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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.64 遊びは終わりだ

◆ブレイドの世界◆

「はあっ。 はあっ。」
少女がひとり、森の中を必死に走っていた。
だが突如、周囲の地面に火花が散り木々が弾けて枝葉が大量に落ちてきたことで足を止めてしまった。
「はあっ。 ……はあっ」
荒い息を繰り返し、少女・相川 初は苦しげな表情で後ろを振り向いた。
『いぎゃーーっはっはっはあ! どうしたどうしたあ!? もう追いかけっこはおしまいか? 構わねえぜ?もっと逃げてみろよ!逃げられるモンならなあ!』
神経を逆撫でする嘲笑を撒き散らして、横線で構成された装甲を纏う人型の異形、ディシェッドがアサルトライフルのような形状のディシェッドライバーを振りかざして木立の陰から悠々と現れた。

瞳子がある日突然昏倒してしまい、やむを得ず単独で外出しようと思ったのがいけなかった。
突如、三度姿を現したディシェッドが初に襲いかかってきたのだ。
いや。むしろ瞳子を巻き込まずに済んで良かった。瞳子がいたなら、きっと初を守ろうとするだろう。
そして瞳子ではディシェッドに太刀打ちできない。簡単に殺されてしまう。
今の初には、そんな誰かを犠牲にして逃げることはもうできそうにない。
(瞳子おねえちゃんの異常を察知して、ディレイドがここに来てくれれば……!? )
一度一方的な負けを喫したが、なお蘇ってみせたディレイドは唯一ディシェッドに対抗可能な存在。
そのディレイドの救援の可能性に賭けて初は逃げ続けていた。

ディシェッドに向き直った初は、目つきを鋭く意識を集中させ、現在の姿「ヒューマンアンデッド」としての本性を解放した。
今の姿は生活に馴染む為に己の能力を制限した、言うなれば「ヒューマンアンデッドの人間態」。
瞬時にカーディガンとブラウスとスカートが溶け崩れて簡素な白のワンピースのような衣装に変移し、厳しい初の表情が緩み完全な無表情になった。
これがヒューマンアンデッドの本来の姿。
そして腰にはカリスラウザーをバックルに据えたベルトを巻いていた。
『は! いっぺんジョーカーの姿で負けてんのに今さらただのアンデッドが役に立つかよ!』
嘲りを吐いたディシェッドはベルトの側面から複雑な紋を描かれたケースを取り出すと、ディシェッドライバーのマガジンスロットに下から差し込んだ。
《アサルトカメンライドゥ・スラッシュ!》
くぐもった声で認証を告げたアサルトライフルを構えたディシェッドはセレクタをマニュアルに捻りトリガーを引いた。
二度の重い炸裂音と同時に暗い銃口から仮面ライダー ブレイドと仮面ライダー サソードが飛び出し、各々武器を構えて飛翔する勢いのまま初に斬りかかった。
対する初も、同時に自らの武器を召還していた。
初の目の前に現れる一本の青銅色の棒。
その棒は左右に三対の突起を生やしていた。
それは日本の古代より伝えられる「七支刀」に非常に良く似ている。
これがヒューマンアンデッド自身の武器、セブンソード。
初は、滞空するセブンソードに手をかざすと、触れもせずに掌と腕の動きだけで操り自身の周囲を旋回させると弾丸の速度で飛来したブレイドとサソードの斬撃を打ち払った。
『いぎゃーっはっはっはあ!そういや今の片っぽはお前の仲間だったな!襲われた気分はどうだ!? 』
『…………』
黒い悪魔の嘲笑を無視して初は宙を旋回するセブンソードに命じて剣を七本の小剣に分離させた。
『つれなくすんなよ。今すぐ悲鳴をあげさせてやるからよ!』
若干不機嫌な声で叫んだディシェッドはセレクタをフルオートに捻ると改めて銃口を突きつけた。
『アンデッドってなぁいいよなあ!殺しても死なねえし死体も消えねえ!ブチ込み甲斐があるぜえええええ!!』
そして銃口から仮面ライダー 一号、二号、V3を始めとする、徒手空拳でありながら切れ味鋭いチョップを必殺技に持つ者や、武器に刃物や斬撃を持つありとあらゆる仮面ライダーが次々と射出されてきた。
『いぎゃーーははははははははは!!』
マガジンスロットの上のイジェクターからは色を失ったブランクカードが噴水のように吹き出てゆく。
『……!? 』
初は七本の小剣で次々と飛来する仮面ライダーの斬撃の弾丸を打ち返した。
一発の仮面ライダーに対し一本の短剣をぶつけて相殺し、弾かれる端から呼び戻し次々と小剣を前に出して迎撃してゆく。
『いぎゃーははははは!健気に頑張るじゃねえか!ちなみにこのマガジンの最後にゃちょいとデカい弾が入っててな!? 』
ディシェッドと初を繋ぐ無数の仮面ライダーの射線の一番最後に、巨大な影が現れて初に迫った。
『!? 』
すぐさま反応した初は小剣を集めて円形に配置して身構える。
仮面ライダーの列の一番最後に現れたのは、身の丈三メートルを越える巨大な仮面ライダー。
捻くれた悪魔の角を生やしたそいつは仮面ライダー アーク。
そいつが巨大な槍を腰溜めに構えながら滑るように迫り、一気に槍を振り上げた。
斬撃が地面を抉りながら初に襲いかかる。
『あ……』
甲高い衝撃の音と爆発が轟いた。
『いぎゃーっはっはっはっは!的が小せえから真っ二つになるより先に叩き潰れちまったかな!? いぎゃーっはっはっはっは!』
撃ち終えたディシェッドライバーの銃口を天に向け、哄笑を上げるディシェッド。
やがて爆煙と土埃の晴れたそこに、何者の姿も残ってないことに気付くと不機嫌に口をつぐんだ。
『…………おい。つまんねえ目眩まししてんじゃねえよ』
グリップ近くのイジェクトレバーを引くと装填されていたマガジンが吹き飛ばされ、ディシェッドはベルトから別のマガジンを取り出すとそれをスロットに叩き込んだ。
《アサルトカメンライドゥ・スナイプ!》
『そろそろ終いだ』
そしてディシェッドは弾丸を解放した。

『…………!? 』
巨大な仮面ライダーの斬撃に合わせて爆発を引き起こした初は、衝撃を相殺して凌ぎきると同時にあの場から離脱する為の目眩ましとした。
『…………』
少女の姿をしていてもアンデッド。本領を発揮した今は息を切らすこともなくかなりの距離を走破した。
かつてのバトルファイトでヒューマンアンデッドが勝ち残ったのは伊達ではない。体躯のサイズ差やパワーで大きなハンデを背負いながらも勝ち残れたのは、ひとえにヒューマンアンデッドの知性の高さに因る所が大きい。
これでディシェッドは初を見失い、まだしばらくの時間を稼げるだろう。
そう思っていた初の身体は突然背中に受けた衝撃につんのめって転倒した。
『!? 』
地面を転がりながら後方を確認するが、何者の姿もない。
背に受けた衝撃の角度から僅かに上を見上げた初は、ディシェッドの能力がヒューマンアンデッドの想像を遙かに越えていたことを思い知り臍を噛んだ。
この森林公園の上空に、こちらに武器を突きつけ捕捉している仮面ライダー ドレイクを始め、次々と地上から舞い上がった、銃器を武器とする仮面ライダーたちが続々とその銃口を地上の初に突きつけてきたのだ。
『……!? 』
逃げなきゃ。
初の身体は衝撃にふらつきながらも立ち上がり、地を蹴った。
だが、上空から解き放たれたありとあらゆる大量の弾丸がその小さな身体に殺到するほうが遙かに早かった。

巨大な爆発が巻き起こった場所へ、ディシェッドが雑草を踏み分けてやって来た。
『……つまんねえ手間喰わせんじゃねえよ』
そして、地面で昏倒している初の片腕を無造作に掴み上げた。


◆アギトの世界◆

この辺の警察関係者御用達の理容店から、警官の制服をぱりっと着こなした厳めしい顔の大柄な男が出てきた。
歩道に歩み出るなりそこに通りかかった若い女性が残らず振り返り、反対側の歩道にいる女性ですらわざわざこちらを眺め遣って狼狽えては嬌声を上げる者もいた。
それ程に男からは一種圧倒的な魅力が満ち溢れていたのだ。
「……計算外だったわ……」
その男の後ろから、頭を抱えた女性警官・・八代 瞳子警部補が懊悩しながら続いて出てきた。
「おい八代。なんか道行く女という女がみんな俺のこと睨み付けるぞ。俺なんか悪いことしたか? ……はっ!? それともお前、おっちゃんに妙なこと吹き込んで変な髪型にしてねえだろうな!? 」
慌てて男・・翔一は己の頭、特に後頭部を念入りに手探りした。
あれほど放埓に伸ばしまくっていた無精ヒゲと長髪を、たった今ばっさりと落としてきっちり整えられたところだった。
「あんた、自分に向けられる好意には鈍いのね。 それとも日頃の行いが悪いことの裏返しかしら。」
やたらびくびくしている翔一の様子を見て八代は頬に手を当てて溜め息を吐いた。
「まあとにかく、しゃきっとなさい翔一!あんた、昇格辞令をもらいに行くんだから、そんな変な頭にするワケないでしょ!? 」
「お、おお。」
この度、芦河 翔一巡査部長は昇進し、芦河 翔一警部補となる。
未確認生命体対策班の活動の成果を認められ、また、これからのアンノウン対策に大きな期待を込められての昇格である。
「……ってのは建前でよ。実際は昇格ってエサやるからこれからも化け物と戦ってね?っていう上からの押し付けだよな。」
「あとその捻じ曲がった性格を直せってことよ」
カラカラと笑って皮肉る翔一の横に並んで八代が補足した。
「「アギト化患者」がアンノウン対策に有用であることをこれからも証明し続けないと、あんたもギルス部隊も面倒なことになるわ。」
「あーあーわかってら」
それこそ面倒そうな仕草で片手を振る翔一。その動作だけを見れば、身なりを整える前の翔一のままである。
「……まったく。」
わざとらしく呆れるが、翔一がいざとなったらやる時はやる男だと八代も知っている。
しかめっ面を苦笑顔に変えて先を歩く翔一を追いかけた。
「おっと。」
「ひゃ!? 」
ところがいきなり翔一が立ち止まった為に背中にぶつかりそうになった。
「なに?どうしたの翔一?」
「いや。 どうした?お嬢ちゃん」
曲がり角のすぐそこの路上に、十代半ばにも満たない少女がひとり、腰を抜かしたように後ろ手を付いて座り込んでいたのだ。
カーディガンにブラウス、スカートを纏った、なんの変哲もない少女だ。だが翔一の呼びかけに反応を示さない。
その少女の前に屈み込んだ翔一は、その時少女の異様な状態にようやく気付いた。
少女は、目を見開き恐怖に慄いてがたがたと震えていたのだ。
「……!?  おい、どうした。 しっかりしろ」
この年頃の少女が遭う正気を失う程の被害についていくつかの心当たりを思い出しながら翔一は極力気持ちを抑え気味に、できるだけ平静に問いかけた。
「翔一。代わって」
「ああ。」
背後から肩を叩いた八代にうなずいて立ち上がり、場所を交代する。
場合によっては女性警官の方が対処に適していることもある。
「お嬢ちゃん。どうしたの?なにかあったのかしら」
八代が至極柔らかい調子で語りかけるが、やはり少女は震えるばかりで反応を示さなかった。
だが構わず八代は少女の顔を見つめたまま背中に回した右手を、握り拳から親指と小指だけ立てて軽く振って見せた。
その「専門部署に連絡しろ」のサインを見た翔一は、さりげなく携帯電話を取り出した。
「わたしたちは警察よ? もう大丈夫だから。一緒に、安全なところに行こう?ね?」
「…………さい 」
「ん?」
八代の説得の最中、なにか聞こえた気がして翔一は携帯電話をいじる手を止めて少女を覗き込んだ。
「え?どうしたの?なにか思い出した?」
「……さい、……んなさい、ごめんなさいごめんなさい!」
「え?」
「あ?」
呆気に取られる二人の前で、少女は取り憑かれたかのように繰り返し絶叫し出した。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ」
「ちょっと!? しっかりして!? 」
「こいつぁやべえな!? 」
しゃがむ八代と立つ翔一のどちらともつかない角度を見上げた少女はがたがたと震えながら尋常でない反応を見せ始めた。
八代が少女の肩を抱いて必死に宥めるが、どういう訳か八代の腕力でも抑えきれないほどに少女は取り乱している。
「ちっ、待ってろよ今すぐ……」
言いながら、翔一は手早く携帯電話を操作した。

ざうっ。

少女の見上げる先、翔一の背後のビル群の隙間という隙間から黒い「何か」が蠢く津波が吹き出して街を人を何もかもを一瞬の内に飲み込んだ。
その黒い「何か」は瞬く間に全世界を覆い尽くしてしまった。


◆◆

モノリスが役目を終えたジョーカーと無数のダークローチを回収したことで、地球上に生きて動くものは何もなくなった。
モノリスの次の役目は、次なるバトルファイトの為に、争うに足る生命体の新たな発生を待つこと。
それまでは永劫ともつかぬ永い眠りに就くのだ。
そうして活動を停止しようとしたその時。
モノリスの表面にひびが発生し、瞬く間に全体を覆い尽くすと中心に向かって収束し、吸い込まれるように渦を描いて消えてしまった。
それと入れ替わるようにして、渦の中心点から人影がひとつ、地上に舞い降り着地した。
そいつの足が地についた途端、そこを中心に世界から色彩が褪せて消えてゆく。
やがて世界は、白と黒の二色のみとなった。
間のグレートーンは一切存在しない。陽の光も意味を失い、世界の全ては「白」と「黒」の二階調のみで覆われたのだ。
立ち上がった人影は、この世界をゆったりと睥睨した。
そいつは白と黒の縦線のみで構成された人型に見えた。 身体の表面に白線と黒線が描かれているわけではない。肘を曲げても、脚を動かしても、白と黒の縦ストライプがそいつの輪郭を境に人型を成すのだ。
ただし、頭部には特徴があった。
「目」にあたる部分だけ、ゴーグルのように「∞」のような形状に白く抜かれているのだ。この「目」の部分だけは、そいつがどちらを向こうと黒線が避けて通った。
もしも縁ある者がその姿を見たなら、「ディケイド」を連想したであろう。ディケイドを白と黒のみで表現したらこうなるだろう、と。
そいつはやがて一方を見据えると、そちらへと歩き出した。
この世界は「音」の概念を失った。足音も何の物音も立ちはしない。
辺りは無数のダークローチによる津波に押し潰され瓦礫の荒野と化している。
その中に、唯一色彩を保っているものがあった。
白と黒の二階調の瓦礫に埋まっていた、仮面ライダー アギトの身体だった。
それは既に事切れており動くこともなかったが、そいつは頓着せずに屈み込むと、アギトの額に手をかざした。
すると、アギトの額の触れられた所から色彩が失われてゆく。
元から黒色の場所は濃淡の階調を失い、やがてアギトの身体は白と黒のみとなった。
だがそいつはまだ手を離さない。
色彩を一切失ったアギトの身体が、そいつの手に吸い込まれ始めたのだ。
掌に消失点があるかのように頭から収縮しながら手の中にするすると吸い込まれてゆくアギトの身体は、たいしてかからずに全てを飲み込まれ消えてしまった。
支えを失った瓦礫が無音で僅かに崩れ落ちた。
己の成すことを終えたそいつは、屈んでいた姿勢を立て直すとあっさりとその場から消え去っていった。
最後の観測者を失った途端、世界は見るもののない「無」となり果てた。


「アギトの世界」は完全に消滅した。










『システム・ディケイド』のデータリンクに記載されたそいつの名は、「ディヴォイド」。
ルインドライブモジュール・ディヴォイド。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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