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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.60 ディレイデッド・龍騎・アギト・キバ

◆アギトの世界◆

今この林道一帯は異種族混合の乱戦の様相を呈していた。
『はあっ!』
蜘蛛の意匠を取り込んだ、ファンガイア族における葬送の装束「ウィブの葬衣」を纏った遥が次々とファンガイアを蹴り倒してゆく。
『ーーーーーッ!』
その中に混じっている「アンノウン」とかいう異形の雑魚をもついでに蹴り飛ばす。
ファンガイアとはまた明らかに生態の異なるアンノウンは、魔皇力に寄らずとも打撃だけで倒すことが可能な為それほど脅威ではない。
が、単純にウィブが対応すべき頭数を増やすとにかく厄介な存在だった。
『っったく!翔一はナニしてんのよ!』
遥は、街中に張り巡らせたスパスパイダー三世の『糸』の結界によってファンガイアの出現・・人間を襲う際の魔皇力の戦闘出力を察知できる。それによって、この世界での掟破りのファンガイアの駆逐を行っている。
同様に、翔一も自前の能力でアンノウンの出現を察知できるらしい。
それによって、「人間を襲いに現れたファンガイアから人間を守る為にやって来るアンノウン」を、遥と翔一がそれぞれ察知して現場で合流するというのが、ここのところのパターンであった。
遥としても、ある日突如謎の昏倒で入院している瞳子を看ながらの対応な為に今日の出動が遅れたのだが、だというのに今だに翔一が現れない。
おかげでいつもの倍の数を相手取って立ち回らされる羽目になったのだ。
『はン!上等よ!』
ウィブはベルトポーチからフエッスルを引き抜くと、それをベルトバックルに鎮座するスパスパイダー三世の口元にあてがった。
『ウエイクアーップ!』
吹き鳴らされる覚醒の旋律。
それと同時に辺りに張り巡らせた「糸」を引いて殺到させ、数体のファンガイアとついでにアンノウンをまとめて縛り上げた。
『はああああああ!』
そして膨大な魔皇力を練り上げてその場でターンし、鋭く跳躍して束ねた連中をまとめて蹴り貫いた。
『っぎゃああああああ!』
『ーーーーーーッ!? 』
喚び出された夜の暗闇の中に浮かび上がった蜘蛛の巣型の紋章に激突し、ファンガイアは微細な破片となって砕け散り、アンノウンは頭上の光輪を一際輝かせて爆散した。
周囲の光景が昼のものへ戻り、爆発跡にウィブが着地する。
だが、ファンガイアもアンノウンもまだ残っている。
『ええい!翔一ったら何時になったら来んのよ!? 』
ぼやきつつも残りの連中に向け構えたところで、最もウィブから遠くにいたアンノウンが木立の陰で何者かに殴り倒された。
『翔一!? 遅いわよ……? 』
安堵の混じった遥の声は、殴り倒されたアンノウンを黒い機械の足が踏みつけたのを見て尻すぼみに消え去った。
木立に隠れその全容は見えないが、それがアギトの足ではないことは一目瞭然だった。
『……|GS-11《ジーエスイレヴン》。』
《ミョルニルステイク。レディ。》
そこから女の暗い声と機械の認証が聞こえた途端、アンノウンを踏みつけている右ふくらはぎの側面に設置されているユニットから勢いよく鋼鉄の杭が飛び出しアンノウンを串刺しにした。
苦悶に身を折るアンノウン。その杭の長さからして、恐らく身体を突き抜け地面にまで届いているだろう。
たちまち頭上の光輪を煌めかせて爆発してしまった。
その爆炎を踏み潰して「そいつ」がこちらへと歩み出てきた。
『……な……なに、あいつ……』
ずしゃ、ずしゃと重い足音とサーボモーターのような駆動音を立てて歩くそいつは、まさしく機械の全身鎧といった出で立ちであった。
黒とシルバーのみで構成された身体。唯一巨大な瞳が青く光っている。
それは、まるで翔一の変身する「アギト」をロボットで再現したかのような姿をしており、中に女が入っているとは思えないほどの巨躯であった。
(……いや、)
遥が感じた違和感はそれだけではない。
あれほどの巨体からくる凄まじい圧迫感と存在感に溢れているが、いまいち生気が感じられないのだ。
(……どういうこと? 機械越しだから気配を感じ難いのかしら?)
ウィブを始め、そこにいる全てのファンガイアとアンノウンがその新たな乱入者に警戒して身動きが止まった中で、黒い「そいつ」は立ち止まり再び声を発した。
『……|GX-052《ジークスオーフィフティトゥー》。』
《ケルベロス・カスタム。コード。》
『|2-3-1《トゥー・スリー・ワン》。』
《レディ。》
女声と認証が遣り取りしたのち、そいつの両大腿部の側面に設置されていた機械が自動で展開し、左右の手で引き抜かれたそれぞれのパーツは、二丁の小振りなガトリングガンとなっていた。
だが、その長い遣り取りの間にファンガイアとアンノウンは気を取り直してしまい、近くにいる者から次々と「そいつ」に襲いかかっていった。
まるで熊のような巨体を持つアンノウンが、その巨体に見合う巨大なハンマーを振りかざし、黒い「そいつ」に思い切り叩きつけた。
直撃だ。自分の身体と同じ大きさの鉄の塊を叩きつけられては、あの黒い装甲がいかな高テクノロジーの成果だとしても中の人間はひとたまりもあるまい。
だが、大きく仰け反った黒い「そいつ」は二~三歩後退したのみで簡単に体勢を立て直した。
『……は?』
次々とアンノウンが、ファンガイアが襲いかかるが、黒い「そいつ」は全ての攻撃をモロに喰らい続けた。
身を折り、頭を殴られ、右に、左にと吹き飛ばされるが、黒の「そいつ」はその度にあっさりと体勢を立て直す。
装甲は毛ほども歪まず、衝撃吸収システムがあったとしてもあれほど殴られては中身は原形を留めないはずだ。
遥は若干気の毒そうにその光景を見ていたが、あろうことか黒い「そいつ」はここまでされても両手の凶悪な銃を構える体勢を解いてはいなかった。
『……ファイア。』
暗い呟きと共に無数の弾丸が撒き散らされた。
木々もまとめて木っ端微塵にするの弾丸の雨にさらされたアンノウンは狂ったように身悶えさせやがて片っ端から爆発してしまった。
だが只の銃弾など受け付けないはずのファンガイアまでもがその威力に身体を痙攣させて砕け散ったのを見て遥はその異常に気付いた。
『銀の弾丸かッ!? 』
叫び、横っ飛びに射線から逃れるウィブ。
ファンガイア族はおしなべて銀製の武器に弱い。人間との共存の掟がなかった大昔には、人間族の中のファンガイアと戦う専門家が武器として銀を使用していたという歴史があったほどだ。
そしてそのファンガイア族の術を結集して作られたこの「ウィブの葬衣」も銀に対しての耐性は薄い。あの銀の弾丸の雨霰の前では「ウィブの葬衣」は「ただの鎧」に過ぎないのだ。
まともに喰らい続けては、破壊されてしまうだろう。
「遥っ!」
『翔一!? 』
銃弾の暴虐に曝された一帯から離れた木立で、脇から翔一が駆け寄ってきた。
『遅いわよ!? あんたなにして』
「いいからどっか行け!逃げろ! なんかやべえ!」
駆け寄るなり遥の文句を遮って翔一はウィブの肩を押し遣った。
『は?なに』
「いーから早くッッ!」
珍しい翔一の剣幕に、ウィブは目を白黒させていたが、やがて踵を返して立ち去ろうとしたところでけたたましい銃撃の轟音がぱたりと止んだ。
見れば、林の一部が見事に丸ごとごっそりなぎ倒されて見晴らしが良くなっており、そこには最早ファンガイアもアンノウンも一体たりと残ってはいなかった。
『警視庁「未確認生命体対策班」の芦河 翔一巡査部長ですね。』
「……ちっ」
黒い「そいつ」は、既にこちらに顔を向けていた。
相変わらずその巨躯に似合わぬ暗い女の声で語りかけてくる。
『そして、そちらにいるのが「エクステンド」専門のスィーパー、「ウィブ」あるいは「葬儀屋」と呼ばれている方ですね。』
『……なに?「えくすてんど」って。』
『あのカラフルなアンノウンのことを、われわれはそう呼んでいます。未知の脅威を示す記号「X」と、奴らの表皮に似ている「ステンドグラス」を合わせた造語です』
怪訝に聞き返したウィブの言葉にも律儀に応えながら、黒い「そいつ」はこちらにゆっくりと歩み寄ってきた。
「……ち。俺たちが必死こいて戦ってる時に、悠長に覗き見でもしてたのかよ」
忌々しげに翔一が舌打ちした。
ウィブの名や存在、「葬儀屋」の異名は、戦闘のその場にいなければ知れないことだからだ。
『ええ。それが私の得意技ですから。』
「あ?」
やがて、数歩手前まで辿り着いた黒い「そいつ」は立ち止まった。
翔一や遥の目線がやや上向きになるほどの巨体である。間近に来ることで、その圧迫感はより強力になった。
(……でも、相変わらず生気が感じられない……?)
『はじめまして。私は陸上自衛隊八王子駐屯地所属の、|水城 理沙《みずき・りさ》一等陸尉です。』
遥の怪訝な様子を無視して、そいつは暗い声で自己紹介した。
「ほう。防衛省と来たかよ。」
ウィブはその硬い声に驚いて隣の翔一の横顔を見、再び驚いた。
普段は飄々としているその顔が、激しい怒りに染まりドス黒く歪んでいたのだ。
「ついでに聞かせろよ。なんで自衛隊が「G4」を持っていやがんだ? チップは破壊されたはずだ!」


◆龍騎の世界◆

「……くそっ!」
神鳥 士郎は無人のミラーワールドの街を駆け抜けながら悪罵を吐いた。
振り返って辺りの鏡を見渡す。
いた。
現実世界から、どこぞの店のウインドーの鏡面越しにこちらを覗き見ている少年の姿があった。
「なんなんだよあいつは!? 」
癇癪のままに怒鳴り散らす。
あの少年はもうずっと士郎に付きまとっているのだ。
付きまとうだけでなんら実害はないのだが、ある時、立ち止まって長時間休憩していた時など(現実世界の人間の「睡眠」に相当する)は、休憩に入る前にいたのと同じ場所の鏡の前でじっとこちらを見つめていたのだ。恐らく、士郎が再び動き出す時まで現実世界のそこでじっとしていたのだろう。
それ以来、もう不気味で不気味で仕方がなくなった。
その上、いくらミラーモンスターを差し向けても排除できないのだ。
どうしようもない。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
(まさか、この俺が何かから逃げ回る羽目になるなんて!)
悪罵を繰り返し走り続ける。
「それもこれも!優衣だ!優衣さえいれば、ライダーバトルもとっとと締め上げて、あんなヤツも叩き潰せるのによぉッ!」
だがやがて、唐突に少年の気配が遠退いた。
「……?」
引き離せたかと思い、振り向いて確認すると、遠くの交差点の反射鏡に映る例の少年はなぜか、あらぬ方を眺め遣って立ち止まっていた。
そして、その目線の方へと歩いていってしまう。
やがて、ここ一帯の鏡からあの少年の気配が完全に消失した。
「……あ?」
それでも疑り深く周囲の気配を探るが、また現れる様子もない。
どうやら、あの少年はどこかに行ってしまったようだった。
「……な、なんなんだよいったい……」


「いやっはっはっはっはははのは♪イイ天気だネ清々しいネ最高のボク日和だネまいハニー瞳子?」
「えぇえぇあんたのアタマみたいに底の抜けた青空のいい天気よねあとマイハニー言うな」
両手に動物のパペットを装着し、ブルーグレーのパーティースーツを着てキビキビクネクネと腰を振って歩く糸矢に、後について歩く瞳子は心底げんなりした様子でぞんざいに応えた。
その瞳子は今、弁護士の仕事で着るレディーススーツ姿ではなく、カジュアルな服装を纏っていた。
ある日、突然昏倒してから、弁護士の先輩にして師匠にして、事務所の所長であるところの北尾から長期の休暇を与えられたのだ。
医師の診断は原因不明。次いつ同じ症状が現れるか分からない為、しばらく様子を見る必要がある。
と言われた為である。
もっとも、瞳子は自分の症状の原因を知っているし、二度と同じことは起きないと分かっているのでこの「様子見期間」は無意味なものでしかない。
ちなみに、この「謎の昏倒」は、各世界の瞳子で症状の深さが異なるらしい。記憶にある他の世界の瞳子のほとんどが意識をシャットダウンさせ途絶えている。
その上、なぜか突然自分からライダーバトルに飛び込んだ北尾の事が心配なのに、おかげで北尾の様子を見ることもできない。
もっとも、当の北尾にしてみればライダーバトルに反対を表明している瞳子のことを敬遠しているから好都合なのだろうが。
(ああもう。なにが「休み」よ。ちっとも気が休まりゃしない)
「ところでマイスイート瞳子?ボクと結婚してくれないかい?」
「いくらなんでも脈絡なさ過ぎよッッ!? 」
ほとんど反射的に振り下ろしたハリセンが糸矢の脳天を容赦なく打ち据えた。
あまりの勢いにハリセンが瞳子の手からすっぽ抜け、きりきりと回転しながらあらぬ方へとすっ飛んでゆく。
「……あれ?」
自分の手を見下ろして、不思議そうに呟いた。
いつもに比べて握力がない。どうやら、昏倒のダメージはまだ身体に残っているようだった。
脳天を打たれた勢いのまま下を向いていた糸矢はやおらにこやかな笑顔を跳ね上げ、また正面を振り向いてキビキビクネクネと腰を振って歩き出した。
「でもボク挫けない!なぜなら?お年頃?だからネ! 挫けてるヒマがないのさーぁはははのは~♪おっヨメさぁ~ん!」
途中で一言区切りで奇矯なポーズを挟みながら宣う糸矢は、朗らかに笑いながら歩いていった。
「ああもう!どこから突っ込んだらいいんだか! ちょっと!糸矢さん待って!ハリセンどっかいっちゃった……」
ぼやきながら辺りを見回した瞳子は、離れた公園入り口にとんでもないものを発見してしまった。
そこに立つ少年の顔面に、白く細長い物・・ハリセンが張り付いていたのだ。あまりにも綺麗にヒットしたのだろう。少年は立ったまま微動だにしない。
「……あ……あ……」
やがてハリセンは、少年の顔面からずるずるぽとりと落下していった。
露わになった少年の色白で端整な細面には、残酷なことにハリセンの形に赤い線が穿たれていた。
「……あ、ご、ごめんなさいっ!? 」
少年は、朗らかな笑顔のまま微動だにしないので、もしかしたらその姿勢のまま気絶でもしているのかと心配しながら駆け寄るが、その瞳子の腕を糸矢が後ろから掴んで引き留めた。
「……え?なに?」
「ちょっと待ってマイハニー。」
いつになく真剣な面持ちで前を見据える糸矢の様子に呑まれて身動きを止める。
その見つめる先が、あの少年と分かって瞳子は怪訝な顔になった。
「ちょっと。なに? ほら、わたしが投げちゃったハリセンがあの子にぶつかっちゃって……」
だが、糸矢は厳しい顔のまま、ゆるゆると首を振るのみ。
やがて少年は、屈んで地面に落ちたハリセンを拾い上げると、それを片手で弄くりながら、真っ直ぐに糸矢を見つめた。
「え?な、なに?」
「……あいつは、人間じゃないね」
「へ?」
「しかも、ファンガイアでもない」
唐突な言葉に目を白黒させて少年と糸矢とを見返す。
そこで、少年がゆっくりと口を開くのが見えた。
『……なんだい?お前は。 人間では、ないね?』
少年特有の高い声が糸矢と同じことを言った。
だがその声は、少年の口元から発せられているようにも、どこか遠くから聴こえるようにも感じられる不思議な感覚だった。
『ここは、大切な人間たちが暮らす世界だよ。お前みたいなのは、いちゃいけないんだ。』
「あーー! ファンガイアを差別したーー! いけないんだーー!」
少年の言葉に突如糸矢が指さして絶叫した。
眉をVの字にした糸矢の顔を、瞳子は珍獣でも見るかのように呆けた目で見上げていた。糸矢は滅多に怒らない為、それが激しく激高しているのだとはすぐには分からなかった。
「ボクたちは、人間と仲良しなんだ!ファンガイアを差別すると、親衛隊にすっごく怒られるんだぞ!」
『……おいで。 あいつを殺すんだ』
激しく非難する糸矢を無視して、少年は傍らに手招きするように軽く手を振った、すると少年の横に目映い光が現れ、その中からライオンとヒトを掛け合わせたような存在が姿を現した。
「……なっ!? あ、アンノウン!? 」
「そっちだって人間じゃないじゃん! て言うか、そいつらの仲間!? 仲良くできないなら、ボクもう知らないよ!」
驚愕する瞳子の前に立ちはだかった糸矢が、どこからともなく取り出した機械のベルトを腰に巻き付けて装着し、手刀の形にした右手を上に、そして前にばばっと突き出して構え。
「変身!」
交差させた両手をベルトの両サイドに押し当てた。
《リ・エミュレーション。》
ベルトバックルのインジケーターがレッドから反対端のグリーンまで一気に灯り、それに伴って空中に出現した装甲が次々と糸矢の身体に張り付いていった。
やがてそこに、青の装甲に包まれた仮面ライダー G3ーXが姿を現した。
『うりゃーー!』
いまいち覇気に欠ける気勢を上げたG3ーXと、ライオンの生態相を持つアンノウンが互いに突撃していった。


◆クウガの世界◆

ひかりと瞳子が乗ったパトカーは、無人の高速道路を疾走し、「10」と書かれた旗の脇を迅速に通過した。
「……あのバカ。本気でここより先に行ったのね……!? 」
「……!? 」
瞳子の呟きに、同意するようにひかりも黙したままうなずいた。
「……あの、瞳子さん。ディレイドはどうやって真司君を連れ戻すんでしょう?」
「さあ。なんかミラーワールドだろうが余所の宇宙だろうがどこでも好きに行き来できるらしいから、もうそのまま手掴みで連れて戻ってくると思うんだけど……」
ひかりの問いかけに、首を傾げながら応える。
「「どうやって」かなんて細かいことなんか、わたしには難し過ぎてよく分かんないや」
「ミラーワールドもそうですけど、……なんて言うか、有り得ない、と言うより出鱈目なテクノロジーですよね。その「ディレイド」も。」
科学者の矜持を挫かれたのが腑に落ちないのだろう、ひかりは眉をきつくしかめて言った。
「公に知れたら世界中の科学技術の常識が根本からひっくり返りますよ?」
「そんなの「グロンギ」が現れた時点から大童だったじゃない。あと「四号」も。」
科学技術に疎い瞳子は、胡散臭いものをまとめて追い払うように片手を振った。
「だから、これからもずっと他言無用だよ? 用事が済んだら、透も真司君も元の世界に帰っちゃうんだから。」
「……もう、お別れなんですよね……」
「……!? 」
ひかりの物寂しげな呟きに、瞳子は自身の失念に気付き臍を噛んだ。
(……そうだ、「わたし」はいつでも会えると思って忘れてたけど、「この世界」からはもう、いなくなっちゃうんだ……!? )
そして問題はそれだけではない。
ひかりの物憂げな顔のもうひとつの理由。
かつてこの世界に現れたグロンギから人類を守護し、十号ことディケイドの介入による事件終息と同時に姿を消してしまった「未確認生命体第四号」こと「仮面ライダー クウガ」として戦っていた小野寺 雄介のことを、ひかりは真司を重ねて思い出しているのだ。
何も言わずにいなくなってしまった雄介。恐らく、懇意にしていた当時の班長・八代が亡くなったショックから姿をくらませたのだろうと瞳子とひかりは考えていた。
だから、雄介の方から戻ってくるまでこちらから行方を追うのはやめようと決めていた。
だが、命懸けの戦いを共にくぐり抜けてきた仲間との別れにしこりを残したまま、同様に一緒に戦ってきた真司も元の世界に帰ろうとしている今に際し、ひかりは仲間ときちんとしたお別れをできるかどうかを心配しているのだ。
「……大丈夫だよ。」
「え?」
瞳子の呟きにひかりが横顔を見返した。
「大丈夫。最後に挨拶さすように、透に念力送っといたから。」
「……?」
言っている意味が分からなかったのだろう、きょとんとしたひかりにいたずらっぽく微笑み返し、瞳子は前を向いた。
「……あ! ほら!いた!」
「え? あ!? 」
唐突に前方を指さした瞳子の叫びに反応し、ひかりは慌ててブレーキペダルを踏み込んだ。
急減速した逆Gによって前のめりになりながら、ひかりは高速道路の彼方に三人の人影を見つけていた。

「あんた、話が分かるようになってきたじゃないの」
「なんのことだ?」
広大な高速道路の真ん中で。
パトカーから降りた瞳子が透に歩み寄り上腕をぽんと叩いた。
「んで、そっちの娘はだれ?」
「ああ。この世界におけるミラーワールドを構築する中枢にあたる存在だ。」
透の背後で意識が現世から途切れたかのようにぼぉっとして突っ立っている白痴っぽい少女を指して訪ねる瞳子に、透は素っ気なく応える。
「こいつを元の世界に連れ返すことで、この世界からはミラーワールドが消滅する。これでこの世界の異常は完全に解消するだろう。」
「そっか。 なんか、返すがえすも長かったわ。」
「ところで。」
状況終了の報を聞きなにやら感慨深げに溜め息を吐く瞳子に、透は平坦に問いかけた。
「例の要求だが。一分ほどなら待てるぞ。」
「野暮なこと言ってんじゃないわよ。もうちょっと待ちなさいよ。もうちょっと。」
言って、振り向いた先ではひかりと真司が気まずそうに向かい合っていた。
「えーと、その、柊さんのおかげで状況を打開させることができた。ありがとう。あと、無茶してごめん。」
今さら指示を無視した負い目を感じているのだろう、背を丸めて頭を掻く真司に対し、ひかりは白衣のポケットに両手を突っ込んだまま薄い笑みを浮かべて真司を見つめていた。
そして、やがていつもの簡潔な口調で呟いた。
「好き。」
「ってこのタイミングでッッ!? あと一分ないんスよ!? なにこの無理ゲー、ハナシがまとまる気がしないんスけどッ!? 」
言われた真司が両手で頭を抱えて仰天する様を眺めてひかりはくすくす笑っていた。
「うそ。」
「分かってますよっ!? 」
真司がつっこみ、やがて笑い合うふたり。
「……うん。わたしも真司君にひどいこと言ったから。ごめん。 ……帰ってきてくれて、ほっとした。」
「いや、自分で決めてやったことっスから。」
笑顔で向かい合ったまま、ひかりは片手を差し出した。
真司もその手を握り返す。
「ありがとう。お世話になりました。」
「うん。ありがと。 ……忘れないから。真司君のこと。」
「俺も。」
やがて手を離した真司は、瞳子を振り向いた。
「神楽見さんは、俺の世界にもいるんだよね? なんか、ここでお別れってのもおかしな感じだけど」
「まあね。私は別に、いつでも会えるようなもんだし。 透?」
「うむ。」
呼ばれた透が真司に手招きした。
「こちらへ来い、真司。 そろそろ行くぞ。」
「ああ。分かった」
透の横に駆け寄った真司は、どこかへとふらふらと漂うように歩き出した少女の手首を取って引き戻し立ち並んだ。 優衣は、目を離すとすぐどこかへ行こうとするのだ。
「ではな、瞳子。」
「うん。じゃあね。」
瞳子とひかりが手を振る前で、透が取り出したカレイドブレイドで虚空を横薙ぎに一閃すると、透・真司・少女の三人の姿は一瞬で掻き消えてしまった。
僅かの残滓も残さず、まるで電源が落ちたかのように、唐突に。


警視庁が「ミラーモンスター事件」の終了を宣言するまでは今しばらくの観察期間を置くが。
これで「クウガの世界」を襲った「第二の異常」は完全に消滅した。

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