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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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クリサリス・エマージュ 第6話



『自殺倶楽部』では、『共同自殺者の紹介』にあたっては、お互いにハンドルネームを設定することを推奨している。規則のひとつ「互いの事情を詮索しない」の延長にあたる仕様である。
少女は『灯(あかり)』と名乗った。
相手の少女は『笑(えみ)』と名乗った。
『共同自殺契約』をした二人にのみ与えられるメールアドレスによる数度の打ち合わせにより自殺方法と決行日が『自殺倶楽部』に伝えられ、場所と必要な物資が用意してある旨が記されたメールが『灯』と『笑』の元へ届けられ。
そして当日、『渋谷封鎖地区』に程近い廃ビルのひとつの中階に二人の少女が現れた。
自殺方法は『無味無臭の毒ガスによる安楽死』。指定場所であるペンキで目印をつけられた扉を二人でくぐると、大きな鏡が壁に張り付いているだけの殺風景な部屋の真ん中に、やや古びたガスボンベがひとつ無造作に転がっていた。
「生まれ変わるなら、明るい性格になりたいな、って。」
「私も。楽しく笑えるようになりたい。」
己の希望を偽名に冠した二人の少女は、一緒に重ねた両手で、ボンベのバルブを何度も何度もひねった。


「ッケッヒャッヒャッヒャッヒャ死んだ!また死んだホントに死んだよ舞菜!」
巨大なマジックミラー越しに、毒ガスによる共同自殺の様を眺めていた『自殺倶楽部』の設立主、|曲月 七彦(まがつき・ななひこ)は、猫背を反り返らせて狂喜していた。
「……。」
呼びかけられた漆黒のカントリードレスを纏った女、|藍川 舞菜(あいかわ・まいな)は、憂いを秘めたその顔に、うっすらと笑みの色を混ぜた。七彦は見向きもしないのに。
「なア!?これでいいんダロ?」
引き攣った笑顔のままの七彦が振り向いて、そこに並び立つ人影に裏返った声で尋ねかけた。
舞菜の隣にいる、無表情で立つ『灯』と『笑』に。


◆◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆





◆数寄屋 亮介・1◆

「……うっ、くっ。……うぅっ……」
夜。暗闇にそびえ立つ巨大な骨格標本のような鉄骨ムキ出しの建築途中のビルの屋上で。
亮介はひとり、正体もなく泣きじゃくっていた。
「……うぅっ、くぅっ……うぁあああああ!?」
何がタイミングだったのか。やおら立ち上がった亮介は、屋上外縁へ向けて駆け出した。
「あああああっ!?」
そして虚空へと身を踊り出した。あとに身を受け止められるのは、数十メートル下の硬い地面のみ。
「ああああああ!?」
後悔もない。混乱した頭脳はただ、『終わり』を求めてもがくだけであった。
「だから死ぬなと言うに。」
その時突然、途中の階の窓から伸びた太く強靱な腕が落下途中の亮介の襟首をつかみ引き寄せ屋内へと引き摺り込んでしまった。


◆台場 和馬・1◆

「……ふむ。女子に振られて自殺をな。」
「うわああああああああん!?」
バイト先であるこの工事現場の夜間の当直にあたっていた和馬は、たまたまその屋上から投身自殺を図ろうとした顔見知りの少年の凶行を阻み、話を聞いていた。
地上の建材置き場に腰掛けさせた少年に缶コーヒーを勧める。
「しかし詰めの甘いことよな。人里で自殺をしようなど、誰かの助けを期待する心の顕れであろう。わたしの手の届くところにいるうちは、何度自殺を試みようと助けてしまうぞ?」
「だああ鬼ですかあんたはッ!? なんか慰めるとかなにかないんですかッッ!?」
真っ赤に泣き腫した目を振り仰いで怒鳴りだす亮介。
だがそんなことは正直和馬の知ったことではなかった。
だから本題の話をする。
「ふむ。亮介はよほどその女子のことが好きだと見えるな。」
「うッく!?」
息を詰まらせる亮介。図星を突かれた人間の一般的な反応のひとつである。
「ならばなおさら死ぬなどもったいないことだろう?」
「……どうしろって言うんですか!?」
八つ当たりぎみな少年の癇癪に、和馬はひと呼吸の間を置いて、ゆっくりと人さし指を立て天に向けてかざした。
「……わたしが言っていた」
「自称ですか!?」
亮介のツっ込みは聞き流して続ける。
「『好き』だということは、『その人がいるだけで幸せ』だということだ。その幸せを噛みしめるがよい。」
「……それで?」


◆数寄屋 亮介・2◆

「……それで?」
偶然にも二度も生命を救われた大男の、いちいちもっともな話に、つい聞き入って訊ね返す亮介。
「それだけだ。幸せだろう? そして亮介よ。己の目的を履き違えてないか?それでは余計な迷惑を振り撒くことになる。」
「……どういうことですか?」
するとなにやら大男は居住まいを正してこちらを見直した。
「……その女子を随伴したいと思うのは、また別のハナシだぞ?」
『女子を随伴』という聞きなれないフレーズが、脳内で翻訳しその意味を把握するのに時間をかけさせた。
「!?!?!?!?!?」
泣き腫した目の回りだけでなく、顔全体が突然熱くなった。
「な、ななななななななな!?」
「今さら秘匿することではあるまい。だいたい、その女子を困らせることは、亮介の本意ではなかろう?」
「…………!?(なんだこの人!? まさかこの面相で女性経験豊富なのか!?)」
あまりの的確な指摘についつい失礼な想像をする亮介に構わず、大男は言葉を続ける。
「熱くなって、先刻のように我を失うのなら、まずは冷静になることだな。亮介には亮介の考え方がある。……他に歳の近い友はおらんのか?身近に相談相手は?」
「いやあ……」
自分の服の選定にも困る亮介に、そんな友人などいない。
「コラァ!テメェ!」
その時、突然横からまた聞き覚えのある怒鳴り声が響いてきた。


◆伊達 新星・1◆

伊達 新星は、その日も少年・・数寄屋 亮介を尾行調査していた。
いつぞや『アミューズアカシックフィールド』へ女連れで遊びに行ってからなぜか元気を無くしていた少年は、数日経った今夜、新星の見上げる建築途中のビルの屋上からとうとう投身自殺を試みてしまったのだ。
「ああああああああ!?」
隠れていた物陰から走り出す新星。
目算では滑り込みで少年の身体を受け止めることができると踏んでいた。
だがその少年の身体は突然、途中の階にいたらしい人間によって引っ張り込まれるように救われたのだった。
「はーーっ。」
そんな冗談のような奇跡に息をついた新星だったが、落下途中の重量ある人体を片腕で捕まえられることの異常さに気付き、改めてそのビル建築現場を見張っていた。
果たして、あの少年を伴って地階に降りてきたのは、あの時『アミューズアカシックフィールド』で新星を座っていた鉄骨ごと持ち上げて見せたあの大男であった。
「ああああのやろ!?」
あの只者ではない腕力を見せつけた人間が、ネオゼクトの監視する少年に接触しているなど『ただの偶然』というには憚られる。というか昆虫の思考よりも単純に『怪しい』と思った新星は、その場から二人目掛けて駆け出していった。


◆数寄屋 亮介・3◆

「コラァ!テメェ!」
「ヒィィッ!?」
凶暴な怒声に反射的にすくみあがる亮介。
そこへ駆け込んできたのは、最近よく会うあの暴力男であった。
「知り合いか?亮介」
「いやあのえとその」
大男に問われるが、そう言えばどうにも返答に困る間柄である。
「てめぇだデッカイの!てめぇ、そいつから離れろ!」
「……む?どこかで見たような……」
今度は呼びかけられた大男が怪訝顔をする。
「知り合いですか?」
「こないだ鉄骨ごと持ち上げられた俺だよ!」
「おお。」
なにやら、このふたりの間でも何か繋がりがあったらしい。
「おい亮介!こいつになんかされなかったかよ!?」
「え!?いや、そんな」
「人聞きの悪いことを言うな。貴様こそ通りすがりの分際でとんだ言いがかりをつけおって。」
まるで嵐のような暴力男の啖呵のせいでなにやら空気が険悪になってゆく。……いや、険悪なのは最初から暴力男だけだが。

「だいたいてめぇナニモンだコラ!?」
「わたしか?わたしは……」
ふと気付く。これだけ話をしていたにも関わらず、亮介は彼らの名を知らなかった。
見つめる前で、大男は立てた人さし指を天へかざし。
「我が名は、ちゃぶ台のある場で和むう」
「テメエかッッ!?」
言葉の途中でいきなり暴力男が大男を殴り倒した。
「……なにをするか。」
まるでたいしたダメージもないようにむっくりと起き上がってくる大男。
「そのパワーと言いガタイと言い!そんで今のでようやく思い出した!てめえ、『クライプ』のだな!?」
何事か分からないことを怒鳴りだす暴力男。
振りかざした左手に、どこからか飛来した巨大な虹色の甲虫が飛び込んだ。
「え!?」
「変身!」
《ヘンシン!》
叫び甲虫を右手グローブに取り付けた暴力男の身体が光に包まれ、なんとアイスグリーンの甲冑姿へと転身してしまった。
「えええ!?」
「ふむ。それは見覚えがあるぞ。変身」
《ヘンシン!》
「えええええ!?」
振り向けば、大男までも機械仕掛けのセミのようなものをベルトに設置してシルバー地に紅茶色のラインのある全身甲冑へと転身してしまった。
『オラアアアアアア!?』
乱暴に組み合った二体の甲冑は、そのまま亮介から離れ建築途中のビルの中へ転がり込んでゆく。


◆明智 智晴・1◆

「…………!?」
智晴は、巨大な専用高級車の後部座席で必死に怒りとそのせいで脈打つ頭痛を堪えていた。
明智グループ情報部の者から、監視している人間に尾行者がいる旨を伝えられたのだが、どうもその尾行者の特徴が『仮面ライダー ジェイル』の資格者のものであり、接触した場所が明智グループ関連会社の新ビルの工事現場だと言う。
かつて自分の建築中のビルを根こそぎ潰されたのはついこの間のことである。
そこへ向かう自分も含め、まるで酷似した符合に智晴はどうにも嫌な予感を拭えない。
やがてゆるやかな逆重圧が身体をわずかに前傾させて車が停止した。
『……到着致しました。』
「ああ、自分で開けます。君はそこで待機。それから……」
降りようとした運転手をインターフォンで差し止め2、3の指示を残して智晴は、自らの手でドアを開けその現場の地に降り立った。


◆数寄屋 亮介・4◆

キュイッ!ガチャ、バタン。
遠くの闇で展開されている男ふたりの喧嘩の音よりは生活感に溢れたそんな音に振り向けば、この工事現場の入り口に巨大な高級車が停車しており、そこから白い背広に身を包んだ男性が流麗な歩調でこちらへと歩いてきた。
「……ここは関係者以外は立ち入り禁止ですよ!? なにをしているんですか!?」
「うわ、すみません!?」
高圧的な呼びかけに、つい萎縮してしまう亮介。
「(うわっちゃ〜。ここの持ち主のひとだぁ)」
無条件に信じた亮介は、ただひたすら気まずくなってしまった。
そして白スーツの男は、今だ喧騒の響く工事現場の暗闇の奥を注視する。
あのふたりの喧嘩は自分のせいではないはずなのだが、亮介はますますいたたまれなくなった。
「あ、あの」
「……学生が、ウチの関連施設の近くでケガでもしたらつまらないのでね。」
白スーツは、かざした人さし指を入り口の巨大な高級車へと向けて告げてきた。
「あれに乗りなさい。適当な所まで送らせます。早いとこ自分の生活に戻ることです。」
「は、はぁ。」
関係者の注意勧告にしては奇妙な言い回しに、だがその違和感の元が判然としないまま、亮介は言葉に従い車へと歩き出す。
ふと、頭のすぐ横を、なにかがかすめて後方へ飛んでいった。
振り向けばそれは、工事現場の闇の中へ歩いてゆく白スーツを追い抜いてその奥へと消えていった。


◆明智 智晴・2◆

高級車が走り去って後。
報告を受けていて予想内だった『仮面ライダー ジェイル』の存在のほか、そこにいた『もうひとりのライダー』の姿を見た智晴の絶叫が工事現場の闇の奥から木霊し。
続いて聞こえるライダーシステム起動の音声と滅茶苦茶な打突音。
しばしの間を置いて、無数の弦楽器を一斉に引っ掻いたような騒音が轟いたその時。
鉄骨の建築物が、それに勝る轟音をあげて瓦解していった。


◆数寄屋 亮介・5◆

『お話は承っております。お送りしますので、どうかごゆっくり、おくつろぎになってください。わたくしめにご用がおありの際は壁のインターフォンにてお申し付け下さいますよう。』
そうスピーカーで告げられて、亮介が乗り込んだ高級車は流れるように発進した。
そのあまりにもゆるやかな発進時の、まるで羽毛布団のような重圧。
初めて新幹線に乗った時よりも心地よい加速感に、亮介は心底驚愕・感動していた。
「うわぁ〜!? やっぱ高級車は違うなぁ〜!?」
広い車内。さながら超小型シャンデリアのような室内灯をはさんで向かい合わせに配置されたシートと、その先の壁で仕切られた運転席という見慣れない仕様に、気後れしつつも貸し切り状態であることをいいことに亮介は周りを眺め回してはしゃいでいた。
こうなると、普段は味気ない夜の街の風景までも豪華に見えてくる。
「うわ〜。貴重な体験だよな〜。……これって死なないで良かったんだかなんなんだか。」
ぼやいたその時。風景が高速で流れる車窓に突然少女の顔が現れた。
「ぃい!?」
時速何キロだか知らないが巡航速度で走る車の窓を少女が涼しげに覗き込める道理を知らず、亮介はその異常に混乱した。
そして次の瞬間、シート右側に座る自分の位置がいつの間にか左側へずれ、目の前すなわち今まで亮介が腰掛けていた場所にその顔の少女が腰掛けた姿勢で出現したことで亮介の混乱は極大に達する。


◆ワーム・1◆

目標の少年がライダーどもから離れ、生身の運転手による車に乗り込み実質単独になったところで少女の姿に擬態したワーム『灯(あかり)』は行動を開始した。
『ウフフ……』
走り去った高級車を見送ってから、リボンの端をいじくっていた指を止め、加速空間に突入する。
クロックアップ状態のまま、まるでスキップのような足取りで夜間のビルとビルを越え、道路の途中にあるその『走行中の』高級車の真横に降り立った。
『フフ……』
時計の長針のようなじれったい動きで『走行』している車の窓を覗き込むと、そこには外の景色を眺めて楽しむ目標の少年の姿。
『フフフ……』
当然、こうして真正面から覗き込んでいても、加速中の自分の顔を少年は認識できない。
『灯』はちょっとしたイタズラ心を閃いて、そのまま覗き込む姿勢を維持したまま車の動きに合わせて移動してみる。
相対的に同じ速度になったことでようやく少年が『灯』の顔を認識したようだ。
みるみる表情が驚愕の形状に変形してゆく様は滑稽以外の何物でもない。
擬態元の少女の記憶にある『明るい性格になりたい』という望みに従い、『灯』は命令遂行の「ついでの遊び」を思い付き実行に移した。
その車の後部ドアをこじ開け、そこにいる少年の身体をシートの奥側へ押し込み、そして自らはそのシートに乗り込みドアを閉じた。
クロックアップ解除。
「ヒィイィイ!?」
『ウフフフフフフ……』
これは楽しい。楽しくて仕方ないと『灯』は思った。


◆ワーム・2◆

『あハはハハハはぁアハはハははは!』
歯をむき出しにして横隔膜を活発に動かし声帯をデタラメに振動させるワーム『笑(えみ)』。
加速空間の中、ビルの屋上から目標の少年が乗った高級車の手前に降り立ち、なおデタラメな声をあげ続ける。
『アハハははハハはあはハはハはハ!』
少女にあるまじき形相で擬態元の少女の記憶「楽しく笑いたい」に従い、自分なりに欲求を追及し続ける『笑』。
なにしろその少女の記憶には自ら笑ったことがないため、『笑』は手持ちの情報からその行為を類推するしかなかったのだ。
『アハははハハはハ……?』
加速中のため、まるで停止しているように見える、正面からこちらに迫る車に『笑』は、ふと奇妙な感覚に陥った。
『このままクロックアップを解除してあの車に轢かれてしまいたい!』
『あハ!?』
自らの内にある、単純な「生きる衝動」の中に発生した矛盾した欲求に『笑』は混乱した。
だがその「破滅願望」がもたらす感覚のなんと甘美なことか。
『……。』
擬態衝動にも次ぐ誘惑に、『笑』は声をあげるのも忘れ、ヘッドライトに霞む車体を前に棒立ちになる。
その時。
キュボゥッ!
『あガは!?』
突然背後から熱い塊が『笑』の腹部を貫いた。
『ガ……』
後方を見やる。
だが、『笑』を攻撃した者の姿は見えない。
『ガ!?』
混乱に次ぐ混乱。
再び突然彼方から出現した光弾が、今度は背中から胸を貫いた。
一撃目で既に致命傷だ。『笑』の命はもはや風前のともしび。
だが正気に戻ったワームの意識が、命令だけは遂行せんと、振り上げた右腕にエネルギーを集中、陽炎のように立ち昇る青白いゆらめきをまとったその腕を、目の前の高級車のボンネットに叩き込み。

通常空間。破壊されたエンジンとワームの死体が、同時に爆発した。
赤と緑の爆炎を裂いてよたよたと現れた高級車の残骸の中には、運転手の死体のほかには何者の姿もなかった。


◆ライダー・1◆

夜闇の静寂の中、破壊音波によって崩壊し塵化した物質と建材・鉄骨でできた瓦礫の山。
その一角が、突然かたりと音を立て。
「だああなんなんですかあなたたちはッ!? ウチ(明智グループ)に用があるならまず私を狙えばいいでしょう!? なんなんですかこの小学生のイタズラじみたゲリラ的報復攻撃は!?」
「うるせぇッ!? ここがダレんチかなんてイチイチ気にするかッッ!? 脈絡なく出てくるなりハエ(マイザー)バラ撒きやがって!」
ぼこっ!ぼこっ!と押しのけられた瓦礫の下からそれぞれ二人の頭が生えてきた。
「そらびっくりするでしょう!? クライプはもう私にとってトラウマなんですからね!?」
「知るかッ!? ンなガキみてぇな言い草で俺らのケンカの邪魔しやがって!」
「どっちがガキですかッッ!?」
「! そうだ、あのクライプの野郎……」
ふと気付いて辺りを見回す新星。
そこへ、どこからともなくSF映画のオープニングじみた行進曲のような鼻歌の旋律が聞こえてきた。
「たーたーたたたーたー♪」
二人が見上げたそこ、瓦礫の山の頂上から、腕組みをして立つ大男の姿がゆっくりとせり上がってきた。
「ひとりひとりは小さな火でも、ふたり合わせれば炎となると言うが、さしずめわたしは一人で既に炎であるな!」
「ヒトんチふたつも潰しておいて、言うことはそれだけですかッッ!?」
「フザケんなこの野郎!」
直後、二人がかりで雨あられと投げつけられた瓦礫を喰らって山の向こうへ落下してゆく和馬の巨体。

「あークソ、ヒデェ目に遭った」
「キッチリ責任は追及しますからね。」
ようやく瓦礫の中から這い出て山の上に立つ二人。
「ほう?つまり続きと洒落込もうってか?」
「……確かに、精神衛生上、多少は八つ当たりしておいたほうが良さそうですね。」
再び出現したジェイルゼクターとマホークゼクターが辺りを飛び回る。
「やめたまえキミタチ!喧嘩は良くないぞう!?」
「言えた義理かッッ!?」
「死になさいッッ!」
突如横から出現した和馬の顔面に、それぞれ飛び回るゼクターをひったくるように掴み取って投げつける。
ヒヒイロノカネのカタマリの直撃を喰らって再び沈没する和馬。
『……遊んでいる場合か?おまえたち……』
そこへ突然、新たな声が聞こえてきた。
三人のもとへ飛来した小さな影。それは赤いトンボの形をしたマイザーボマーであった。
「なんだ?コイツ?」
『そうだ。そのマイザーを介して話している。俺はゼクトのライダー『レディック』。』
「ゼクトの!? これだけのことをして、まだなにか用があるんですか?」
『ゼクトはお前の物件になど用はない。……それよりお前たち、なにか忘れていないか?』
「あン?ナンのことだコラ!?」
『お前たちが御執心のあの少年。お前たちが遊んでいる間にワームにさらわれたぞ。』
「なンだと!?」
「まさか!?」
慌てて展開した携帯電話を操作し、耳に当てる智晴。
だが、聞こえてきたのは、相手の端末の不在を示唆する無情なアナウンスであった。
「バカな……!?」

「テメェコラ!じゃあナニか!? 黙って見送ったってのか!?」
『俺も用事があったのでな。二体コンビのワームのうち一体は撃破した。』
「ゼクトが、なぜ私たちにそんな話を?」
『別に。これから、今回の奴らのアジトと思しき場所の情報をお前たちに教える。だが、それでどうするのかはお前たちの自由だ。行かなければ、あの少年が死ぬだけ。そして俺にとってはあの少年の生死はどうでもいいことだ。』
「へっ。てめえらゼクトの口車に乗れ、ってか!?」
『どうでもいいと言った。』
「ならば、行くしかあるまいな。」
「てめぇ!?」
これまた突然復活した和馬が、二人の肩を押しのけて進み出た。
「人は己の思惑によってのみ動くもの。その先に他者の悪意があったとして、進退を考慮する理由にはならん。なぜなら、罠はハマって踏み潰すもの!」
握り締めた岩塊のような拳をかざして力説する和馬。
「ちっ。テメエと同意見てのが気に食わねぇがその通りだ。 おいレディック。せいぜい俺の目の前に出てくんじゃねえぞ」
「やれやれ。最近不運続きでフラストレーション溜まってるんですよ。ヘタな罠を用意していると、伏兵ごとまとめて爆砕するかもしれませんよ?」
『あいにくと、互いに顔を合わせることはあるまいよ。……なら、良く聞け。』


◆ワーム・3◆

いずことも知れないコンクリートで囲まれた場所で。『灯』は拉致してきた未だ目覚めない少年・・数寄屋 亮介の頭をソファに腰掛けた自分の腿に乗せ、面白がるような笑顔でその頭を撫で続けていた。
時折り、手下のワーム・サナギ体の群れが擬態元を求めて『灯』の近くまでやってくるが、彼らより格上である『灯』はそれをひと睨みで退散させてしまう。

その様子を部屋の反対端で眺める三体のワーム・成体の影があった。
舐めるように『灯』と少年を凝視している、全身に葉脈のような複雑な文様を描いたワームと。
いま、面白くもなさそうにそっぽを向いた、ジガバチの生体相を持つワームと。
そして暗闇の亀裂から覗く無数の赤い瞳。いや、まるで包帯のようにムカデのような多節帯をヒト型にぐるぐる巻きに編み上げた異形。その多節帯の隙間という隙間から無数の赤い目を覗かせた異様のワームと。


◆◆ to be continued.◆◆


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