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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.70 ディレイデッド・瞳子

◆ライダー大戦の世界◆

満身創痍のディレイドと、システムの一部に組み込まれていたらしき少女の姿が掻き消えてからしばし。
頭部のみの変身解除・・フェイスオフ状態となったマスター響鬼を始め、他のマスターライダー達も次々と変身を解除した。
各々輝きに包まれ、あるいは装甲を溶け崩れさせて姿を現した男たちはそれぞれ浮かべた表情の形こそ異なるが、皆一様に瞳に仄暗い陰を湛えていた。
「ははっ。ヒビキさんさ、変身解除しないの?」
「んん?なに?俺のフルヌードが見たいの?」
「戯れ言を抜かすな」
指さして笑うマスター龍騎とマスター響鬼の掛け合いを不機嫌に遮り、濡れ髪の下から鋭い目線を投げかけるマスターカブトがすたすたと歩み出た。
「ディレイドに逃げられた。かなりのダメージを与えたが、完全破壊には至っていない。どうするつもりだ。」
「まあ問題ないでしょ。」
睨め上げるマスターカブトを鷹揚に見下ろして朗らかに告げる。
「あとはディケイドを破壊すればディレイドはもう動けない。」
「お前等が足を引っ張らなければ、状況開始から半分の時間で破壊できた。なにか言うことはないのか?」
「おつかれさん。」
マスター響鬼の食えない返答にマスターカブトは舌打ちし顔を逸らした。
『みっなさぁ~ん♪ 大変大変!たいへんなのよぉ~♪』
そこに、掌よりも小さな白いコウモリのモンスターが嬌声を上げながら飛来してきた。
「おお~キバーラちゃん。ご機嫌いかが?」
『んん~絶好調よぉむぎゅ』
明るい調子でそのコウモリの名を呼びかけたマスター響鬼に、応えようとした途上でいきなり身体ごと握り締められキバーラは息を詰まらせた。
『ちょ、ちょっとお!? なにするの!? 』
「いや~。さすがは最も貪欲な世界だよねえ「キバの世界」は? ちょろちょろ動き回って、領地拡大の下調べ?」
『な、なんのことかしら?』
朗らかな笑顔のマスター響鬼の拳の中で身悶えし空々しくとぼける。
「んん~? なんか、面白いオモチャ拾ったファンガイアがうろちょろお散歩してるみたいじゃん? 第四階層の融合係数で一番高いのが「キバの世界」でさあ。そりゃどうせ「空き地」になるかもしんないけどさあ。なんつーか、こう、品がねえっつーか。」
『んむぐ、わ、ワタシはただ、マスターキバ様の御命令に従ってるだけで、そこら辺はなんともコメントできないしぃ』
「ま。いいけどさ。」
ぽい、とキバーラを放り出したマスター響鬼はキバーラが飛来してきた方角へと歩き出した。
「それよりキバーラちゃん。報告報告。ディケイドもイイ感じに下拵えが進んだ?」
『……ハナシする前に握り絞めたクセに……』
「ん?」
『な、なんでもないわ!? 』
暢気に振り返ったマスター響鬼に慌てて翼を振り、当初の目的に戻った。
『その通りよ。ディケイドの処理が確定したから、集まって欲しいって。』
「んじゃ、ぱっぱと行こう。俺たちも、下層にあんまり長居してらんないしさ。」



◆ 瞳子の世界 ◆

……はっ。

広大な更地の状態の開発地区を挟んだ、遠く向こうのビル街を埋め尽くす九つの世界のモンスターの群の山が、まるで動画の一時停止のように固まった光景の前で再び、瞳子は我に返った。
一度目は、事の発端、町中にモンスターが溢れて逃げ惑い、瞳子ひとりでこの場所に辿り着いた時に、初めて透に会った時。
その時透は、「この世界の瞳子に会うのはこれが最後だ」と言っていた。
だが、当然のことながらこの瞳子も「九つの世界の瞳子たち」と記憶を共有している。
事の次第は全て体験したも同然に把握していた。
だからあの時、マスターライダーたちの総攻撃の後ディレイドがどうなったのか、それがいま頭の中を占めていた。
「……透!? 透っ!? 」
無意識に、瞳子はディレイドの姿を求めて辺りを見回して叫んだ。
「透っ!? いるんでしょ!? ねえ!? とおるっ!? 」
この煉瓦敷きの遊歩道のような拓けた場所には、人影どころかベンチひとつない。
この場所の見晴らしの良さが返ってうらめしい。何か物陰があったなら、多少の希望でも持てたかもしれないのに。
ぱっと見てすぐに動くもののない全包囲を確認してしまい、瞳子はうなだれた。
だが、すぐに自分の違和感に気付いた。
崩壊を免れる為に停止させられているこの世界の中で、自分だけが動ける理由はひとつだけだ。
瞳子は即座にそちらの方向を振り向いた。
数メートル先に、突如ドット柄のノイズが発生し、その中から黄色い人影が現れたのだ。
「、透……!? 」
瞳子は息を飲んだ。
片足を引きずり、非常にアンバランスに傾いた体勢で辛うじてのそり、のそりと歩行しているディレイドは、有り体に言ってまるで死体のようだった。
両脚は歩行できているのが不思議なほど、折れ曲がり、角度を変え、捻れている。挙げ句片方の大腿部には貫かれた穴が空いているのだ。
脇腹も大きく抉れており、その上の胸郭の真ん中にも穴が穿たれて向こう側が見えている。
肩アーマーは左右とも脱落しており、両腕は脚同様に滅茶苦茶に捻くれ、特に苛烈な衝突を繰り返した部位である両手は指のほとんどが有り得ない方向に曲がっていた。
そして半分失った頭部の断面から黒い靄を煙のように漏らしながら、ディレイドはよたよたと瞳子に近づいてきた。
『……瞳子、 瞳子……』
「……と、とおる……」
そして全身をくまなく走る無数の斬撃の傷跡と穿たれた弾痕からも靄が漏れ出ており、いかに人間とは違う身体といえど、生きて動いているのが不思議な有り様だった。
『……とう、こ……』
とうとうディレイドが前のめりに転倒した。
「とおるっ!? 」
一瞬感じた恐怖を振って捨て、瞳子はディレイドに駆け寄り屈み込むと慌ててその上体を抱き起こした。
「透っ!? 透、しっかりして!? 」
『瞳子……』
片方しかない青いセンサーがどこを捉えているのかがいまいち良く分からないが、頼りなく首が揺れているのはつまり、周囲の光景もまともに認識できていないのではないだろうか。
「透!? いるよ!? 私、ここにいるよ!? 」
『瞳子。すまなかった。』
なのに、この有り様になってもディレイドからは謝罪の言葉が出てきた。
「謝らないでよ!? 透は何も悪くないでしょ!? 」
『……すまなかった。お前を巻き込んだのは、最初は確率に基づく判断のみだったが、お前のアドバンテージは非常に有用で、……いや、頼りになった。 なのに、使命を果たせず挙げ句世界ごと消滅させてしまった。 すまない』
「違うよ!? 悪いのはディシェッドでしょう!? 透は頑張ったじゃない!? 」
あの唐変木の透が苦渋の思いで謝罪を口にするという変化にも、今は喜ぶこともできない。
いや、透が謝ることはないのに、そうさせるこの状況に理不尽を、怒りを覚え、そのどうしようもなさに悔しさを覚えた。
「……だって、透はあんなに頑張ったのに、あんなの、ないよ……」
『……思えば、九つの世界の仮面ライダーたちにもすまないことをした。』
だが、ディレイドの内罰的な独白は止まらない。
『一方的に協力を強要されては、さぞかし気分も悪かっただろうな。 俺の情操が未発達だったとはいえ』
「そんなんじゃないよっ!? 」
そこだけは聞き逃がせず瞳子は大声を上げて話を遮った。
『……瞳子……?』
「そんなこと、絶対にない! みんな透のこと、悪く思ってなんか絶対にないよっ!」
溢れた涙を振り払い、涙を拭おうとした手が眼鏡にぶつかって初めて眼鏡の存在に気付いた。
十人の瞳子の内、眼鏡を着用しているのがこの瞳子だけだった故に、今までその感覚を忘れていたのだ。
眼鏡をずらして涙を拭い、改めてディレイドを見下ろした。
「……そりゃ自然災害の竜巻みたいにマイペースにみんなのこと勝手に巻き込んで、目的を達成したらとっとと先に行っちゃって、殴っても蹴ってもぜんぜん効かないし、気も利かない唐変木だし!」
『うむ。ひどい言われ様だ。』
「でも! 透はそういう奴なんだって、みんな認めてたよ! 本当にただの唐変木ならこんなこと言わない! 透は、できる事はきちんと果たしてきたもの!だからみんな、なんだかんだ言っても透のこと、頼りにしてたんだよ!? 」
『…………。』
「だから、そんな事言わないでよ。きっと誰も透のこと責めてないよ。透、頑張ったもの。」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、しゃくりあげながら絶え絶えに訴える。
ディレイドは、腕に抱かれながら静かにそれを静かに聞いていた。
『……だが、』
僅かに身じろぎしたディレイドは、瞳子の腕の中から抜け出ると地面に身を投げ出した。
『だが、俺は、悔しい!』
動く指をどうにか内側に曲げると、歪な握り拳で地面を力無く叩いた。
『この感情を、なんと言うのか良く分からなかったが、いま解析した。 俺は、悔しい! 悔しくてたまらない!』
「……透……」
これも、見たことのない姿だ。
透は、いつの間にか豊かな感情の基礎を築きつつあったのだ。
なのに。
『……この情報をどう処理していいのか分からないし、俺は、もう保たない。』
「え?」
訝しむ瞳子の目の前で、ディレイドの身体中の傷から黒の靄に混じって黄色い粒子が吹き出し消えていった。
「……これ……!? 」
『この活動体の耐用限界はとうに越えている。もうすぐ消えるだろう。だが、このままこの俺の中にくすぶる情報をただ消されるのは耐えられない!』
叫んだディレイドは、やおら腹部のベルトに手を遣ると、元の無骨な機械の塊のような形状に戻っていたディレイドベルト・カレイドサーキットを引きちぎり始めた。
「と、透!? 」
『ぬああああああああああ!? 』
ぶちぶちという異音とスパークを迸らせて、ベルトが腹から引きはがされた。
ディレイドはそれを瞳子の前に放り捨てると、今度は胸の穴に片手を突っ込んだ。
『ああああああああああっ!? 』
呆然とする瞳子の前で、ディレイドは己の体内から何かを掴み出そうとしていた。
やがて苦鳴をあげながら引き出した手に握られて胸から出てきたのは。
黄色の大剣ディレイドライバー・カレイドブレイドだった。
『……っはあっ!』
がしゃ、と剣をベルトの上に放り出し、ディレイドは力尽きたように地面に膝を、手を落とした。
「……と、とおる、何を……?」
『……おまえに……』
応え、ディレイドはなおも自分の胸の穴に手を突き入れた。
『お前しか、いない。 俺の、俺の情報を残せる者が、お前のほかにいないんだ!』
そして三度苦鳴を漏らしながら体内から引き摺り出されてきたのは、六十センチメートル程の黄色い半透明の棒、ディレイドの情報素子、ライドピラーだった。
『……っはあっ! ……すまない、瞳子。これを、受け取って、くれ』
「え? それ、どういう」
困惑する瞳子に膝立ちで擦り寄ると、差し出した手を無視した透の意図が分からずあたふたする瞳子を突如捻れた腕が抱きすくめた。
「え? えぇ?」
透の言葉と行動が繋がらず困惑が止まらない瞳子の鳩尾に、何か硬い尖った物が押し当てられた。
「っ!? 」
それが、片手に握られたあのライドピラーだと気付いた瞬間、瞳子は透の意図に気付いたが、全く同時に透の手がライドピラーを瞳子の胸に突き刺した。
「あっ!? がっ!? 」
文字通り、突き刺す痛みに反射的に逃れようと身を捩るが、背中に回されたディレイドの腕ががっちりと身体を捕らえて離さない。
「がああああっ!? ああっ!? っぐっ、」
『……すまない。瞳子。』
「ぐっ!? あああああ!? ……と、る  や、やめ……」
決して細くはない角材が体内に押し込まれてゆくのが感覚で分かる。
かつて身体を貫通された時はまったく痛みはなかったのに、なぜ。
『すまない。今の俺には、ライドピラーの情報転送の形式の調整に割ける余力がないんだ。』
「っっっ!? ぐっっ!? があああああ!? 」
『もう少しだ。もう少しで、全部、入る』
もがき、ディレイドの身体を叩いて暴れる瞳子の身体を抱き締め、容赦なくライドピラーを押し込んでゆく。
やがてディレイドの腕が瞳子の身体を解放し、二人同時に、糸が切れたかのように煉瓦敷きの上に倒れ込んだ。
当然だが、ライドピラーは物理的には瞳子の身体を貫通しておらず、服の胸には破れた跡もなければ、背中には何も突き出てはいなかった。
瞳子は、涙でぐちゃぐちゃになった顔で必死に呼吸し肩と胸を上下させながら、傍らに横たわるディレイドに顔を向けた。
「……こ れ、……なん、で、こんな、こと……?」
『……どうするかは、お前に任せる。』
仰向けになったディレイドの横顔が、同様に苦悶にこもった声で応えてきた。
『お前に、頼るしか、なかったんだ。 すまない。本当にすまない』
しばらく、無音のこの世界に静寂が漂う。
「……謝らなくて、いいよ。」
やがて、激痛が引いて落ち着きを取り戻した瞳子がぽつりと言った。
「分かったから。 もう、そんなに謝らないで。」
『……ああ。』
どこか透明感のある穏やかな瞳子の顔を、ディレイドのマスクが僅かに傾いて見返した。
『ありがとう。瞳子。』
「……うん。」
涙ぐんだ瞳子の顔が、穏やかにうなずいた。
『……じゃあな。』
その言葉を最後に、ディレイドの身体が迅速に粒子化して無数の傷跡から溶け崩れるようにして消え去ってしまった。
静かな最期だった。
「……さよなら。透。」
激痛に耐えて疲労していなかったら、悲しみに絶叫し暴れ散らしていただろう。
もう今の瞳子には分かっていたから。
「九つの世界の瞳子」が消滅しては、バックアップに必要な容量を維持できず、ディレイドの活動体の復元はもう不可能だということを。
それでも試しに、傍らに置かれたカレイドブレイドのグリップをそっと掴んでみたが、特に何が起きるでもなく。

仰向けに横たわる瞳子はたださめざめと泣き暮れることに余力を注いだ。

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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