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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.66 彼岸と此岸を別つ釘

◆響鬼の世界◆

山中の峡谷を望む崖にやって来たディレイドは、覗き込んだ谷底に異なる時間流を察知し、取り出したカレイドブレイドの刀身の溝に描かれているカブトのライダーズクレストに指先で触れた。
《カブト!》
認証の音声と共に、刀身にはめ込まれているディレイフォンのディスプレイにもカブトのマークが表示された。
続いてベルトを掴んで振り払い回転させると、同期して回転した胸郭のカードの欠片が、ベルトの正面に左右に寸詰まりになったカブトゼクターが停止したのに合わせて胸の中央に「カブト・ハイパーフォーム」の絵柄をそろえた。
《カレイドカメンライドゥ・ハイパー!》
これにより仮面ライダー カブト・ハイパーフォームの特性を得たディレイド・カレイドフォームは、ノーモーションでクロックアップを発動し加速空間に突入すると谷底へ飛び降りていった。

峡谷の底では、ザ斬鬼によって呼び寄せられた大量のワーム・サナギ体を各務 新の変身する仮面ライダー ガタック、台場 和馬の変身する仮面ライダー クライプの三人がかりで薙ぎ倒していた。
ザ斬鬼は、斬鬼に擬態したワームで、その能力はボスクラス。
そのザ斬鬼が、呼び寄せたワームどもに「羽化」を禁じている為に一方的にクロックアップできるガタックらの掃討作業は容易なものだったが、稀にボスの命令を無視して脱皮するものが多数現れだした。
そいつらは、ただのワームではない。この世界に蠢く脅威「魔化魍」に擬態したワームは、異なる特性を得たせいかボスの命令を受け付けなくなっていたのだ。
だから今、漆黒のウカワームであるザ斬鬼と、キャストオフしてライダーフォームとなったガタックとクライプは加速空間で動き回るワーム・成体と魔化魍のデュアルビーイングに対抗していた。
『くそっ!? 「マカモー」に混ざられたら倒せないじゃないか!』
『ふん、もう泣き言か?若造』
ガタックの悲鳴をザ斬鬼が嘲笑う。
だが音撃道の鬼に擬態したとはいえ変身具も音撃武器も持たぬザ斬鬼も条件は同じであり、襲い来るデュアルビーイングを殴り倒すことはできても滅ぼすには至らない。
『となると、ここはわたしの出番だな。』
ずずいと進み出てきたクライプの得意げな物言いに、ガタックは慌てて回れ右して駆け出した。
『ほう。なかなか良い逃げ足だな各務。』
『うるせえばかー! 「破壊音波」なんか仲間のいるところでブチかますんじゃねえー!』
クライプのチャージアップアタック「ライダーソニック」は特有の波形の音波を撒き散らして分子間の結合すら破壊する見境のない攻撃。
現状唯一、相手がなんであろうと一切合切構わずに無に帰す必殺兵器なのだ。
『だが場所を考えろ。ここは谷底だぞ。またいつぞやのように生き埋めになるつもりか?』
そうは言いながらも同様に遠くへ避難したザ斬鬼がクライプに忠告する。
ディレイドが介入した時も、それで危機に陥ったのだ。
『うむ。だから、早く崖の上まで待避するがいい。 む。ちょっと待て。』
迫るワーム成体と魔化魍のデュアルビーイングにも構わず掌を差し出したクライプは、しばしあらぬ方を見上げた。
『おーい! 台場さん何やってんだー!? 混ぜモンがそっち行ったぞー!? 』
『お前たち。伏せろ。』
ガタックの警告も無視してクライプはそう言うなり やおら屈み込んだ。
『は?』
怪訝に聞き返すガタック聴覚にその時クライプのさらに向こうから音声が聞こえてきたのに気付いた。
《ファイナルアタックライドゥ・カレイド!》
そして突然この谷底に現れた謎のマスクドライダーが、胸郭の模様とベルトを高速回転させながら駆け込んできて、続く跳び蹴りで全てのデュアルビーイングも無数のワームも一切合切纏めて吹き飛ばしていった。
なお、クライプに呼びかける為に口元に両掌を立てた体勢で立っていたガタックも、すぐ脇をかすめたその威力にちょっとだけ肩口を引っかけられて吹き飛んだ。

「……まさか、カードのコレクションの為に異世界を廻ってきたんじゃないだろうな」
『うむ。四人目だ。』
聞き慣れた文句を言う新に素っ気なく告げ、ディレイドは変身を解除し人間の姿になった三人に向き直った。
『ともあれ、これからお前たちを元の世界に帰す。この世界に侵入したワームと共にな。』
「俺もか?」
『お前もだ。』
ザ斬鬼の問いにもディレイドは淀みなく応えた。
「そうか。……俺はワームの世界の住人だものな」
どこか物悲しげに呟いて顔を伏せるザ斬鬼に、新も複雑な顔になった。
新としても、これまでの戦いの中で最早否定できない信頼関係を覚えていたのだ。 個人的にザ斬鬼の記憶の故郷であるこの世界に残せないのか、頭を抱えて考え込んだ。
「おい。お前が悩むことがあるか。用は済んだんだ。宇宙の安定の為に、とっとと帰らねばならんのだぞ。」
「でも!」
呆気なく思考を見透かされた新がザ斬鬼を振り向いた。
「でも、あんたの住み慣れた世界はここなんだろ!?  なあ透、どうにかなんないのかよ!? 」
『ならん。』
ディレイドの返事はにべもない。
「余計なことを抜かすな青二才が。この世界に残ったところで、本物の斬鬼がいる以上この俺に居場所などない。どっちの世界に行っても同じことだ。 それにお前。自分の使命を忘れちゃいないだろうな」
泣きそうな顔で立ち尽くす新に、ザ斬鬼は厳しい調子で続けた。
本来はワームであるはずの自分の事まで気にかける、この優しい若者の成長と未来の為に。
「お前は、仮面ライダーなんだろう? いずれはこの俺を倒さねばならない。 そんなザマで世界を守れるかッ!」
「……!? 」
一喝を受け、悄然とうなだれる新から目を外し、ザ斬鬼はディレイドに向き直った。
「透、やってくれ。」
『うむ。状況は切迫している。 行くぞ』
行うと、ディレイドの背からドット柄のノイズが翼のように吹き出し、剣を一振りすると四人の姿はこの世界から消え去った。


◆カブトの世界◆

おでん屋「天堂屋」に程近い神社の境内に立つ天堂 総司と台場 和馬の目の前に突如輝きが現れると、その跡には三人の人影が立っていた。
「ほら。帰ってきただろう?」
「……だから、こういう異常事態をほいほい予見するな。」
現れたディレイドらを指さして宣う台場に、総司は額を押さえてがっくりとうなだれた。
「あれ? 台場さんの分身がいねえ!? 」
「うむ。本体がここにいるのだ。ディレイドがこの宇宙領域に入った時点で消失したわ。」
後ろを振り向いて喫驚している新に、台場が己の胸を突いて注釈を告げた。
「それから新。こちらのお嬢さんも入院している。未だに意識が戻らん。」
「なんだって!? おい!? 」
それを聞いた新が慌てて横のディレイドに呼びかけた。
「どうなってんだよ!? お前の手伝いなんだろ!? 大丈夫なのかよ!? 」
『ただひどく消耗しているだけだ。安静に休養させればいずれ回復する。』
新の剣幕にも構わず、素っ気なく告げるとディレイドは僅かに歩き全員から距離を取った。
『総司。これからこの世界に侵入したイマジンを全て元の世界に連れ戻す。それで全ての異常は消滅する。』
それから総司に向けて説明を続ける。
『悪いが、時間線に突入したら、そのまま美穂らはアリアライナーごと元の世界に連れ戻す。別れの挨拶の時間もないが、なにか伝えることはあるか?』
「……なんか人が変わったみたいに気を遣うようになったな」
むしろ透の人格変貌に呆然として呟く総司。
「いや。世話になったと伝えてくれ。 その前に、そこのそいつは誰だ?異世界に行ったのは各務と台場の二人だけだろう?」
その総司の言葉に、ザ斬鬼は鷹揚に腕組みしたまま身動きひとつしなかったが、新だけが挙動不審になり露骨に狼狽えていた。
『元・この世界の住人だ。そしてこの世界の中の問題でもある。』
ディレイドが連れ帰った見知らぬ第三者、というだけで総司には既に見当がついていた。
「……まあいい。こっちはあとで詳しく訊いておく。透は行ってくれ。」
『分かった。 ではな。世話になった。』
言って、再び背中からドット柄のノイズの翼を吹き出したディレイドは、剣の一振りと共に姿を消した。
気持ち悪そうな顔の総司のリアクションにも一切構わずに。
「……何があったんだあの男は……」
「俺も不思議でさ。」
総司の呻きに新が同意してきた。
そしてやおら顔を見合わせると、同時にザ斬鬼の方に顔を向けた。
「さて。きっちり説明してもらおうか。」
「……お、おう。」


◆電王の世界◆

虹色の空の下に広がる岩と砂ばかりの荒野を、一本の列車が自ら線路を敷設・撤去しながら走り抜けていた。
水色の流線型のフロントノーズがさながら流水を思わせる時の列車「アリアライナー」。
「カブトの世界」に侵入したイマジンの対処に当たっていたアリアライナーの面々は、突如運転席に現れたディレイドの操作によって、いま列車ごと元の世界に帰還しているところだった。
「いやー、クロックアップしたイマジンて、厄介って言うかひどいって言うか、ひどいねー。」
「ひどいんだ。」
ソファに寝転がって朗らかに苦労を謳う美穂に、対面に座る秋乃が半眼でうなずいた。
『もーイヤよあんなの相手にすんの!なにあの速さ。反則よ!』
同様にレイラもテーブルに突っ伏してぼやいている。
「まあ確かに、天堂がいなかったら私たちだけじゃまずいことになってたわね。」
「総司くん格好良かったよね~♪」
口元に手を遣り呟いた秋乃の前で、美穂がテーブルに載せた顔を潰れた饅頭のように弛緩させた。
「なに暢気なこと言ってんの。ほとんど丸投げにしておいて。」
ワームが擬態したイマジンは、契約による時間遡航を可能にしながら過去の世界でもクロックアップは健在だった。
なので美穂らも有事の際にはオーナーの特別権限によって天堂 総司を同行させ、アーリアとカブトのコンビネーションで事件を解決していたのだ。
だが、当然クロックアップを持たぬアーリアではワームとイマジンのデュアルビーイングには対処できず、追い詰める作戦のほとんどをカブトが行っていたのだ。
「タキオン粒子変換エネルギーがイマジンにも効果があって良かった、といったところだわね。今回は。」
奥の豪奢な専用ソファに腰掛けた美女・オーナーが気だるげかつ妖艶に呟き付け足した。
「だのに、ねえディレイド? お別れの挨拶もできないだなんて、あんまりじゃない?」
天井を振り仰いで宣ったオーナーの言葉に、車内通信でディレイドが応えてきた。
『先ほども言った。状況は切迫している。』
「イイ男はぁ。もっと余裕を持って振る舞うべきよお?」
『先ほども言った。状況は切迫している。』
戯れの冗句に全く同じ言葉を返され、オーナーは不機嫌に唇をへの字に歪めた。
「あー!あっちの瞳子にも挨拶もしてないじゃん。」
「まあ、昏睡状態のままで、私らが出発する時にうまく目覚めてくれたかも分からないけど。」
跳ね起きた美穂が、秋乃の言葉で再びへなへなと沈没していった。
「あ~。そーだよね~。 ……ねえ透くん。うちらの世界の瞳子は元気かな?」
また跳ね起きて問うた言葉に、車内通信が応えた。
『いいや。俺の内部の接続ステータスでしか判断できないが、未だにブラックアウトしている。すなわち昏倒している。』
「……ちょっと、透くん。なにそれ。どういうこと?」
ディレイドの発言に、秋乃が突然立ち上がって問いかけた。
「確か、瞳子は全部で十の世界に存在してて、全部があんたの手伝いをしてるって言ったわよね!? 」
『ああ。』
秋乃の言葉には怒気がこもっている。よくない兆候だ。
それなのに透の応えは実に平淡で、秋乃に油を注いでいる。
「もしかして、よその世界の瞳子も実は全員倒れてんじゃないでしょうね!? 」
『その通りだ。ただし、昏倒の深度は各個体によって異なる。』
「あんたいったい何やらかしたのよっ!? 」
どかんと床を踏みつけて秋乃がとうとう怒鳴りつけた。
『ある世界で最大出力が必要な事件があった。その為に全ての瞳子の中の緊急プログラムをフルドライブさせた。だが、命に別状はない。俺としても瞳子を死なせないことを最低限度に設定している。』
「当たり前よっ!? 」
どすんとソファに腰を落とす秋乃に、対面の美穂はテーブルの端にしがみついて怯えていた。
透と瞳子の間になにがあって今に至るのかは良くは知らないが、瞳子は透を信頼しているようだし、透が瞳子のことを一方的に道具扱いしているとも思えない。その位は信じたかった。
ともあれ、怒った秋乃は怖いので、美穂は話題の転換を試みた。
「あー。ねえねえ?そしたらさ、初ちゃんは元気かな? 透くん、初ちゃんがどうなってるか知らない?」
努めて朗らかに問いかけた。
みんなの可愛い妹分だった初の現状でも聞けば、それはそれは和むに違いない。
そう思ってわくわくしながら返事を待っているのだが、なぜかスピーカーからは声がしない。
「……透くん? 今の聞いてた?」
『ああ。聞こえていたぞ。』
「初ちゃんはどう?いま元気かな。」
『……。』

聞こえた。
今度ははっきりと沈黙が聞こえた。

「…………」
秋乃が、怒りと困惑に満ち溢れたどす黒い形相で前方を睨み据えた。
「…………」
美穂が、わなわなと唇を震わせながら、身を起こし、今にも泣きそうな青い顔で進行方向をゆっくりと振り向いた。
『…………』
レイラが、全くの無表情でテーブルから身を起こした。
オーナーの顔からも表情が消え失せた。
「……ディレイド。状況が切迫していると言ったな」
ソファに寝そべって片肘を突いている状態のままだが、かつての事件でも聞いたことがない程の静謐な怒りに満ちた、低い声音でオーナーが問いかけた。
「それは、どう切迫している?」
『宇宙がひとつ消滅した。』
もう充分だった。
「初の現状が言えない状態であること」、「宇宙がひとつ消滅したこと」この二つを掛け合わせれば、出てくる答えはひとつしかない。
秋乃が、美穂が、レイラが立ち上がり前方車両へのドアにけたたましく殺到した。
数台の車両を越えコックピットルームのスライドドアが自動で開くのも待たずに押し開けると、トータルコントローラーであるマシンアリアードに跨るディレイドの左右にそれぞれが詰め寄った。
「透くん!どういうこと!? 」
「ねえ!? うそだよねえ!? ねえ!うそだよねえっ!」
美穂がディレイドの腕に掴みかかり、アリアライナーの進路が小刻みに蛇行した。
「ねえ!? 透くん!? うそなんでしょお!? 」
涙でぐしゃぐしゃになった美穂の訴えにも、ディレイドは黙したままディスプレイを見つめている。
「……誰よ。」
泣き崩れる美穂とは対照的にぎらぎらとした怒りを立ち上らせて秋乃が声を絞り出した。
「どこのどいつよ!? 誰がいったいそんなことをしたのよ!? 言いなさい!」
烈火のごとき形相で詰問するも、やはりディレイドは応えなかった。
「あんた、ただの人間と思ってナメてんの!? 敵わなくても暴力に訴えたくなる時だってあんのよ!? 言え!言いなさい! ……言え、言って、よぉ……」
同様に片腕を取って要求する秋乃の声から、顔から力が抜け落ち、やがて嗚咽に変わっていった。
「失礼致します。」
いつの間にか、コックピットルームの入り口にメイドが、竹中が沈鬱に面を伏せ、両手と踵を揃えて立っていた。
「美穂さま。秋乃さま。運転の妨げになり大変危険です。どうか、食堂車にお戻りください。」
「あ……」
「たけなか、さん……」
ディレイドの左右に崩折れる秋乃が、美穂がそれぞれ竹中を見遣った。
「もう、お気付きかと思われますが。 以前はあれほど感情に乏しかった透さまが、情報を選別して黙秘しています。それは、透さまにおいては相当なお気遣いかと思われますが、いかがでしょう?」
「……あ……」
まるで冷や水を被せられたような心地だった。
さながらコンピュータのような融通の利かない透であったが、今は不器用ながらも伏せるべき情報だけを選んで伏せてくれていたのだと竹中の言葉で気付かされた。
「……とおる、くん」
『99%の確率でディシェッドだ。』
横顔を見つめる美穂に、ディレイドが唐突に語り出した。
『かつて初をこの世界に連れ込んだ張本人で、元の世界に帰還した初をもう一度連れ出したのだろう。 ディシェッドは、俺やディケイドと同種の存在で、俺でなければ対抗することができない。』
そのマスクは相変わらず前だけを見つめていたが、なぜだろう、美穂は、ディレイドの語る言葉にかつてよりも感情がこもっていると感じた。怒りによる静謐な激情を。
『俺の使命は宇宙の接触崩壊を回避させることだ。だが、その使命とは関係なく俺はディシェッドを破壊する。理不尽な攻撃を以て完膚なきまでに破壊する。』
「……透くん……」
もはや美穂も秋乃も、床に崩折れ泣き暮れている。
運転の妨げにならないと判断したのだろう。入り口に控えている竹中も、これ以上なにも言わずに立っている。
それからアリアライナーは、幾度か警笛を鳴らしつつも、それ以降は静かに航行していった。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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