の異形。
『二班、撃ち方やめ!移動!』
『二班、了解!』
後退してきたほうの黒の一団が、緑の異形がひるんだ隙に次のポイントへ移動を開始する。
『三班、二班の移動が完了するまで撃ち方やめ!』
『四班、配置完了!』
『撃て!』
今度は緑の異形たちの背後、倉庫の中からマシンガンの斉射が襲いかかる。
『二班、再配置完了!』
『三班、移動せよ!』
『よし!撃て!』
指揮車と各班長による矢継ぎ早の指示の応答によりワームの群れを誘導してゆくゼクトルーパー隊。
四方からの銃撃の雨にさらされるワームの群れの中にやがて、体色を変化させるものが現れた。
『C-2、脱皮します!』
『銃撃を集中させろ!』
『クロックアップします!』
指揮車の中で警告音が鳴り響く。
ワームのうち一匹が、褐色に膨張した表皮を引き裂き、今まさに成体へと変態しようとしていた。


◆ゼクト・2◆

大気のうねる音しか聞こえない、まるで空の孤島。
真下の道路の喧騒すら届かない地上230メートル以上、五十数階建ての超高層ビルの屋上に二人の人影があった。

屋上外縁の設置器具に腰掛け、赤い奇形のライフルを構えているのは、同じく赤い人影。
それはゼクトの仮面ライダー『ドレイク・ライダーフォーム』と全く同じ形状だが、全身を包む装甲各部が赤系のカラーリングで塗り分けられていた。
その『赤いドレイク』の背後には、背を向けて立つ黄金色のライダー。
甲虫系のデザインの装甲に身を包み、右肩にのみ鋭い衝角を持ち、顔面を三つ又の角で覆われた巨漢のライダーは、腕組みし不動で佇む。

港湾区の廃倉庫でワーム掃討作戦中のゼクトルーパー隊の様子を『赤いドレイク』はライフルのスコープ越しに見ていた。
ここは現場から数キロメートル離れている。地上にいては当然建物に阻まれ直接見ることはできないが、この高所からはその廃倉庫のある地域はおろかその先の東京湾、そしてその湾上に浮かぶメガフロート『クリサリス』まで一望することができる。
もっとも、廃倉庫とそこで活動するゼクトルーパー隊とワームの様子まで識別できるのは、『赤いドレイク』の持つライフルの超高解像度スコープあってのことだが。

ライフルのスコープが捉えた映像は、それを持つ『赤いドレイク』の頭部フォースアイを通じて装着者の視野にダイレクトに展開されている。
その光景の中で、囲まれて集中砲火を受けるワームの群れの中のうち一体の様子が変調したのを始め、次々と数体がその表皮を変色・膨張させ脱皮しようとしていた。
『……ライダースナイプ。』
呟いて、片手で握る銃把は微動だにさせず、ライフルの尾部、ヒッチスロットルを引く。
《ライダースナイプ。》
タキオン粒子変換エネルギーが発揮され、体表面に電光が迸り。
そして『赤いドレイク』は、トリガーを引いた。


◆◆ to be continued.◆◆


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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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