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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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クリサリス・エマージュ 第5話


数キロメートル離れた港湾区の廃倉庫でワーム掃討作戦中のゼクトルーパー隊の様子をライフルのスコープ越しに見ていた『赤いドレイク』。
『……ライダースナイプ。』
呟いて、片手で握る銃把は微動だにさせず、ライフルの尾部、ヒッチスロットルを引く。
《ライダースナイプ。》
タキオン粒子変換エネルギーが発揮され、体表面に電光が迸り。
そして『赤いドレイク』は、トリガーを引いた。
射出された光弾が、このビルの屋上から現場までの数キロメートルの距離を高速で飛翔し、間近にいたサナギ体数体ごとその脱皮しかけのワームを貫いた。
『赤いドレイク』は神業的な命中になんら感慨も抱かず、ただ冷静に次々と次弾を装填し目標を変更して発射してゆくこと数回。作戦通りに誘導されてきた廃倉庫のワームの群れを残らず一掃してしまった。
『作戦、終了。』
港湾区にいるゼクトルーパー隊指揮車から作戦完了の旨を伝える通信が『赤いドレイク』と黄金のライダーそれぞれに届いた。
『レディックの機能は万全のようですね。』
背を向けたまま立つ黄金のライダーが、その野太い声に似合わぬ流麗な口調で背後の『赤いドレイク』・・仮面ライダー レディックに問い掛けた。
『……問題ない。』
銃を天へ向け、射撃体勢を解き立ち上がる。
『ならば重畳。帰投しましょう。』
空調機材やパイプの類をまたぎながら黄金のライダーに追従するレディック。
その瞬間。
黄金のライダーの拳がレディックの顔面数ミリの所で寸止めされていた。
レディックも、驚愕したふうもなく微動だにしない。
『なぜ避けないのです?レディックの動体視力なら見切れるはず』
『貴様の、黒崎 一誠の、そして黄金のライダー『コーカサス』の噂は知っている。俺の特性も把握している。貴様の手足の届く距離で抵抗は無意味。』
『ZECTは能力と同時に忠誠を求める』
『無用な心配だ。俺は俺の仕事をするだけ。』
レディックはコーカサスの拳を除けるとそのまま歩み去ってゆく。


◆◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆




◆数寄屋 亮介・1◆

澄み切った蒼天の下、ヴィヴィッドトーンのカラフルなレンガに構成されたまるでヨーロッパのような町並みの風景の中を無数の人々が楽しげに往来する。
『アミューズアカシックフィールド』。メガフロート『クリサリス』内に建設された大型アミューズメントパークである。
だが、それほど『大規模』というわけでもなく、対岸の超巨大テーマパークとはあらゆる面で比べるべくもないが、『人工島建設』のニュースに便乗する形でその存在が知れ渡り、人工島住人だけでなく、日本全国から訪れる人がいるなど客足は上々だと各メディアは報じている。
そんな『有名スポット』に、なんだかまるっきり場違いな顔をして数寄屋 亮介はやってきた。
「……なんで俺、こんなトコに……?」


◆明智 智晴・1◆

『アミューズアカシックフィールド』の敷地の外れにある管理事務施設の玄関に、白いスーツの男・明智 智晴が数名の部下を伴って現れた。
このアミューズメントパークを管理・運営している会社もまた明智グループであるが、管轄外からの突然の要請にもよらず智晴はあえて予定を変更してまでやってきたのだ。
通された会議室。
だが着席も待たずに智晴のもとまでやって来た黒スーツの男は、そのまま智晴に耳打ちした。
「……そうですか。わかりました。……害虫め」
「園内のお客は?」
舌打ちしてうめく智晴に、重ねて訊ねる黒スーツ。
「そのままでいいでしょう。気取られないように調査を続けてください。」


◆数寄屋 亮介・2◆

数日前のこと・・。

「ねぇ亮介。『AA』行こう。」
「『AA』?なにそれ」
春瑠から唐突に知らない単語で話しかけられ面食らう亮介。
「『アミューズアカシックフィールド』のこと。長いから略して『AA』。知らない?みんなそう言ってる。『クリサリス』のニュースでさんざん出たじゃない。」
「いや、そこは知ってるけど。略称なんて初めて聞いた。」

そしてさらに唐突に日時を指定されて待ち合わせに至った。
そもそも根本的にインドア派な亮介は休日に出掛けるところと言えば一ヶ月間隔でやってくる発売日に玩具・ホビーショップへプラモデルを物色しに行くくらいで、いわゆる『有名デートスポット』になどは間違っても足を運ぶことなどなかった。
だから言われた直後は気乗りしなかったのだが、他でもない『パートナーである』春瑠からの誘い、すなわち『それはデートじゃないか!?』という浮かれた脳内翻訳によって発起した亮介の気持ちの半分以上はこの状況を『楽しみ』にしていた。

だが、『アミューズアカシックフィールド』入り口付近で陰に隠れるようにして春瑠を待つ亮介は今、若干の後悔を感じていた。
「(うわあ。やっぱなんかみんな着てる服の種類がちがうよぉ〜!?)」
辺りを行き交う『若者たち』のファッションを見、そして自分の『やっすい無地のインナーにデニムの上着』という出で立ちを見下ろしてため息をつく。
なにしろ今までは趣味の世界に没頭していればそれで良く、見た目にはまったく無頓着だった亮介だ。
それでも手持ちの中で一番『それなり』なものを選んではみたが、これでは。
「(……帰ろうかな。)」
待ち合わせ時刻から三分経過。
さすがにいたたまれなくなって逃げ腰になった亮介の肩をその時誰かが叩いた。
「ひぇ!?」
「はぁい。」

「遅くなってごめん。……てほどでもないかな」
背後から現れた春瑠は、なんだかカラフルな格好をしていた。
ベルトバックルを模した飾りが各所についた黒のベストにショートパンツ。そしてそこから伸びる細長い腕脚はヴァイオレットとオレンジのボーダー柄に彩られた袖とタイツに覆われ、まるで真上から潰したかのように意匠化されたシルクハットのような帽子をかぶり。
学校ではまるで倉庫の最奥に転がっている壊れたほうきのような印象のあった枕木 春瑠は今、斜に傾けた顔に薄く化粧を施し明るく溌剌とした『女の子』に変貌してそこに立っていた。
「……なにボケっとしてんの?」
「……ぇあ!?」
つい上から下までじつくり見蕩れていた亮介は呼びかけられてようやく我に返った。
「あぁいやその!?……ハロウィンみたいだねなんか。」
とりあえず率直なところを言ってみる。
「でしょ。ハロウィンのデザインモチーフが好きなんだ。」
見ればブレスやストラップ、至る所にぶら下がる飾りはことごとくコウモリやカボチャの意匠である。
「へぇ。」
素直に感心した亮介は、改めて己の服装を見下ろして、そのままのポーズで肩を落とした。
「……どうしたの?亮介。」
「いや……地味でごめん。」
「好きで着てるんじゃないの?」
「いやぁ。こういうのよく分かんなくて。」
より一層しょげる亮介の腕が突然横からカラフルな腕に取られ引っ張られた。
「なら、一緒に服見て回ろ?見立ててあげるから。」
「ええ!?」
そのまま園内のショッピングモールのほうへ引き摺られていった。


◆明智 智晴・2◆

『アミューズアカシックフィールド』敷地全域に設置されている監視カメラの映像を一望できる管理施設のモニタールームで智晴は椅子に深く腰掛け仏頂面でモニター群を睨みつけていた。
そこへ黒スーツの男がファイルを携えてやってくる。
「失礼します。これを」
「……。」
受け取ったファイルを開くと、いくつかの人物写真とその詳細情報が書き込まれた書類。
「ネオゼクトが最近注目している人物たちです。」
「ほう。」
「そしてこれ。この少年が今、ここのショッピングモールにいると。」
指し示された1枚の写真に映っているのは、小柄な少年。
それを確認した智晴は管理オペレータに指示をかける。
「三番から八番までのモニターをショッピングモールに。六ヶ所等間隔に空けて映像を出して下さい。」
「はい」
オペレーターの操作により次々とモニターの画が変わってゆく。
「既に追跡させています。先の報告では……あそこ。三番の場所にいました。」
「……、五番、ズームさせてください!」
突然の指示に、画面の中身が拡大されてゆく。
映し出されたのは、確かに写真にあった少年の顔。
ひどく地味な格好のその少年は、対照的にカラフルな少女を伴っていたが。
「あの少年を尾けている者の存在は?」
「いまは確認されていません。」
「引き続き尾行者の存在にも気を配って下さい。……『数寄屋 亮介』君、ですか。……なるほど。確かに今が旬の獲物ですね。」
その『数寄屋 亮介』なる少年の調書に目を通した智晴は、皮肉げに口の端を吊り上げた。


◆伊達 新星・1◆

「うりゃあっ!?」
新星の渾身の一撃がパンチ力測定ゲーム機を木っ端微塵にした。


◆伊達 新星・2◆

『アミューズアカシックフィールド』園内を全開で走り回る新星と、それを追う従業員と警備員多数。


◆伊達 新星・3◆

「……クソッタレが!あんなヤワいパンチゲーム作るほうが悪いじゃねぇか!?パンチゲームにパンチしてなんで追っかけらんなきゃなんねんだ!?」
怒り狂った従業員(途中から警備員も混じったが)に追い立てられ、ようやくそれらを撒いて施設の裏手に隠れ潜んだ新星は、苛立ちのままぼやき吐き棄てる。
「……しっかもああクソ!あのガキ見失うしよお!? どーすっかな〜」
腰掛けた鉄骨の束の上で脚を組み替える。
開園されてだいぶ経つというのに、今の時点で建設中の店があるらしい。すぐ近くでガンガン、ジジジと騒音を立てている。
「チッ。うるせぇな。……あああまた織田サンに怒られちまう」
騒音で今後の行動の見当もつかず苛立ちを募らせる新星。
その時、新星の身体が座ったまま浮き上がった。
「おわ!?」
危うい所でバランスを取り戻す。
どうも、腰掛けていた鉄骨ごと浮き上がったようだった。
「なんだなんだ!?」
あわてて周囲を確認した新星は、そこに恐るべき状況を目撃した。


◆台場 和馬・1◆

「〜♪」
『アミューズアカシックフィールド』のショッピングモールの新規開店の店舗の建築現場でバイトをしている和馬は、軽く鼻歌など奏でつつ、指定の鉄骨を取り持ち上げた。
重機もナシに重い建材を持ち運ぶ和馬の能力は、ここでも重宝されていた。
「おわ!?なんだなんだ!?」
「ぬ?」
その時、後方上部から何者かの声が聞こえ和馬は振り向いた。
「むう?」
だが、そこはまた別の店の裏口であり、そこに積んである鉄骨と建材の他には何者の姿もない。
「コラァ!テメェ!こっちだこっち!」
再び背後から声がする。
今度は間違いなく自分に向けられたセリフに、和馬は改めて振り向いた。
「ぬむう。」
だがしかし。そこにもやはり何者の姿もない。
強いて言えば、進行方向の先にある自分の工事現場にいる作業員だろうか?まだだいぶ離れているが。
「ふむ。面妖な。」
「うるせぇコラ!失礼なこと言うんじゃねえ!面妖なのはテメェだろうが!」
ゴンゴンと肩に担ぐ鉄骨から小突く振動が伝わってきた。
「いや俺も信じらんねぇけどテメェが担いでる鉄骨の上だ!」
「……おお。貴様、いつの間に?」
首だけを巡らせた和馬の視界に、確かに自分が担いでいる鉄骨の上に座っていた男が罵声をがなりたてていた。
「どこら辺までアレなんだテメェ!? 最初っからここに居た、っつうか座ってる俺ごと持ち上げてなんで気付かねえんだよ!?」
「うむ。そこにいると危ないぞ。早く降りることだ。」
「言われんでもそーするわい!いいか、動くんじゃねぇぞ!?」
その男はそれでも慎重に飛び降りた。


◆伊達 新星・4◆

「言われんでもそーするわい!いいか、動くんじゃねぇぞ!?」
腰掛けた鉄骨ごとグルグルと振り回された新星は、若干半泣きになりながら慎重に大男の担ぐ鉄骨から飛び降りた。
驚くべきことに、鉄骨から新星の体重が離脱した瞬間も、大男の担ぐ鉄骨はたいした反動も揺れも起こさなかった。
その涼しげな顔にも微塵の変化もない。
「……!?」
地面に立つことで、その大男の体格のデカさがよりはっきりと認識された。
なにしろ数歩離れて立つ新星の目の高さにまでその鉄骨が伸びているのだ。
新星とて背の高い部類だが、それを肩に担いでいる大男の背丈たるや、まさに驚異である。
「……?」
その大男を見上げた角度に、新星は既視感を覚えていた。だが、その原因が思い出せない。
「ふむ。今後気を付けることだ。」
「いや、それ俺のセリフ……」
言い置いて歩み去ってゆく大男のその『普通の』歩調に、新星の買い言葉もつい尻すぼみになる。
「……人間か?ありゃ。 ……まぁいいや、あのガキ探さねぇと。」
毒気を抜かれた新星は、目的を思い出してその場から走り去っていった。


◆数寄屋 亮介・3◆

「はい亮介。」
「あ、うん。ありがと」
確保して座っていたテーブルで、二人分のジュースを持ってきた春瑠からひとつのカップを受け取る亮介。
「結構、探せばあるものなんだね。」
「亮介は今まで服を見なさ過ぎだったんだよ。」
「ていうか、面倒臭かったんだよ。ずっと母さん任せだったから」
ショッピングモールの中のメンズ・カジュアルショップを引き摺られるようにシラミ潰しし、春瑠の質問によって服の好みを誘導され、あれもこれもと試着を繰り返すこと半日かけて数十回。
亮介も、まさか自分に似合う「カジュアルな服」があるなどと心底驚愕したものだった。
「でも、結局買いもしないのに、あんなに店散らかして良かったのかな。」
そんな亮介のぼやきに、春瑠の心底あきれたような顔が応えた。
「なに言ってるの?サイズなんか着なきゃ分かんないし、そのために試着室があるんだし、今度亮介が服買う時にはまたここに来ればいいじゃない。」
当然、そんな服一式を今すぐ買えるほどの持ち合わせのなかった亮介だ。
だから今は元の服装のままだが、いずれ買える好みの服の存在を知れたおかげで、最初の頃の気後れはすっかりナリをひそめていた。
「そうだね。」
ちょっとした達成感に納得し、亮介はストローをくわえて中身をすすり込んだ。
『……アミューズアカシックフィールドへ御来園の皆様に御案内いたします。プラネタリウム『アカシックアレンジャー』は、本日中止させていただきます。あらかじめ御了承下さい。詳しくは、係員のほうまで……』
突然の園内放送に、春瑠はふとくわえていたストローを口から離し、あらぬ方を見上げた。
「……プラネタリウム、中止なんだ。見たかったのに。」
「さっきもゲームセンターですごい音がしてたよね。あれっきり一時立ち入り禁止になったり。大丈夫なのかなここ。」


◆明智 智晴・3◆

「お客の誘導は?」
「完了しています。」
「アクトルーパーの配置は?」
「一班が移動中。間も無く完了します。」
「私がプラネタリウムへ入ったら、ドアは全て完全封鎖し、予定の配置を保ってください。宜しくお願いしますよ。」
「了解しました。」
従業員通路をせかせかと歩いてきた智晴は、そう言い置くと黒スーツを残し、ひとり、『アカシックアレンジャー』と書かれたドアの向こうへ進み、後ろ手に扉を閉ざした。

ガシャアアン……と鉄扉の閉鎖する音が反響する暗闇の空間。
広大な半球状のこの設備こそがプラネタリウム『アカシックアレンジャー』である。
本来なら、上映される内容に合わせて座席やスクリーンまでもが大きく移動する仕掛けなのだが、それらの機能は全て停止されている。その原因となった輩を排除するために。
「『ワームホイホイ』とはまだいきませんが、お前たちワームを殲滅するために、誘導し隔離する仕掛けの実験場でもあるんです。この『アミューズアカシックフィールド』は!」
ばっ、と前方に左腕を突き出す智晴。
その左前腕に装着された『マホークガントレット』に向けて、ジョウントを抜け飛来するオオスカシバ型のゼクター『マホークゼクター』。
滑り込むように装着されたゼクターの勢いを、前腕を引き下げて殺す智晴。
「変身。」
《ヘンシン!》
音声が認証を告げ、そのポーズのままアームガードから全身へハニカム構造状に展開形成される装甲。
まるで垂直尾翼が二枚並んだかのように盛り上がる背面装甲。両肩に装着されたラウンドシールド(円形の盾)。ハンマーヘッドシャークのように左右に張り出した部位を持つ頭部。全体をグリーンで彩られた奇形の鎧。
仮面ライダー マホーク・マスクドフォーム』がそこに顕現した。
『お互い、暗闇だろうと頓着しない身の上でしょう?隠れてないで出てきなさい!』
そう叫んだマホークが、突如真横に吹き飛んだ。

何者の姿も見えないのに横殴りに吹き飛ばされたマホーク・マスクドフォーム。
『(クロックアップ!?もう既に脱皮しているヤツがいる!?)』
二度、三度。
次々と別角度へ衝撃を加えられるマホーク・マスクドフォーム。
『……もとより自分の店の中でマイザーをバラ撒くつもりはありませんよ。ウチの社員が、路頭に迷うじゃないですか。』
叩き伏せられたところから立ち上がり、智晴は拳を天に向け肘を曲げた左腕のマホークゼクターに手を伸ばし、その翅の端をつまんだ。
『キャスト・オフ!』
叫びと同時、その巨大な翅を、まるで扇子を広げるように180°展開した。
連動して両翅を広げたそれは、まるで透明なラウンドシールドとなる。
《キャストオフ!》
電光が全身を這い回り、次々とパーツ単位でせり上がったマスクドアーマーが細かく分割し四方へ弾け飛んだ。
あとに現れたのは、全身を獣毛で覆われた体躯。
ゼクトのザビーに酷似しつつ口元に口吻のような突起を持ち、全体の装甲のカラーリングをブルーグリーンで統一しているが、両肩のショルダープレート及び腕脚側面に設置されている装甲板は水晶のように透明で下のスーツの地が見え、背中にまるで悪魔のような形状の、しかしこれもまた水晶のように透明な翼を生やした異形。マスクドアーマーの背中の突起は、この翼を保護していたのか。
《チェンジ・ホーク・モス!》
これが、『仮面ライダー マホーク・ライダーフォーム』の姿である。
『クロックアップ!』
《クロックアップ!》
ベルトのトレーススイッチを操作して加速空間に突入する。
辺りの静寂は『無音』に変化し。
そしてすぐそこにワーム成体が姿を現した。
ホタルの生物相を持つランピリスワームである。
そのすり潰した葉のような緑色の身体が、ぼんやりとした光を放ちはじめた。

智晴の思考トリガーによって、背中の透明な翼の基部にある棒状部品が回転し両肩上に飛び出した。
それを左右の手それぞれで握り、翼ごと取り外し眼前にかざした。
マホークの専用格闘装備『マホークトマホーク』である。
『はあああああ!』
その悪魔の翼のような形状の透明の斧を、むしろ剣のように振りかざして突撃するマホーク。
一撃、二撃。
停止していれば光の屈折率の変化で見えようが、高速で動作してはまともに見えないはずの透明の戦斧を、ランピリスワームは見切り、右腕の球状の部位から発生する力場で反発、受け流して見せた。
体勢の崩れたマホークに対し、ランピリスワームはその球状の右腕を振り上げ、攻勢に転じようとした。
だが。
『クリスタルディバイン作動!』
《クリスタルディバイン!》
音声が認証した瞬間。
両肩の透明なショルダープレート及び体側面の透明な装甲板、両手に握るマホークトマホークとそして透明な円形の盾を成すマホークゼクターの翅が電光を放ち、だがやがて光を失ったそれらの部品の下に透けて見えていたマホークの身体が溶けるように消失し、背後の風景を映し出した。
『!?』
狼狽するランピリスワーム。
たとえ透明でも、先ほどまでは屈折率が発生して境界線くらいは見えていたはずの透明部品が『完全な透明』になり、まったく視認できなくなってしまった。
それどころか、それらの部品の下にあったはずのマホークの身体までもが見えなくなり、今のマホークはまるで身体の所々が抉られ欠落したかのような有り様になっていた。

振り下ろしていたマホークトマホークを下から上に振り上げる。
その途上で、マホークの身体の上を、トマホークの形をした『穴』が通過したかのように背後の風景を映し出していった。
これが仮面ライダー マホーク・ライダーフォームの妙技、完全迷彩『クリスタルディバイン』。
これは装甲板を通過する光を偏光させ透明化させるのみならず、体表面を覆う獣毛のような特殊素材『スマートスキン』が熱や臭い、タキオン粒子を含めたあらゆるエネルギーを吸収し、それらを併せてワームの感覚器官全てからマホークを『見えない』状態にしてしまう『完全な』迷彩装置である。
現に、光学器官のほか、熱源探知やタキオン粒子にも干渉できるはずのワーム成体が、まるで『穴だらけ』になったように見えるマホークを見て戸惑っている。
反撃のつもりで振り下ろしたワームの右腕は、そのため狙いを外し空振りに終わった。


◆ワーム・1◆

改めて体勢を立て直したマホークは、両腕を交差させ、左右のマホークトマホークを上下に構えた。
その巨大な刃が『クリスタルディバイン』の及ばない部位までを覆い隠し、マホークの姿を一部も残さず隠蔽してしまった。
『……視えないでしょう?ここで私が口を閉ざせば、完全なる無音の刃となる。』
そして沈黙。
『……!?』
ランピリスワームは今までマホークが立っていた場所目掛けて走り寄り、その右腕の球状を振り下ろした。
だが、手応えは皆無。
『……!?』
あわてて辺りを見回すも、ライダーの姿も、熱源も、タキオン粒子エネルギーも感知できない。
『ライダー・カムシン。』
突然、ここから離れた場所からそんな人間の呟きが聞こえた。
振り向けばそこは、この半球状のドームの反対側の奥。
まだ脱皮もしていないワーム・サナギ体の群れが十数体いたはずの所である。
薄暗いこの場では光学による目視では判別できない。
だが、熱源やエネルギーによる感覚で『視た』ワーム・サナギ体の群れが、先の呟きのあと次々と両断され絶命させられていったのが見えた。
『……!?』
異様な状況に混乱するランピリスワーム。
だが、その混乱も、その身を脳天から唐竹割りに分割されたことで自覚なく終結してしまった。


◆明智 智晴・4◆

《クロックオーヴァ。》
どん!ぼぼん!
加速空間を抜け、姿を現したマホークの背後のはるか遠くで、順番に切り裂いたワームの死体が全てほぼ同時に緑色の炎を撒き散らして爆発していった。

『カムシン』とは、局地風のひとつで3〜5月にかけてサハラ砂漠からエジプトに吹く熱風のこと。もっとも、ワームを凪いだ風の跡には砂はおろか塵ひとつ残りはしないが。

ワームの殲滅を確認したマホークゼクターが、自ら離脱し飛び去ってゆく。
変身を解除した智晴は、携帯電話を取り出して操作し耳に当て歩き出した。
「終わりました。跡を洗浄し、施設の機能を全てチェックして営業再開時刻を報告してください。」
カシッ、とスナップを利かせて携帯電話を折り畳む智晴。
「……私は『王』にして『城』にして『兵』。いかなる侵略も許しはしない。」


『ライダーカムシン』。
チャージアップされたエネルギーを偏光フィールド生成に充て、『クリスタルディバイン』の及ばない部位まで含め完全に透明化してしまう。
わずかな残りを破壊エネルギーに充てることになるため、その分攻撃力が他のライダーのチャージアップアタックよりはるかに劣るが構わない。
避けられない敵を前に、じっくりと急所を狙い、確実に全力の攻撃を当てることができるからだ。


◆数寄屋 亮介・4◆

『アミューズアカシックフィールド』のショッピングモールは4〜5階層の建築物ではあるが、普通の四角いビルと違い、まるでモン・サン・ミッシェルを彷彿とさせる、各階層が複雑に組み合った山型の多層構造体を成している。
一階からでも空が見える場所があり、上階の外縁部に出れば、まるで山岳観光地の展望台のような形になっている。
辺りを茜色に染めている夕陽が沈みかかる様すら見えるこの場所で、亮介は春瑠と手摺りに並んで遠くを眺めていた。
「ありがと。一緒に来てくれて。……プラネタリウムは見れなかったけど。」
「いやあ。俺も、なんか服とか選ぶ参考になったし。」
なんだか風が心地よい。
こんなふうに風を感じることがあまりなかった亮介は、今日の出来事は全てが新鮮だった。
以前、飛び降り自殺をしようとしたビルの屋上の風の冷たさも、だから今は思い出せない。
ふと、隣に立つ春瑠の横顔を見る。
斜に傾けた皮肉げな眼差しなどは、化粧で緩和されているとはいえ面相が変わるわけではないのだが、今のそこには、なんだか学校で見かけるのとは違う穏やかさが感じられた。
「(……この娘は、なんで自殺なんかしようと考えたんだろう……)」
自殺倶楽部の規則により、事情は聞かない決まりなので訊いていない。
だが今の亮介はこの状況に安堵を覚え、春瑠に穏やかさを感じている。
一緒にいてくれる人がいることの、なんと暖かなことだろう。
この状況がずっと続けばいいのにと、亮介は夕焼けを眺めながらそんな夢想に浸っていた。
だから、それがつい口をついて出てしまった。
「……ねえ。良かったらさ。このまま、自殺なんかやめて、ずっと一緒にいない?」


   「勘違いしないで」


「…………………………え?」

「自殺する気がないんなら、『君』になんか用はないから。」

「……………………どうして……」

「……説明しないと、わかんないかな? やり残したことをするために、今日はここに来たの。明日死ぬわけじゃないけど、明日死にたくなるかもしれないから。」

まるで冷たいガラス玉のようなその春瑠の斜の双眸を、亮介はただ見返すことしかできなかった。


◆◆ to be continued.◆◆


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