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ルィスフガーデン

鏡よ鏡。もう少し手加減しておくれ。自分の美しさで目が眩んでまともに鏡も見られない。

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track.76 シークレットマニューバー

『ッガッ!? ガアアッ!? 』
苦悶に呻くディケイゴンの腹からカレイドブレイドを引き抜いてディレイドは着地した。
マシンディレイダーに跨ったアリスも上空を旋回して地上に舞い降りた。
ワールドスライダー同士の高次元干渉から発展した互いの可能性の奪い合いは、ディレイドに軍配が上がった。
(……でも、危なかった……)
マスクの下で、瞳子は勝利の感慨に浸ることなく荒くなった息を必死に抑えていた。
先の高次元干渉は瞳子にとっても不意の現象であり、つい先刻ワールドスライダーの能力を手に入れたばかりの「ノゥエムの王」とやらとは能力使用の練度において四ヶ月も先行してはいたが、可能性の奪い合いに勝てたのはまさに偶然と言うよりほかない。
そう。偶然だ。
ディレイドが勝てたのは、内包する存在が一人ではなかったから。
アリスがいてくれたから、二人分の可能性が共にあったから瞳子はディケイゴンの確率干渉を跳ね除けることができたのだ。
そのアリスをディレイドのシステムに取り込んでしまった原因は、消滅の危機にあったアリスを救う為にした行為であり、あの当時はこんなことになるなど予想だにしなかった。
『やった! やったよトーコ!』
『……うん』
後ろから飛びついてはしゃぐアリスに瞳子は収まらぬ息でどうにか応える。
勝因を呼び込んだ友人に、瞳子はこれまで共に戦ってくれたことも含めてとても感謝していたが、同時に巻き込んでしまったことにも後ろめたさを感じていた。
時間侵略の先兵として生み出された種族「イマジン」であり、この世に生まれてから実質一年も経っておらず、そう言った「人生」に対する概念が根本的に異なる異種族とはいえ。
『ッグゥゥ!? 』
『! 』
上空から聞こえてきた呻き声に、ディレイドは未だ宙で身悶えしているディケイゴンを見上げた。
アリスへの謝罪はあとだ。今は前の敵に集中しなくては。
油断はできない。ドライバーを貫いたにも関わらず、ディケイゴンは未だに変身した状態のままのたうつスパークを身に纏い重力に逆らって宙に留まっている。
『ッガッ!? ガアアアアアアアア!? 』
突然、ディケイゴンが仰け反って一際悲壮な苦鳴を上げた。
『えっ!? 』
その異変に驚愕したのは、瞳子とアリスと同時だった。
ディケイゴンの胸の真ん中から、腕が一本生えていたのだ。
『なにあれ!? 』
アリスが悲鳴を上げる。
これまでの激闘をくぐり抜けた身としてもそれは見たことのない異常であった。
その腕は、白と黒の縞模様に覆われていた。
否、「白と黒のボーダーラインが」「腕の形に切り抜かれている」と言ったほうが近い。
『あれは……』
その異常を理解した時、瞳子の中で戦慄が走った。
縞模様の腕は、肘を中心にディケイゴンの胸の上でまさぐるように這い回ると、穴の開いたベルトのドライバーを探り当てるとやおらそれを鷲掴みにした。
『……!? 』
より苦悶に仰け反るディケイゴンに構わず、腕はドライバーを引きちぎり始めた。
『ガアアアアアアアアアア!? 』
ぶちぶちと異音を立てて腹からドライバーがはがされてゆくにつれ、まるで身をもがれるような悲鳴が交差線のマスクから迸る。
やがて胸から生えた手にドライバーを完全にちぎり取られたディケイゴンは集中線のノイズに包まれると、元の痩身男性の姿に戻ってしまった。
と同時にその身体に異変が起こる。
「……あ……あ……」
胸から生えた腕が「こちら側」に伸びて、続く上腕を、肩を現してくるのにつれ、「ノゥエムの王」の身体が胸の穴に吸い込まれるように歪み、縮壊してゆくのだ。
「……あ、がっ……」
めりめりと音を立てて縞模様の腕がその頭を胴体を引きずって現れ、「ノゥエムの王」の身体は見る見る小さくなってゆく。
やがて、縞模様の異形がするりと爪先を引き抜くと同時に「ノゥエムの王」の姿は声も残さずに跡形もなく虚空に消えてしまった。
その直下の地面に音も立てずに身を屈めて着地する縞模様の異形。相変わらず厚みのない姿のせいで、目前のことなのに現実感に乏しい。
『……やだ……なに、あれ……』
その異様に怯え、腕にしがみついてくるアリスを抱き返して宥めながら、瞳子は己の内にあるデータリンクが開示した答えを口に出した。
『……ディヴォイド……』
異常はそれだけでは済まなかった。
地面が、「影」がついた足下から色を失い白に、あるいは黒に変色してゆくのだ。
その変化は迅速で、たちまちこの「ノゥエムの世界」を白黒のみの二階調に染め上げると、怒濤の勢いで「世界そのもの」を足下から吸い込み始めた。
『……な!? あ……あ……』
まるで排水抗に流れ込む濁流のように「影」を中心に景色が収束してゆく。
その中には、無数のモンスター群と戦う四人のダークライダーたちの姿もあった。
『良男!? みんな!? 』
思わず叫ぶが、「影」が世界に干渉した時点で「影」も瞳子もアリスも異なる位相に移動しており、怪訝に辺りを見回す四人のダークライダーたちには瞳子の声は届かない。
そのまま、景色ごと「影」の足下に吸い込まれて消えてしまった。
『あ……』
そこからたいしてかからずに辺りは何もない「ノゥエムの世界だった無の空間」となり、「影」とディレイドとアリスはすぐにこの第四階層で唯一の世界となった「ライダー大戦の世界」へと着地した。
人気のない山並みに囲まれた窪地の一角で。
立ち上がった縞模様の「影」が、今の惨劇などなかったかのように無為にこちらを見据えた。
なぜ「影」の目線が分かったかと言えば、その「影」の頭部にだけ「∞」の形に黒線が避けて通っていたからだ。
それは、ディレイドやディケイドのディメンションヴィジョンの形状に酷似している。
そして全身を縦線で構成された姿は、ディケイドに似ているとも言える。
その「影」・・ディヴォイドは、片手に掴んでいたディケイゴンのドライバーを見下ろすと、やおら己の腹にそれを押し当てた。
すると、穴が開いて全壊したはずのドライバーが綺麗に復元し、両端からバンドを伸ばして「影」の腰を一周すると結束してしまう。
そして、ベルトの上下の縁から滲むようにして影のような厚みのない縞模様の身体が実体を帯び始めた。
『……な!? 』
驚愕に慄く瞳子の見ている前で、影は上下に質量を得てゆき、やがてそこに漆黒のボディスーツが現れた。
縦線で構成されたマスク。たすき掛けのように胸郭を走るパラレルライン。
そして腹に鎮座する黒い宝玉をはめ込んだプレート。
それはまるで、「ディケイド」を漆黒に塗り潰したかのような姿だった。
変異が完了すると、ディヴォイドは己の腹に手を遣り、たったいま装着したばかりのドライバーを外すと、その身を無数の縦線のノイズに包みシルエットを変形させ始めた。
すぐにノイズは消え去り、そこには代わって人間の男が立っていた。
放埒な濡れ髪の下の鋭い釣り目と拗ねたような形の唇を皮肉げに歪めて嗤っている。
『……あ、あんた……なんで……』
「俺は「|門矢 士《かどや・つかさ》」。通りすがりの仮面ライダーだ。」
訊きもしないのに、ディヴォイドは男にしては高い声でやおらそう告げてきた。
口の端を釣り上げ。
「……と、名乗ればいいんだな? これから消滅する相手に自らの存在を通達することにどんな意味があるんだか分からないが。メインセントラルモジュールも、なんとも酔狂なことをするもんだ」
横に持ち上げた己の掌をためつすがめつ眺めながら、ディヴォイドはすらすらと流暢にしゃべり出す。
「だが「通りすがりの」は良い枕言葉だな。通過するべく通過する俺たち「システム・ディケイド」にはまさにうってつけの表現だ。なあ?」
言葉の最後でくるりと振り向き同意を求めてくるが、瞳子には応えられない。
恐らくは、透と同じく「システム・ディケイド」のデータリンクからディケイドの人格をアップロードして模倣しているのだろうが、透と違い語り口は露悪的ながら人間性に溢れているのに、

ああ。なんということだろう。今の瞳子も「システム・ディケイド」であるが故に、すぐに解ってしまう。

語り口は露悪的ながら人間性に溢れているのに、そのあまりにも虚ろな中身の無さが露骨に感じ取れてしまって気持ちが悪い。
これほど自分の言っていることに興味のないしゃべり方をする存在を、瞳子は見たことがない。
ぽっかりと口を開けたブラックホールの深淵がヒトの服を着て人間の真似をしているようだ。
本性を隠しおおせる訳がない。その無意味で露骨な偽装がより一層不気味だった。
そもそも応えられることを求めていない問いかけに、なんと答えれば良いと言うのだろう?
「さて。メインセントラルモジュールもタクティカルパイロテージモジュールもフォローバックアップモジュールも鹵獲され、ファイアコントロールモジュールも破壊されちまった。 と、なったら、この俺が単独で「システム・ディケイド」の本懐を成し遂げなくちゃいけない訳だ。」
だらりと下げた手で己の胸を示しディヴォイドが宣った。
皮肉げな釣り目をにやりと歪め。
「まあ心配するな。なにせ俺は宇宙最強の仮面ライダーだからな。それに、たった今おもしろいものも手に入れたし」
言いながら、例のドライバー・・今となっては「ディヴォイドライバー」とでも言うべき漆黒のバックルをかざす。
「全ての仮面ライダーの能力を使いこなし、かつ全てのモンスター・怪人の能力も使えるこの「仮面ライダー ディケイゴン」だか言うポンコツのおかげで俺は「システム・ディケイド」の中でも最強のさらに上まで登り詰めた。」
瞳子ははっとした。
懸案の存在の不意の登場で見落としていたが、ディヴォイドが手にしているドライバーは元はディケイゴンのもの。
ディヴォイドは構わずに己の腹にドライバーを当てがった。
途端にバンドが飛び出し腰を取り巻いて結束しベルトと成す。
「だから俺は、全ての仮面ライダーと、不要になった全ての「システム・ディケイド」を破壊する。」
左腰の、ディケイゴンは身につけていなかったライドブッカーを展開して中からカードを一枚取り出し、「門矢 士」は指先に摘んだそれを真正面に突き出した。
「覚えておけ。 変身!」
くるりと翻したカードをドライバーに叩き込み、両手を交差させてフレームを閉塞した。
その途端、無数のヴィジョンが「門矢 士」に殺到しグレーのボディスーツ姿に変移すると、バックル中央の黒い宝玉からいくつものライドプレートが飛び出し、ブーメランのように弧を描いて次々と頭部に突き刺さる。
たちまち全身を漆黒に染めて、ディヴォイドが戦闘態勢に移行した。
『アリス!気を付けて!』
未だ震えているアリスの肩を掴んで下がらせ、ディレイドはカレイドブレイドを突き出して後退した。
能力が未知数なのはディケイゴンの時と同様だが、プレッシャーが桁違いだった。
いや、虚ろな存在であるディヴォイドに限ってこれはプレッシャーでは有り得ない。
いま感じているこれは、純粋に「恐怖」だった。
踵のすぐ後ろが奈落へ通じる崖っぷちであることを悟った時の、あの膝から這い上がる寒気にとても良く似ている。
進んでも退いても飲み込まれるしかない相手に、いったいどう戦えばいいのか。
泰然と構えているディヴォイドは、再び左腰のライドブッカーに手を遣ると、一枚のカードを抜き出した。
それを手の中でくるりと翻し、ドライバーに叩き込むと両手を交差させてバックルを閉塞する。
《カメンライドゥ・》
音声が、認証を不自然に途切れさせた。
『…………!? 』
恐怖に後退を続ける瞳子にとって、それもまた不気味でしかない。
変化は唐突に始まった。
ディヴォイドの黒光りする装甲が艶を失い、再び凹凸のない縦縞の影へと変移したのだ。
そして白線の部分が消滅し、残る黒線部分の間に背後の光景を透過させ、まるで人型の鉄格子のように変化する。
続いてディヴォイドは残った黒線部分同士の間隔を左右に広げ出した。
『……!? 』
カメンライドと謳っておいて、これから何が起こるのか。
慄くディレイドの前で、今度はディヴォイドの黒線自体が不意にゆっくりと太さを増した。
いや、違う。今のディヴォイドの身体を構成していたのは「線」ではなく、「黒い板」だったようだ。
さながら縦に輪切りにされたようなディヴォイドの身体の断面がこちらを向いた為、黒線が太くなったと勘違いしたのだ。
そして向き直ったディヴォイドの身体の断面は、あろうことかそれぞれ九つの仮面ライダーと、九つの世界のモンスターの形をしていた。
『な……!? 』
こちらを向いて並び立つ仮面ライダーたちとそれぞれの世界の脅威の根元たち。
書き割りのようだった平面のそれらが、途端に厚みを増して本来の形状を取り戻し、実体化して襲いかかってきた。
『……う、うわ!? 』
クウガが、アギトが、龍騎が、ファイズが、ブレイドが、響鬼が、カブトが、電王が、キバが。
ン・ガミオ・ゼダが、テオスが、神鳥 優衣が、アークオルフェノクが、ギラファアンデッドが、始祖童子が、グラリスワームが、デスイマジンが、スワローテイルファンガイアが。
十八もの脅威がディレイドとアリスに殺到してきた。

《クロックアップ!》
『うわああああああああ!? 』
同時に五体以上から殴られてディレイドは派手に吹き飛んでいった。
直前にクロックアップを作動させられたことは僥倖だった。
だが、それだけ。
初撃で何がどう攻撃してきたのかも把握できず、アリスがどうなったのかを確認する暇もない。
慌てて体勢を立て直して着地し、振り下ろされてきたブレイラウザーをカレイドブレイドで受け止めた瞬間にはファイズエッジが、デンガッシャー・ソードモードが、ヘルター・スケルターが死角から叩き込まれ、吹き飛んだところに後方から放たれたン・ガミオ・ゼダの火球が、テオスの輝く十字の光線が殺到し爆発に蹂躙される。
モンスターの大群に襲われても捌くことができたのに、この仮面ライダーと世界の脅威の混成軍には為す術が見当たらない。
その行動は、連携はあまりにも有機的で隙がない。
いや、これは「連携」などと言う生易しいものではない。意識を繋いだ瞳子とアリスでも、こうはいかない。
十八体すべてが「ディヴォイドの身体」なのだから。
『『分かっているだろうが、』』
怒濤の打撃・斬撃と爆撃の波状攻撃の最中、十八体全てが同時にディヴォイドの声で語り出した。
『『ディシェッドを破壊できたからと言って、ディレイドが俺を破壊できる根拠にはならないぞ。』』
突き放したような、嘲るような高い声。
だがその実、「嘲る感情」も伺えない機械の作動音ような宣告。
それだけに、より事実のみを的確に伝えるような台詞に瞳子は背筋を這い上がる不快な冷たさを感じた。
『『加えてこの「敵性要素」の能力も付与された今、』』
離れた岩の上に立つ神鳥 優衣がディヴォイドの声でしゃべりながら片手をかざした。
『『ただの「システム・ディケイド」に適切に対抗できる方法はない。』』
手刀を振り下ろしたスワローテイルファンガイアの体表のステンドグラス様の表皮から無数のミラーモンスターの大群が濁流のように吹き出しディレイドを跳ね飛ばした。
激突の寸前に数体を斬り裂いたが、あろうことかミラーモンスターの死体が崩れて砂になると、再び元のミラーモンスターとなって襲ってきたのだ。
さらに脇にいたファイズの、カブトのマスクのセンサーから、表面の艶を鏡の媒介として龍騎とアギトが飛び出して空中にあるディレイドの身体を蹴り落とす。
『『つまり、ディレイドは破壊されるしかない。』』
地面に激突する前にアークオルフェノクがディレイドの脇腹を蹴り飛ばし、クウガとグラリスワームの殴打が背中から迎え打ち、飛び越えてきた始祖童子の全体重を乗せた足裏がディレイドを地面に叩きつけた。
間断なく火球の雨が、光の十字架が降り注ぎ絶え間なく爆発する。
『あああああああっ!? 』
とうとう幾重ものヴィジョンが飛散し変身を解除されて吹き飛ばされた瞳子の身体がごろごろと地面を転がっていった。
『トーコっ!? 』
アリスの悲鳴が聞こえた途端甚大な爆発が巻き起こり、倒れる瞳子の元に大量の砂が撒き散らされた。
アリスが、撃破された。
「……あ、りす……」
衝撃で朦朧としつつも瞳子は震える頭を上げる。
だが、アリスはイマジン。そのピンクの身体はすぐに瞳子の記憶を基に再構成されて傍らに出現するが、消耗自体は回復できず現れるなり膝を落として突っ伏してしまった。
『『まあ良くやったよ。 嘆くことはない。お前が弱過ぎるんじゃない、俺が強過ぎるんだ』』
倒れ伏す二人のもとに、十八体の仮面ライダーと世界の脅威が歩んできた。
『『とはいえ、新たな力を得て生まれ変わった俺の初陣としては少々物足りなくもある。 と言うよりこの「人格」とやらは不合理だな。』』
途中で自身の台詞を怪訝に感じたのか、ディヴォイドが首を傾げた。
十八体が同時に。
『『まあいい。多少のおしゃべりが俺の使命の結果を左右することはない。 じゃあディレイド。お前はこれでお終いだ。』』
這いつくばったまま睨み上げる瞳子の周りで、十八体の仮面ライダーと世界の脅威が各々の凶器を振り上げた。
「!? 」
『『!? 』』
その感覚に気付いたのは同時だった。
瞳子の中のデータリンクの、ディケイドのアカウントが突如前触れもなしに消滅したのだ。ディヴォイドも同様に察知したのだろう。
それと同時に瞳子を取り囲む十八体の仮面ライダーと世界の脅威がスイッチを切られたテレビの画面のように微かな瞬きを残して全て消え去り、ディレイドライバーの中のワールドスライドマップに消滅したはずのこの第四階層の「九つの世界」のアイコンが再び出現したのだ。
「……これ……!? 」
『……バカな!? 』
離れた位置に、ノイズと共にディヴォイドが再び姿を現した。たった一体の、漆黒のディケイドの姿で。
『ディケイドが、なぜ「システム・ディケイド」を自壊させる!? 』
そして胸を押さえ、苦悶の様子で膝をついてしまった。
透がディケイドからの使命を放棄したあの時から、瞳子も特にディケイドの動向には注意を払っていなかった。だから、何が起きたのかは良く分からない。
いま言えることは、ディケイドが消滅し、消滅したはずの第四階層の「九つの世界」が復活したこと。
そして、ディケイドの消滅と「九つの世界」の復活は連動しており、恐らくはディケイドの意志であること。
もうひとつ。
ディヴォイドは、宇宙の復活に伴い吸収していた第四階層の「九つの世界」の仮面ライダーの能力と世界の脅威の能力を全て失い、その分弱体化したこと。
少なくとも、世界の脅威に関してはディケイゴンのドライバーを通じて第四階層のものしか吸収してはいない。
今のディヴォイドが持っている能力は、第五階層以降の仮面ライダーのものしかない。
「……確かに人格って不合理だよね」
こみ上げる笑いで全身を苛む痛みを誤魔化しながら、瞳子は両手で地面をついてゆっくりと起き上がった。
「多少のおしゃべりで使命の結果を左右しちゃうしさ。 こんなふうに。」
『……貴様……』
口の端に滲む血を手の甲で無造作に拭い、怨嗟を上げて睨むディヴォイドを逆に睨み返す。
「なんだか知らないけど、ディケイドって世界を救済する為に行動してたんでしょ?ディケイドは本懐を成し遂げたんじゃないの?」
溢れる嘲笑が止まらない。
どこかで聞いた台詞を逆順に辿り上げて悪罵に変えディヴォイドに浴びせかける。
本当に偶然というものは恐ろしい。
ディヴォイドから第四階層の能力を奪ったところでワールドスライダーとしての危険性はディシェッドとあまり変わらないのだが、今はそんなことはどうでも良かった。
ディケイゴンのドライバーは、ディヴォイドに致命的な弱点をも植えつけてくれたのだから。
「さあて、さっきは出鼻を挫かれちゃったけど、私もあんたに言いたいことが山ほどあんのよ!」
取り出したカレイドブレイドの切っ先をディヴォイドに突きつける。
「だいたい後ろからこっそりついて来て、世界を潰して罪だけ前の奴に押しつけてるその性根が気に入らないのよ! おかげで「悪魔の影法師」だなんてつまらないあだ名を付けられた透がいい迷惑よ!マスターライダーにも集中攻撃されて殺されて……ムカつくったらありゃしない!」
どがっ、と目の前の地面を剣で殴りつける。
「私がここまで来たのはね!まずはあんたをぶっ壊す為よ!その次に間抜けなマスターライダーたちを片っ端から一発ずつぶん殴ってやるんだから!あんたはその前の前菜だよ!とにかく理不尽な攻撃をしこたまぶち込んでやるからさっさと立て!」
『貴様あ! ドライバーを鹵獲しただけの原住民の分際で!』
激昂したディヴォイドが、おぼつかない調子でようやく立ち上がった。
「ふん。不合理な人格の味はどう? ドライバーを鹵獲しただけの原住民の分際に、頭っからバカにされた気分はどうだって訊いてんのよ!」
ギラギラした目つきで瞳子は手前の空間を一閃した。
「宇宙最強が聞いて呆れるわ!今の気分を言ってごらん!あんたにトドメを刺す手前で全部言い返してやるから!」
『ふざけるな!宇宙ならまた喰い尽くしてやればいい! だが貴様はバラバラに引き裂いて宇宙の狭間に放逐してくれる!吸収した宇宙のどこにも貴様の存在は残さん!』
「オッケー、トドメを刺すのが俄然楽しみになってきた!」
ディヴォイドの絶叫に狂喜の笑みを浮かべ、瞳子はディレイドのカメンライドカードを取り出した。
『貴様……原住民の分際で、つけあがるのも大概にしろ! 何様のつもりだあっ!? 』
「通りすがりに当て逃げされた被害者よっ!覚えておきなさい!これからじっくりたっぷり賠償させてやるんだから!変身!」
叫んだ瞳子は、カードをディレイドライバー・カレイドブレイドのスリットに叩き込み、抜刀の動作でスライドカバーを閉塞した。
《カメンライドゥ・ディレイド!》

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テーマ:仮面ライダー - ジャンル:サブカル

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